全日病ニュース

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医療需要推計で新たな提案。医療資源めぐり疑問の声も

医療需要推計で新たな提案。医療資源めぐり疑問の声も

【地域医療構想策定GL検討会】
急性期における病態が安定しない患者の扱いなど、なお論点を残す

 12月12日に開催された「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は、2025年の医療需要(患者数)を医療機能ごとに推計する方法について議論した。
 事務局(医政局地域医療計画課)は、(1)医療資源投入量が特に高い段階の患者は高度急性期とした上で、ICU等の病棟に入院する患者像も参考に、高度急性期機能の患者数を区分する基準を考えてはどうか、(2)急性期に存在する「医療資源投入量は落ち着いているが、引き続き、状態の安定化に向けた医療提供が継続されている患者」をどう扱うか、(3)慢性期機能の医療需要と在宅医療を受ける患者は一体の医療需要ととらえてはどうか、という3点を論点に掲げ、患者を医療機能で区分する議論の深化を求めた。
 事務局は、次回会合を年末に予定、そこに、医療機能ごとに区分される患者の基準案をあらためて整理して示し、医療需要推計方法について合意を得たいとしている。

厚労省「あるべき施策」で機能別の従事者配置目標を提起

 2025年の医療需要推計(入院)に関して、検討会は、これまでの議論から、(1)2025年の医療需要を機能区分ごとに算出し、それをもとに2025年の必要量(病床数)を構想区域・都道府県ごとに推計する、(2)医療需要(1日当たりの入院患者数)は基本的には人口に入院受療率(人口10万人対入院患者数)を乗じて算出する、(3)入院患者数の医療機能別区分は、DPCやNDBデータをもとに、医療資源投入量の多寡を基準に算出することで、基本的に合意している。
 そのうち、高度急性期と急性期の患者数については、「入院から医療資源投入量が落ち着く段階までの患者数」とすることも、概ね一致している。
 この医療資源投入量について、事務局は前回(10月31日)、DPCデータを使って、1入院における1日当たり医療資源投入量と入院日数との関係をいくつかの疾患で例示。急性期病床の患者については入院日数経過ごとに医療資源投入量が逓減をたどり、ある段階で投入量が安定することを明らかにした。
 この日の検討会に、事務局は、DPC病院で2013年度に入退院が完結したDPC算定患者に関するデータを紹介した。
 それは、DPCで対応する255疾患についてみた、入院日数経過にそった、1日当たりの医療資源投入量の中央値(出来高換算した点数=入院基本料を除く)と患者割合の変化を表わしたグラフで、急性期病床に関しては、医療資源投入量の変化が患者の病態変化と大きく相関していることを示している。
 このデータから、事務局は、高度急性期機能について、①医療資源投入量が特に高い段階の患者数を高度急性期の患者数とするという(前回提示した)考え方の確認を求めるとともに、②救命救急病棟、ICU、HCU等の病棟に入院する患者像も参考に高度急性期機能の患者数を区分する基準を考えてはどうか、と提案した。
 ①について、構成員からは同意する意見も出る一方、慎重な声もあがった。相澤構成員(日病常任理事)は、医療資源投入量(中央値)の推移を示したグラフに「ところどころ突出した値を示すところがある」と指摘。「(診療行為等の)データをみればわかるが、あるいは抗がん剤の使用かもしれない。それならば外来でも可能だ。医療の中身を問うことなく、単に医療資源投入量だけで判断するのは危険ではないか」と疑問の声をあげた。
 西澤構成員(全日病会長)も、「医療資源投入量で分けるというのは基本的によいが、医療資源投入量をどう考えるかという問題がある。例えば手術は人手を要するが、投薬は人手を要さない。もう少し、精緻な分析が必要ではない」と、拙速な判断を戒めた。
 西澤構成員は、また、医療資源投入量(出来高点数)から入院基本料を除外するという事務局の考え方も疑問視し、「人の配置がもっとも評価されているのは入院基本料だ。それを外すというのはいかがか」と論じた。
 北波地域医療計画課長は「データの制約がある中で、こう対応するのがベストと考える。入院基本料を除外したのは、7対1とか10対1という体制の違いが患者個々の病態とどこまでリンクするのかみえないからだ」と答弁した。
 これに対して、西澤構成員は、「入院基本料については、例えば看護必要度が入院区分に役に立つのかなど疑問も多い。(患者の病態との関係を明確にする意味からも)ガイドライン施行後でよいから、一度タイムスタディをしてみてはどうか」と問題提起した。この提案には、他の構成員からも賛成の声が上がった。
 事務局は医療資源投入量測定との関係で疑問があるとした入院基本料であるが、その除外は、結果的に医療資源投入量を低く算出することになる。将来の医療費を低めに誘導するデータに転用されないか、懸念が残るところだ。

