全日病ニュース

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地域医療構想の策定プロセスは事務局案で基本的に一致

地域医療構想の策定プロセスは事務局案で基本的に一致

医療団体、保険者、市町村、患者住民、医療機関等から意見聴取。都道府県医療審で決定

 地域医療構想は医療計画の記載事項の1つであるため、構想の策定には現行医療計画(第6期)を変更する手続きが必要で、そのために、都道府県医療審議会の諮問・答申を経ることになる(1面・5面に関連記事)。
 ただし、構想案をつくる過程では、改正医療法と総合確保方針に明記された留意事項(手続き)を踏まえる必要があるという点で、作成指針にもとづく医療計画(本体)と趣きを異にする。
 その手続きとしては、①病床機能報告の内容、人口構造の変化等医療需要の動向、医療従事者と医療施設の配置状況の見通し、その他の事情を勘案すること、②基金の都道府県計画と都道府県介護保険事業支援計画と整合性を確保すること、③保険者協議会の意見聴取をすること、がある(以上改正医療法)。
 さらに、④患者・介護サービス利用者・その家族他の関係者の参画を得ながら計画を作成するプロセスとすること、⑤在宅医療については市町村介護保険事業計画との整合性に留意することの遵守が求められている(以上総合確保方針)。
 このうち、①は2025年における医療機能別の需要と病床数の推計にかかわる事項だが、②と⑤は関連計画との整合性確保を担保する措置で、③と④は、供給側と受給側ともに、関係者からの意見聴取を踏まえた策定となることを求めるものだ。
 概ね合意された地域医療構想策定プロセス案は、この③と④に象徴されるように、住民を含む関係者の理解と合意を得るために「意見聴取」を重視するという点に、特徴がある。
 保険者協議会の意見聴取は地域医療構想策定にかかわる法定事項だが、元々、医療計画については、「診療又は調剤に関する学識経験者の団体の意見聴取」を行なうことが医療法に書き込まれている。
 だが、地域医療構想策定における医療関係者からの意見聴取は、こうした団体に限られるものではない。
 事務局は、「構想区域を意識した単位での現場の医療機関等の関係者の意見を聴取することが望ましい」と、「作成段階からの現場の医療関係者等の関与」を歓迎する見解を策定プロセス案に「補足」したが、それは、意見聴取が個別医療機関にまで及ぶ必要を認識しているからだ。
 その理由に、事務局は、「地域医療構想策定後には、構想区域ごとに、医療関係者、医療保険者その他の関係者との協議の場を設けることになるが、その際、現場の医療関係者である当事者が議論の主体となる」ことをあげた。
 地域医療構想の本質は病床数の機能別管理であり、そこに明記される必要量は、開設・増床や機能転換を企図する病院には死活問題となる。「協議の場」における調整議論も、まさに、そうした病院が主役となる。それだけに、事務局には、構想策定過程に個別病院の意見を聞く機会を設けるべきとの判断が働いたものと思われる。
 こうした意見聴取の場としては2次医療圏単位で設置されている圏域連携会議があげられている。圏域連携会議は、医政局長通知で、保健所が主催者となって設置が進められているもので、設置は義務ではなく、これまで医療連携体制を推進する上で十分活用されてきたとは言い難い。
 事務局案に市町村の意見聴取も圏域連携会議を活用して行なうとの考えが示されたが、厚労省は、概ね構想区域と重なる圏域連携会議に、地域医療構想を策定する上で、医療審議会を補完する役割の発揮を期待している。
 このほか、患者・住民に対しては、案作成後のパブコメにとどまらず、「作成段階から、タウンミーティングやヒアリング、アンケート調査等を実施」して意見を聞くことを提案している。
 こうした取り組みは、医療計画を策定する中で一部の県で実施されているが、その数は少ない上、形骸化しているとの声もある。構成員からは「かたちだけの聞き取りではなく、例えば患者会や病院ボランティアといった医療に関心の高い層からの意見聴取を重視してほしい」などの注文がついた。
 地域医療計画課の北波課長は「案をつくる過程で多様な場を活用して意見を聞くということだ。(意見を聞く場には)色々なバリエーションがあってよい」という認識を表わしたが、個別病院を含め、都道府県が関係者の意見聴取をどこまで重視するか、GLの影響力が問われるところだ。  

