全日病ニュース

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厚労省 高度急性期75%、急性期78%、回復期90%を見込む

厚労省
高度急性期75%、急性期78%、回復期90%を見込む

【地域医療構想策定のガイドライン】
GL案は最終局面。全国知事会は構想実施に懸念を表明

 厚生労働省は2月12日の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」に、これまでの議論をまとめたガイドライン案を提示した。
 この日は、GL案に先立って、2025年の医療需要(患者数)を推計する基本的な考えとそれを病床数に換算する方法、併せて、病床機能報告制度で報告された各医療機関の情報の公表方法、に関する議論が行なわれた。
 前者の考え方によって、2025年の、構想区域ごと医療機能ごとの病床数(必要病床)を推計する方法が確立される。また、後者の公表によって、構想区域の住民だけでなく、医療機関が圏内の機能ごと病床の現状と将来展望を把握することが可能となる。
 GL案の策定プロセスと策定後の協議の場(地域医療構想調整会議)の設置・運営に関する考え方は、すでに整理されている。事務局(厚労省医政局地域医療計画課)は、次回(2月26日)の会合でGL案の合意を得たいとしており、全国の病院にきわめて大きな影響を与える地域医療構想制度は大詰めを迎えた。
 この日、全国知事会は、激変の可能性が強い地域医療構想に強い懸念を表明し、厚労省に善処を求めた。

 GLには地域医療構想を策定するプロセスが明示され、その中で、構想区域ごとに医療機能ごとの2025年の医療需要を推計、それにもとづいて必要量(必要病床数)を設定する方法が書き込まれる。
 医療需要推計の方法について、GL案は「医療需要は、医療機能(高度急性期機能、急性期機能、回復期機能及び慢性期機能)ごとに算出する。このうち、高度急性期、急性期、回復期は13年度のDPC及びNDBのデータに基づき、住所地別に患者を配分した上で、構想区域ごとの性年齢階級別の入院受療率を医療機能別に算定し、これに当該区域の2025年の性年齢階級別人口を乗ずることによって算出する」と整理した。
 残る慢性期機能に関しては、「(その中には)在宅医療等により対応することが可能と考えられる患者が一定数いるという前提で、そのうち、どの程度を慢性期の病床、あるいは在宅医療等で対応するかは、療養病床の入院受療率に地域差があることも踏まえ、医療資源投入量とは別の指標により、設定する」とした。
 ここまでは、これまでの議論で概ね確認されている。
 事務局はこの日、医療需要(患者数)の推計方法をあらためて整理、次のとおり示した。

 (1)13年度のデータから患者を住所地別に配分、区域ごとの性年齢階級別の入院受療率を算定し、2025年における性年齢階級別人口を乗じて、医療機能別の患者数を推計する。
 (2)その患者数に次の調整を加える。
 ①現在の医療提供体制が変わらないと仮定した場合の他構想区域に所在する医療機関により提供される量を増減する。
 ②将来のあるべき医療提供体制を踏まえ、他の構想区域に所在する医療機関により提供される量を増減する。
 (3)②をもとに病床利用率等を用いて必要病床数を算出する。

 以上は、高度急性期、急性期、回復期の必要病床数推計方法であるが、では、患者がどの機能に該当するかの区分はどうするのか。
 区分は医療資源投入量の多寡で判断するとし、投入量は疾患別のDPCデータを出来高換算し、かつ、入院基本料を除いた点数で区分するとしていた事務局は、この日、高度急性期と急性期の境界は3,000点、急性期と回復期の境界は600点強、回復期と慢性期の境界は225点を目安にするという考えを提示した。
 こうして13年度の機能別の患者数が算定され、それを構想区域ごとに補正し、それに2025年の人口予測を乗じて患者数を導びくことになる。
 その上で、病床利用率等を用いて患者数を病床数に換算するわけだが、その方法について、北波地域医療計画課長は、以下のように説明した。

 病床稼働率は1時点の利用率にその日の退院患者数を加えたもの。現在、一般病床の1日の退院患者は3万9,000人ほど。これを89万床で割り戻すと4.4%となり、基本的には、病床利用率に4.4%を加えたものが病床稼働率となる。
 ちなみに、出来高算定病院の病床利用率は76.9%で、これに4.4%を加える(81.3%)。これがベースになる。その上で回復期を90%と設定、それをもとに急性期と高度急性期に割りつけると、高度急性期が75%、急性期が78%となる。慢性期については92%で設定してはどうかと考えている。