慢性期機能と在宅医療は一体の需要ととらえる

 次に、在宅医療の需要について、事務局は、前回に、「退院して在宅医療を受ける患者数(現状で入院しているが、入院医療の機能強化と効率化によって退院し、在宅医療へ移行すると考えられる患者数)」と「現状で在宅医療を受けていると考えられる患者数の合計として考える」ことを示したことを踏まえ、「慢性期機能の医療需要と在宅医療を受ける患者は一体の医療需要ととらえてはどうか」と提起。
 その理由に、①療養病床は包括算定であるため、「退院して在宅医療を受ける患者数」を推計する上で、医療行為を出来高換算した医療資源投入量にもとづく分析を行なうことができない、②現段階では、地域によって在宅医療や介護施設等にバラツキがあるため、各地域の在宅医療患者数を見込むには、全国的な状況を勘案して設定する必要がある、ことをあげた。
 その上で、「(一体の医療需要のうち)どの程度の患者を慢性期機能の病床で対応するか、在宅医療で対応するかについては、現在、療養病床の入院受療率に地域差があることも踏まえ、医療資源投入量とは別の指標により、設定することとしてはどうか」と提案した。
 療養病床の入院受療率の地域差について、事務局は、「都道府県の入院受療率が、全国平均の入院受療率と比べて高いかどうかを、性・年齢構成の影響を補正して示した」データを提示。
 京都府と和歌山県を取り上げ、「ともに入院受療率は全国平均と近いが、入院患者の発生率と平均在院日数が異なる」と指摘した上で、そうした違いが生じる背景を都道府県別に探るデータを披露した。
 それによると、全国的に、入院患者発生率が高い県は総じて平均在院日数が短く、相対的に低い県は平均在院日数が比較的長い。このデータについて、市町村の構成員が「療養病床の分布に差があるのは地域差があるということだが、それだけ地域差を考慮する必要があるという意味か」と質した。
 北波課長は「事実としてこうなっているということだが、やはり、これだけ差があるのはまずいではないかと思っている」と答えところ、「それは全国平均を目指せということか」と重ねての質問を受けたが、同課長は「今後の議論ではないか」と述べるにとどめた。
 「医療資源投入量とは別の指標」でみるとの事務局提案には「療養病床の受療率、平均在院日数、入院患者発生率を組み合わせて考えるということか」との質問が出た。
 北波課長は、「受療率(という指標)は1つの例示に過ぎない。慢性期には障害者や長期療養の患者がいるが、それら患者を含めて在宅と一体に捉えるという考えは、在宅の受皿の問題もあって、どこまで可能かという点はあるが、一方で、医療区分の2や3をみている進んだ在宅医療もある。問題は、2025年までにどこまで可能かという視点である」と、在宅に重点を置いた医療需要の配分を導く指標となる可能性を示唆した。

「知事の措置は合理的な根拠で適切に運用されるべき」

 そのほか、この日の検討会は、「あるべき将来の医療提供体制を実現するための施策等」について、事務局提案を検討した。
 その中で、(1)地域医療構想にもとづく機能分化・連携は医療機関の自主的な取り組みと医療機関相互の協議により進められることが前提であること、かつ、(2)地域医療介護総合確保基金を活用して進めていくこと、(3)医療機能ごとの医療従事者の配置目標等が求められること、(4)医療法に定める機能分化・推進にかかわる都道府県による措置は、合理的な根拠に基づき適切に運用されることが重要であることなどの視点を盛り込んでガイドラインに明記する考えを示した。
 このうち、(3)ついては、「まずは、今回、各地域医療構想で2025年の各医療機能の必要量を定め、疾病構造や人口構造の変化など環境の変化も踏まえた上で、今後、国において検討する」と記した。