「地域医療構想を策定するプロセス案」(概要)11月21日「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」*1面記事を参照

1.策定プロセスの基本的考え方
○地域医療構想は医療計画の記載事項の一つであることから、地域医療構想を定めることは医療計画の変更に当たる。よって、医療計画の策定と変更の手続きを経る必要がある。
○また、改正医療法と総合確保方針に設けられた手続きを踏まえる必要がある。
○策定のプロセスは、上記に加え、医療計画作成指針や都道府県で実際にとられている策定の手続き、本検討会に出された意見等も踏まえて検討する必要がある。
2. 地域医療構想策定プロセス(案)
 現行の医療計画策定の手続き等を踏まえ、地域医療構想策定のプロセスは、以下のようになると考えられる。
●作成準備(体制の整備)
・都道府県医療審議会の下に専門部会やWG等の設置が考えられる。
●構想(案)の作成段階
(1)以下の事項について検討
・目的、地域の医療提供体制の目指すべき姿、基本骨子
・病床機能報告制度の報告等により、地域医療の現状分析
・人口構造変化の見通し他の医療需要動向、医療従事者と医療施設の配置状況の見通し
・構想区域の設定
・構想区域ごとの2025年の医療需要と各機能の病床の必要量(在宅を含む)の推計
・(基金)都道府県計画及び都道府県介護保険事業支援計画との整合性
・地域医療構想の実現のための施策
(2)意見聴取と連絡調整
・都道府県の境界周辺について、必要がある場合は関係都道府県と連絡調整を行う。
・構想区域単位で圏域連携会議等を活用し、医療関係者から意見を聞くことが考えられる。
・在宅医療や目指すべき姿は介護保険事業計画と整合性を図って定める必要があるため、圏域連携会議等を活用して市町村の意見を聴取することが考えられる。
・診療又は調剤に関する学識経験者の団体の意見聴取。
・患者・住民の意見を反映させるため、タウンミーティングやヒアリング、アンケート調査等を実施することが考えられる。
●構想(案)の作成後
・都道府県医療審議会、市町村、保険者協議会の意見聴取→ 医療審会への諮問
・答申・住民の意見聴取のため、パブリックコメント等を実施することが考えられる。
●地域医療構想の決定
・厚生労働大臣への提出及び公示
・県報及びホームページ等で公表することが考えられる。


「協議の場」の設置・運営(案)11月21日「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」*1面記事を参照

