全日病ニュース

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20年先を見据えた保健医療のビジョンを策定

▲冒頭の挨拶で塩崎厚生労働大臣は「健康医療2035」策定懇談会に寄せる期待を語った。

20年先を見据えた保健医療のビジョンを策定

【「保健医療2035」】
40歳代の懇談会を設置。非公開で自由討議。6月に報告書

 塩崎恭久厚生労働大臣は私的諮問機関として「保健医療2035」策定懇談会の設置を決め、2月13日の記者会見で発表した。
 「20年後の2035年を見据えた保健医療政策の、骨太のビジョンを打ち出す」ことが目的で、そのビジョンにもとづいて、順次、短期・中長期の政策課題に着手していくとの考えによるものだ。
 同懇談会は社会保障政策に精通した30歳代~40歳代の研究者等10人(医師4人を含む)からなり、2月25日に初会合をもった。
 構成員には厚労省の40歳代前半の企画官クラス4人が加わり、有識者という立場から外部メンバーと対等の議論を行なうという異例の会合となった。
 懇談会には横倉日医会長を含む4人がアドバイザーに就いたが、議論には加わらない。
 初会合の挨拶で、塩崎大臣は、1月にダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席した際、先進国で最初に“少子高齢化社会”に到達した日本に世界から注目が集まっていることを実感。
 「日本的モデルを構築して世界の信頼を得なくてはならない」と考え、それには、「より将来を見据えた長期ビジョンをつくることが必要」であり、「その将来も現役であるだろう若い世代のアイデアに依拠する」考えにいたったことを明らかにした。
 初会合はフリートークに終始。その中で「診療報酬改定といった目先の課題にとらわれない長尺のビジョンが必要」との考えを確認したほか、健康や医療の質を測定かつ評価していく必要、インセンティブを活かした制度・政策を利用すべき、などの意見が出た。
 会合後の記者会見で、事務局(社会保障担当参事官室)は、会合を非公開とした理由を「若い世代だけに大勢の傍聴者の前で発言することに慣れていない」と説明したが、1つの理由に、厚労省職員が自由に発言できる環境を確保する狙いがあるようだ。
 10回ほどの会合で議論をかさね、6月末に報告書をまとめる予定だが、報告書は、必ずしも自由な意見の集約に終わるわけではなく、「当面の改革課題や展望も盛り込み」、施策の基礎となり得る内容に収斂させるとの考えを事務局は明らかにした。
 ただし、「一般の審議会のように事務局が提出する資料が議論をリードするかたちはとらない」とした。
 安倍首相は、この夏までに「経済再生と財政健全化の実現を目指した計画」を策定する方針だが、懇談会が集約する医療・健康の長期ビジョンが、政府による財源視点の社会保障改革論に都合よく利用されないかとの懸念も残るところだ。