 こうして、2025年の機能別必要病床数の推計方法が明らかとなった。この考え方は、政府の社会保障制度改革推進本部に付設された「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」のWGが検討している方法そのものである。
 病床稼働率を高く設定するほど必要病床数は減る。
 西澤構成員(全日病会長)は、「平均在院日数が短縮していけば病床稼働率は下がる。一体改革シナリオでは、急性期の平均在院日数は9日、稼働率は70%としている。この点を吟味すべきだ」と再検討を求めた。
 中川構成員(日医副会長)も、「(事務局が考えている)稼働率は、高度急性期、急性期、回復期とも高い」との認識を示した上で、稼働率は都道府県の裁量で決められないかと質した。これに対して、北波課長は「医療需要と必要病床数の推定方法は全国一律となる」という考え方を繰り返し強調した。

療養病床受療率厚労省 「A案からB案の幅の中で各区域で設定可能」

慢性期に関しては、事務局はこの日、以下の考え方を提案した。

 慢性期機能の医療需要と在宅医療等の患者の推計は以下の考え方にもとづく。
(1)一般病床の障害者・難病患者(障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院基本料及び特殊疾患入院医療管理料の算定患者)は慢性期の医療需要とする。
(2)療養病床の入院患者については、医療資源投入量とは別に以下の考え方で、慢性期機能と在宅医療等の医療需要として計算する。
①医療区分Ⅰの患者の70%は将来時点で在宅医療等の医療需要とする。
②その他の入院患者について、入院受療率の地域差があることを踏まえ、これを解消していくことで、将来時点の在宅医療等の医療需要を計算する。
③療養病床で回復期リハ病棟入院料の算定患者は回復期の医療需要とする。
④一般病床でC3基準(225点)未満の患者は在宅医療等の医療需要とする。

 上記のうち、「入院受療率の地域差を解消していく」方法として、事務局は、すでに、補正した将来の入院受療率目標の設定方法として、A案(すべての2次医療圏が、県単位の全国最小レベルまで入院受療率を低下させるかたちで設定する」、B案(最も受療率の高い2次医療圏を県単位の全国中央値レベルまで低下させ、他の医療圏も全国最小との差を等比的に低下させる」という2案を提案している。
 このA案・B案について、この日、地域医療計画課の佐々木在宅医療推進室長は次の考えを明らかにした。

 地域が、療養病床の患者を、どの程度、慢性期機能の病床で対応するか、在宅医療・介護施設で対応するかについて、目標を定めて患者数を推計する。その目標としては、現在ある療養病床入院受療率の地域差を縮小しつつ、地域が一定の幅の中で目標を設定することとするため、B案としてはどうか。これをより正確に申し上げると、B案を含め、A案からB案までの幅の中で各構想区域で設定が可能としてはどうか。

 つまり、A案とするかB案とするかは都道府県の判断にまかせるということである。高度急性期、急性期、回復期の病床稼働率は全国一律にするが、療養病床入院受療率の目標は都道府県の裁量としたのは、激変によって、とくに、慢性期の医療提供に混乱が生じることに強い不安を感じている全国知事会の意見が反映している。
 しかし、この不整合さに、あるいは、それでもタガがはめられた中での都道府県裁量という方法に、多くの構成員から批判の声があがった。
 西澤構成員は「療養病床の受療率は、例えば長野と高知では5倍違うが、2次医療圏になると20倍もの差になる。これでは受療率の補正方法がA案でもB案でも同水準にもっていくのは至難の業だ。受療率の違いには様々な事情がある。全国一律にするのではなく、都道府県にきちんと裁量を与えないと無理ではないか」地域医療構想策定の全体像が示されたGL案にも様々な意見があがったが、その中で、中川構成員の「構想区域は2次医療圏に合わて設定するというのであれば、まずは、次の医療計画見直しで2次医療圏を見直すべきではないか」という意見に、北波課長は「そう考えている。まずは構想区域を設定し、次の医療計画はそれに合わせて見直していただく」と答弁。
 18年度からの第7次計画で、2次医療圏を地域医療構想区域に合わせて変更する方針を明らかにした。