2. 議事と開催時期
(1)議事について
 「協議の場」として以下が考えられる(通常の開催)。
①各病院・有床診療所が担うべき病床機能及びその病床数に関する協議(後出「イメージ」を参照)
②病床機能報告制度による情報等の共有
③都道府県計画(基金)に関する協議
④その他構想の達成に関する協議(地域包括ケア、人材の確保、診療科ごとの連携など)※上記のほか、医療機関が開設・増床等の許可申請をした場合又は過剰な医療機能に転換しようとする場合に、都道府県知事は当該医療機関に、「協議の場」の協議に参加するよう求めることができ、その際は当該許可申請の内容又は転換に関する協議が行われる。
(2)開催時期について(通常の開催)
 「協議の場」は、病床の機能分化・連携等に関する協議が行われる場合は、都道府県が随時開催することが基本となるが、病床機能報告制度による情報等の共有や都道府県計画(基金)に関する協議が行われる場合には、通年の日程がある程度定まっているため、定期的に開催することが考えられる。
(参考)通年の日程イメージ
 3月/病床機能報告制度による情報の取りまとめ
 6月/都道府県計画の提出(7~8月内示・交付決定)
 9月/地域医療介護総合確保基金の積み増し
※上記のほか、医療機関が開設・増床等の許可申請をした場合又は過剰な医療機能に転換しようとする場合にも、随時開催する。
3. 設置区域について
・「協議の場」は地域医療構想を策定する区域ごとに設置することを原則とする。一方で、地域によっては構想区域での設置・運営が困難な場合も想定されるため、都道府県知事が適当と認める区域で設置することも可能とする。
・例えば、以下のような柔軟な運用を可能とする。
 ①広域的な病床の機能分化・連携が求められる場合の複数「協議の場」の合同開催
 ②議事等に応じ、設置される区域から更に地域・参加者を限定した形での開催
 ③圏域連携会議など、既存の枠組みを活用した形での開催 等
 ※大都市圏における「協議の場」については、関係自治体と相談し、別途検討する。
4. 参加者の範囲・選定、参加の担保について
(1)参加者の範囲・選定について
・「協議の場」の参加者は医師会、歯科医師会、病院団体、医療保険者を基本とする。
・患者情報や医療機関の経営に関する情報を扱うなど、特段の事情がある場合を除き、会議は公開とする。協議の内容・結果は原則として周知・広報する。
・都道府県は、議事等に応じ、参加を求める病院・有床診を柔軟に選定できるようにすることが適当。例えば、通常開催の場合は医師会、歯科医師会、医療保険者、病院団体等の参加が考えられるが、開設・増床等の許可申請の内容や過剰な医療機能への転換に関する協議の場合は、その当事者と利害関係者等に限って参加することが考えられる。
・急性期病床の機能分化・連携や地域包括ケアの推進など、特定議題の協議を継続的に実施する場合には、「協議の場」の下に専門部会やWG等を設置する方法も考えられる。
・「協議の場」の参加を求めなかった病院・有床診療所に対しても、書面やメールでの意見提出など、幅広く意見表明の機会を設けることが望ましい。
(2)協議への参加に応じない関係者への対応
・医療法上、開設・増床等の許可申請をした医療機関は、都道府県知事から「協議の場」の協議に参加するよう求められたときは応ずる努力義務が課せられている。 また、都道府県知事は、開設・増床等の許可に、不足している病床機能の医療を担うという条件を付することができる。参加の求めがあったにもかかわらず、当該医療機関が正当な理由なく協議に参加しない場合は当該許可に条件を付することが考えられる。
・過剰な機能に転換しようとする医療機関には、都道府県知事から協議への参加を求められたときは応ずる努力義務が課せられており、また、都道府県知事は、「『協議の場』における協議が調わないとき、その他厚生労働省令で定めるとき」は、都道府県医療審議会への出席・説明を求め、さらに、都道府県医療審議会の意見を聴いて転換中止の要請・命令をすることができる。参加の求めがあったにもかかわらず、当該医療機関が正当な理由なく協議に参加しない場合には、「協議が調わない」ときと同様の措置を講ずることができるようにすることが考えられる。
5. 合意の方法・履行担保について
(1)合意の方法について
・協議が調った事項には医療機関の経営を左右する事項が含まれている場合が想定されることから、合意に当たっては、都道府県と関係者との間で丁寧かつ十分な協議が行われることが求められる。
・また、特に各病院・有床診が担うべき病床機能及び病床数等の合意に当たっては、議事録作成に加え、参加した病院・有床診による合意書等の形で取りまとめることが適当。
(2)合意事項の履行担保について
 関係者は協議が調った事項の実施に協力する努力義務が課されているが、履行されない場合には、地域医療構想の達成の推進に支障が生じる恐れがある。
 このため関係者の合意事項の履行を担保する必要があるが、医療法上、都道府県知事は、「『協議の場』における協議が調わないとき、その他厚生労働省令で定めるとき」は、都道府県医療審議会の意見を聴いて、不足している病床機能に係る医療の提供等を要請・指示することができるとされている。
 関係者が正当な理由なく合意事項を履行しない場合には、「協議の場」における協議が調わないときと同様の措置を講ずることができるようにすることが考えられる。


「協議の場」における病床の機能分化・連携に関する議論の進め方(イメージ)11月21日

STEP1/地域の医療提供体制の現状と将来の目指すべき姿の認識共有
 病床機能報告や統計調査等で明らかとなる地域の医療提供体制の現状と、地域医療構想で示される将来の医療需要と各医療機能の必要量について認識を共有。
STEP2/構想を実現するための課題の抽出
 現状を踏まえ、地域医療構想を実現していく上の課題について議論。
STEP3/具体的な機能分化・連携について議論
○例えば、ある構想区域で回復期の病床が不足している場合、それをどのように充足するかについて議論。
○現在、急性期や回復期を担っている病院関係者等、都道府県が選定したメンバーによって、回復期機能の充足のため、各病院がどのように役割分担を行うか等について議論。
STEP4/基金を活用した具体的な事業の議論
○STEP3で議論して合意した内容を実現するために必要な具体的事業について議論。
○基金を活用する場合には、当該事業を都道府県計画にどう盛り込むか議論し、必要な手続を進める。