全日病ニュース

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介護報酬 実質-4.48%。かつてない負の改定!

▲社会保障予算について折衝する塩崎厚労大臣(中央)と麻生財務大臣(右隣)

介護報酬 実質-4.48%。かつてない負の改定!

【2015年度医療保険等の改革案決まる】
都道府県の医療費目標、大病院外来定額負担、入院時食事代引上等、医療保険改革案も決まる

 政府は1月14日に2015年度の政府予算案と税制改正大綱を閣議決定。それに先立つ1月11日に、塩崎厚生労働大臣と麻生財務大臣は15年度の社会保障予算について大臣折衝を行ない、介護報酬等の改定、15年度消費税増収分を投入する社会保障の充実・安定化施策、医療保険制度改革等に関して、合意に達した。
 その結果、15年度介護報酬の改定率は-2.27%と決まった。マイナス改定は06年度以来9年ぶり、下げ幅は過去最低の03年度改定(-2.3%)につぐものとなった。ただし、「収支状況などを反映した適正化等」は-4.48%とされ、空前絶後の負の改定が強行された。
 15年度介護報酬改定に関して、1月9日の社保審介護給付費分科会は、介護療養型医療施設の新たな報酬の創設を含む改定方針(審議報告)をとりまとめている。
 大臣折衝を踏まえ、安倍首相を本部長とする社会保障制度改革推進本部は1月13日に「医療保険制度改革骨子」を決定。これを受け、厚労省は通常国会に提出する健保法等改正法案の作成に着手した。
 一方、15年度予算案において、介護も対象となる15年度の地域医療介護総合確保基金は、国と地方で計1,628億円(医療904億円、介護724億円)となった。各都道府県は、早くも1月内に事業案を示すよう事業者に求めており、全国の病院と病院団体は早急の対応が求められている。(厚労省関係の15年度予算案・税制改正大綱は2面、介護報酬改定関係および介護にかかわる基金は3面に掲載)

 「医療保険制度改革骨子」には、(1)18年度から都道府県が財政運営の責任主体となり、都道府県が医療費の見込みを立て、医療費水準及び所得水準を反映した分賦金(国保事業に要する経費)の額を市町村ごとに決定すること、(2)被用者保険者の後期高齢者支援金について、総報酬割部分(現行制度では3分の1)を段階的に引き上げ、17年度から全面総報酬割を実施する、(3)保険者が、加入者の予防・健康取組に応じたヘルスケアポイントの付与や保険料への支援等を実施できることを明確化する、ことなどが明記された。
 さらに、医療提供にかかわる分野に関しても、以下の事項などが書き込まれた。
①都道府県は、国が定める指標を踏まえ、医療費水準と医療の効率的提供に関する、地域医療構想と整合的な目標を医療費適正化計画に盛り込む(都道府県は地域医療構想策定後に、見直しを行なった18年度からの第3期計画を前倒しで実施する)。
②入院時食事代(現行1食260円)を段階的に引き上げるなど、入院時食事療養費を見直す。
③紹介状なしで受診する場合等に5,000円~1万円の定額負担を患者に求める選定療養の実施を、16年度から特定機能病院と500床以上の病院に義務化する。
④患者申出療養(仮称)を16年度に創設する。
 1月9日の社保審医療保険部会に提示された「医療保険制度改革骨子(案)」は、一部の数字が空白であったり、協会けんぽの国庫補助率、入院時食事療養費等、所得水準の高い国保組合の国庫補助の項目が「調整中」とされるなど、審議結果とりまとめの文書と言い難いものであった。
 しかし、それら未定部分がその後の政治折衝で埋められ、原文のまま1月13日の社会保障制度改革推進本部に出され、「医療保険制度改革骨子」として決定された。

医療保険部会
議論つくされていない「大病院外来の定額負担」

 2015年医療保険制度改革の方針となる審議報告は12月の医療保険部会でまとめられる予定だったが、国民・患者の負担増が前面に出る方針が総選挙前に出るのはまずいという政治判断から、年明けまで延期されたものだ。
 その1月9日の医療保険部会で、多くの委員は「議論がつくされていない」と不満の声をあげたが、「1月14日までに15年度予算編成を終えないとならない」という政治の要請の前に、やむなく「改革骨子」をまとめさせられたというのが実態だ。
 「議論がつくされていない」1 つが「紹介状のない外来受診に選定療養として定額負担を求める」という項目だ。
 実は、事務局(厚労省保険局総務課)は、10月15日の同部会に「紹介状のない外来受診における患者負担」として3とおりの考え方を提案しているが、その中で、現行の選定療養とは別に患者負担を求める、つまり、定額負担と選定療養は併用できるとしていた。
 委員からそのことを質された事務局は、10月15日の提案を「3割負担との関係で詰めなければならない点がある」と棚上げしてみせた上で、「任意で徴収するというのがこれまでの選定療養。今回はそれを大病院に義務づけるということだが、それを実施した上で、すでに提案した考え方の問題点を詰め、(法的整合性について)弾力化する中でその実施を考えたい」と、曖昧な説明を行なった。
 「選定療養として実施するのであれば中医協の議論ではないか」との質問には、「法的に義務化するもの(なので部会の議論となる)。制度の細部は中医協の仕事になる」といったん応じながら、「(この制度が)法的に選定療養に当たるか否かは不明確だ」と先の言をひるがえした。
 委員から「選定療養というからおかしい。単に、大病院に定額負担を導入するということではないか」と質された事務局は、「おっしゃるとおり。我々は、つい、選定療養ということが頭にあったが、それは微妙な話。よく検討したい」と引き取った。そのため、この議論はいったん終わったが、社会保障制度改革推進本部が決定した「医療保険制度改革骨子」は、同部会に示したものとなんら変わっていない。
 外来の定額負担導入は、かつての「受診時定額負担」議論を思わせるところがある。定額負担を選定療養とすると保険給付の枠外となるが、では、診療行為としては保険給付の範囲で完結するものに、給付対象外の選定療養の併用を、健保法や療担規則等でどう強制(義務化)できるのか、疑問は残るところだ。
 この方法が可能となると、大病院の要件を変えるだけで、例えば200床以上やあらゆる病院に選定療養として定額負担の導入ができ、事実上、「受診時定額負担」が成立する。
 部会後の本紙の質問に、事務局の担当官は、「選定療養と言い切れるか、実はまだ検討の余地が残っている。本当は、(受診時定額負担を想起させる)定額負担という言い方も好ましくない」と漏らした。
 入院時食事療養費の見直しも、本来は「入院時食事療養費・生活療養費」とされ、療養病床の65歳以上の取り扱いを他病床まで拡げるかなどの論点を含んでいたが、対象病床すら明らかにされることなく入院時食事療養費の値上げのみを決める、曖昧なものとなった。