全日病ニュース

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検討すべき点や今後の作業課題を残す新型法人

検討すべき点や今後の作業課題を残す新型法人

【社保審医療部会】
疑問と反対の声も。部会は「了承」なく議論を打ち止め。厚労省は法案作業へ

 厚生労働省は2月18日に社保審の医療部会を開き、「医療法人の事業展開等に関する検討会」がとりまとめた新型法人(地域医療連携推進法人=仮称)制度の創設と医療法人制度の見直しに関する検討結果を示すとともに、3月下旬までに通常国会に医療法一部改正法案を提出する旨を報告した。
 新型法人に対しては、多くの委員から疑問が相次いだほか、一部内容に異論を唱える声もあがった。一方、事務局(厚労省医政局総務課)も、総務省や文科省との協議や政府部内での細部検討など、作業課題が多々積み残されていることを明らかにした。
 しかし、議論半ばで、座長は「事務局は本日の意見を今後の検討に生かしてほしい」と締めくくり、別の報告へと移った。
 事務局は「この件で再度開催することはない」とし、医療部会は医療法改正案を了承したとの認識を示した。

新型法人 自治体病院と大学法人が参加できる道筋を関係省と協議

 事務局は、医療部会に、医療法人関連の報告と併せて、(1)新型法人制度創設にともなう参加法人間の病床再編にかかわる基準病床制度の特例案を提示した。
 新型法人の参加法人には「病床過剰地域であっても、病院間における病床の融通を認める基準病床数の特例」を検討する、というものだ。
 また、(2)地域医療構想策定ガイドラインの検討状況、(3)地域医療介護総合確保基金の執行状況、(4)医療事故調査制度施行にかかわる省令・通知の議論状況、(5)医療機関の勤務環境改善に向けた体制整備の施行状況と、医療介護総合確保推進法に規定された事項の現時点での進捗状況を一括して報告。
 さらに、(6)看護師による特定行為の研修制度については省令案を、(7)臨床研究中核病院に関しては承認要件の案を提示、それぞれの質疑に応じた。
 事務局による、医療介護総合確保推進法施行および新たな医療法改正事項に関する説明と資料から、以下の点が明らかとなった(医療法改正事項の概要は本紙2月15日号既報)。
①新型法人内の病院間の病床融通を可能とする基準病床制度の特例は、当該病床の合計数が増えないことが前提となる。
②新型法人による共同購入等事業と独禁法との関係は政府部内で今後検討する。
③自治体病院の新型法人への参加には一定の障壁があるため、総務省との間で、それが可能となるような法的措置を検討することになる。
④厚労省としては大学法人の新型法人への参加を想定している。文科省において大学病院の別法人化を検討するとしているが、それも関連した課題に入る。
⑤医療法人における会計基準適用、外部監査、計算書類公告の義務化は負債額が100億円以上を想定しているが、具体的にはこれから検討する。
⑥2014年10月に施行された、医療機関における医療勤務環境改善を相談等支援する支援センターは、すでに14都府県で設置済である(15年2月6日現在)。
 その内訳は、直営が5県、一部委託が1都、委託が8府県(県医師会へ委託が3県、県病院協会へ委託が3県、私立病院協会へ委託が2府)で、14年度中に24都道府県で設置予定となっている。
⑦14年度計画における基金の執行状況は、確実に不足する場合に限定したため、病床の機能分化・連携に関する事業への配分は全体の約20%にとどまったが、15年度は地域医療構想の達成に向け、同事業へ重点配分したい。
 公民への配分比率は、公的病院・自治体立などに24.6%、民間病院・医師会などに71.4%、その他が4.0%。基金の造成は、12月に25県、1月に16県、2月に1県で、2月18日現在5県が未造成である。
 基金に関して、西澤委員(全日病会長)は、「14年度の都道府県事業計画に各地の病院は対応できなかったため、15年度は十分な周知を厚労省に要望した。しかし、すでに動き出している15年度分に関しても全国の病院に周知が徹底されていない。中には、病院の相談等を門前払いしている県もある。病院団体が介在することも検討するが、十分周知できる措置をとってほしい」と発言し、善処を求めた。

新型法人 「病床規制の特例」に反対の声も

 異例の2年続く医療法改正となる新型法人制度の創設と医療法人制度の見直しに対しては、多くの委員から多彩な疑問や意見が示された。
 中川委員(日医副会長)は、新型法人制度案に一部修正の提案を行なう一方、病床規制の特例に対して、「これは地域医療構想調整会議マターではないか。直ちに了解とはいかない」と事実上否定。(全国自治体病院協議会会長)も特例案に反対を表明した。
 これに対して、土生総務課長は、「特例は地域医療構想と整合性を保つ機能転換に有効な措置である。構想と整合性をもたないものは都道府県知事が認めないだろう。では、どういうケースが該当するかは、本日の議論を踏まえて、さらに検討したい」と、今後の議論の余地を残す口ぶりで答弁した。
 しかし、永井座長(自治医科大学学長)は、「事務局は本日の意見を踏まえ、さらに、検討を加えてほしい」と議論を引き取り、次の議論へと移った。