全日病ニュース

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新型法人の報告まとまる。政府との調整待ちの部分も

新型法人の報告まとまる。政府との調整待ちの部分も

【非営利新型法人の創設】
認可や運営の基準は現行医療法人がベース。曖昧な点も多く、懸念の声も

 2月9日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」は医療法人制度に大きな影響をおよぼす改正に関する議論の結果を報告にとりまとめた。
 その内容は、医療法人を主たる対象とする非営利新型法人の創設、医療法人経営の透明性確保やガバナンス強化など運営面の規制強化、医療法人の分割規定や社会医療法人認定解消に伴う経過措置といった規制緩和からなる。
 いずれも「日本再興戦略 改訂2014」の求めに応じたもの。
 医療法改正事項として2月18日の社保審医療部会の審議にかけた後に、与党と政府部内の調整を経て法案化、3月中下旬をめどに通常国会に提出する。新型法人の施行は2017年4月以降になる見通しだ。

 報告によると、新型法人の名称は「地域医療連携推進法人」を予定、法人格は一般社団法人とする。
 地域医療構想の単位地域を基本に設立されるが、新型法人が定める事業対象地域を都道府県知事が認めればその限りではない。
 認可に際しては医療法人ほかの非営利法人の複数参加が必須要件となるが、介護事業などの地域包括ケアを推進する事業のみを行なう非営利法人も参加できる。したがって、配食サービスなどを手がけるNPO法人も参加法人になることができることになる。
 また、多地域に病院等を展開している法人も、新型法人事業方針の対象を当該地域の病院等に限った上で参加することができる。つまり、日赤や済生会だけでなく、国立病院機構や大学法人も参加法人になることができる。
 ただし、自治体病院に関しては、自治体側(総務省)との調整がついていないため、ペンディングとされた。社会福祉法人の参加も、現在進行中の制度改革議論後に検討することになる。
 事務局は、参加法人となる「非営利法人」の範囲をどう線引きするかは与党や政府との調整に委ねられる、としている。
 これら参加法人に関して、報告は、前回の検討会では「営利法人を参加法人・社員とすることは認めない」となっていた箇所を、最終案で「営利法人、営利法人を主たる構成員とする非営利法人を、参加法人、社員とすることは認めない」と修正、営利法人介入の可能性をより排除する内容とした。
 前回案からの修正は、ほかにも、「統一的な連携推進方針(仮称)については、地域医療構想と整合性を確保する」「非営利新型法人の役員については、親族等の就任制限要件を設定する」「都道府県知事は、認定の基準を欠くに至った場合等に、都道府県医療審議会の意見を聴いた上で、勧告・措置命令・認定取消をすることができる」、などがある。
 いずれも、構成員の意見を反映させたもので、医療法人と同様の非営利性確保を目指したものだ。
 このうち、地域医療構想との関係については、この日、西澤構成員(全日病会長)の要求で、前文に「(非営利新型法人は)地域医療構想と整合性を図る」という趣旨の追加修正が認められた。
 このほかにも、「新型法人を地域医療に貢献する手段として明確に位置づけるべき」「非営利性の担保をより強化すべき」といった意見が構成員から相次いだが、いずれも、前出西澤提案と同様の問題意識に立つものだ。

都道府県知事の裁量に委ねる部分も

 新型法人の枠組は、一般社団の法人格をもつ新たな法人類型を医療法に位置づける特異さはあるものの、その認可基準や運営の考え方は、おおむね現行医療法人をベースとしている。しかし、報告に明記された骨組みだけでは、解釈に曖昧さが残るのも事実だ。
 例えば、剰余金の配当禁止を打ち出す一方で、「地域包括ケアを推進するため、非営利新型法人の設立趣旨の達成に必要な範囲内にある関連事業を行う株式会社」に、株式保有割合を「一定割合以上とすることを条件に出資できる」としている。
 これは、介護事業や健康・予防等を行なう株式会社への、経営権を確保した出資の容認であるが、子会社が赤字に陥った際の貸付や委託料等支払による経営支援の是非には触れていない。経営(権)を維持するための諸手段が剰余金の流用となる可能性が、それがまた当該株式会社の配当につながる可能性もあり、難しい問題である。
 議決権に関しても、「原則として社員は各一個の議決権を有するが、定款で別段の定めをすることができる」とした上で、それによって「不当に差別的な取扱い」や「財産の価額に応じて異なる取扱い」となることは禁じるとしているが、1社員1議決権のタガを外したときに、経営主導権をめぐる紛争が多々起こることは予想に難くない。
 このように、報告は新型法人の骨格あるいは考え方の方向とイメージを示したもので、今後の政府内の調整に委ねられる部分が少なくない。また、事業範囲地域や理事長要件など、都道府県知事の裁量に委ねる部分が少なくない。
 したがって、具体的にどういう認可や運営の基準となるかは、政省令や通知、あるいはモデル定款や運営管理指導要綱を待つことになるが、それらは検討会ではなく、厚労省の裁量で策定される。
 この点に関して、検討会では、「報告にまとめられた内容は、今後、政府との間で色々調整されるのではないか」と、報告どおりの制度となるかどうかを危ぶむ声も出た。
 中には、「新型法人は、決して、地域包括ケアを推進するという立場から議論されたわけではない」「新型法人に手上げする医療法人はないだろう」という否定的・悲観的な観測まで出た。
 今回まとまった内容では医療経営の大規模化や集約は難しいとみる立場と、今回の案でも今後の地域医療に懸念が残るという立場と、それぞれに疑問を残す新型法人案となった。
 検討会後の報道陣の質問に、担当官は「政府との調整で(報告の内容に)変更が生じないとは言えない」と語ったが、日本再興戦略の方針とはいえ、地域医療の立場からは、曖昧さばかりが目につく内容となった。