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取りまとめできず。最後の会合も意見の不一致を残す
取りまとめできず。最後の会合も意見の不一致を残す
【医療事故調査制度】
座長に調整を一任。不調の際は再度の会合。合意できなければ両論併記
2月25日の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」は、医療事故調査制度の省令・通知案の考え方をまとめた報告を見込んで4時間15分にわたる議論を行なったが、意見一致にいたらず、山本和彦座長(一橋大学大学院教授)に調整を一任した。
山本座長は調整がつかない可能性を想定し、次回に検討会の追加開催を予定、それでも合意に達しないときは「両論併記もやむを得ない」としている。その場合、医療事故調査制度は、医療界の一致をみることなく施行を迎えることになる。
そうした事態を避けるため、事務局(医政局総務課医療安全推進室)だけでなく、日医と四病協の関係者も最後まで調整の努力を続ける意向を表明。この日の検討会で、日医と四病協の構成員は基本的に事務局案を支持し、とりまとめに務めた。
(1)事故発生に対する医療機関の判断プロセス、(2)事故発生のセンターへの報告の内容と期限、(3)事故に関する遺族への説明内容、(4)院内調査の方法等、(5)調査結果のセンターへの報告内容、(6)調査結果の遺族への説明の内容と方法、(7)センターに対する調査の依頼、(8)センターが行なう調査の内容、(9)センター調査の結果の医療機関と遺族への報告、(10)センター調査の結果の取り扱い、(11)医療事故の定義――。
以上の11点が、医療法に規定された医療事故調査制度の枠組みを、具体的な運用規定に落とし込むために、省令・通知に明記されなければならない論点である。
このうち、(1)~(4)と(7)(8)は、これまでの議論から、概ね合意されている。意見の隔たりが大きいのは、院内調査報告の遺族への交付の可否についてだ。
遺族への説明について、事務局は「口頭または書面(報告書又は説明用資料)もしくはその双方の適切な方法により行なう。調査の目的・結果について、遺族が納得する形で説明するよう努めなければならない」と提案、報告書を渡すか否かの判断を医療機関に委ねた。
これに対して、「遺族が納得する説明は難しい。理解を得るよう努める」にすべきではとの声があがる一方、「原則報告書を交付し、口頭で説明するとすべきでは」と、報告書の交付を明確に打ち出すことを求める意見が出た。
このやりとりに、堺構成員(日病会長)は、日病が実施した医療事故調査制度に関する会員の意識調査結果を引用、「74%の会員が報告書を遺族に渡すことは当然と考えている。制度が定着していけば、この率はさらに高くなるだろう」という認識を示した。
西澤構成員(全日病)会長も「全日病の内部でも報告書の交付は当然という感覚で議論されている」と発言。高宮構成員(日精協常務理事)も「日精協としてこれ(事務局案)でいい」と述べ、主要な病院団体が事務局案を支持した。
しかし、遺族への説明における“納得”という表現の削除、報告書の交付につながる表現の一切の排除を求める構成員も意見を譲らず、いったん事務局が修正した文案を示したものの、「当初の案の方がベター」とする意見も出るなど、とりまとめの成案を得るにいたらず、議論は膠着した。
あるいは、医療事故の定義に関しては、「当該死亡・死産を予期しなかったもの」の「予期しなかった」の解釈で意見が分かれた。
事務局案は、①当該医療の提供前に当該患者等に死亡が予期されていると説明していた場合、②同じく、死亡が予期されているを診療録等に記録していた場合、③当該医療提供の従事者等や医療安全委員会からの聴取で死亡が予期されていたと認められた場合、のいずれにも該当しないケースを「予期しなかった」とみなす、というもの。
これに対して、主に遺族側の構成員から、「①と②は分かるが、③は曖昧で、色々なケースが『予期しなかった』に該当しないと判定されかねない。③は限定的なケースであるという縛りを入れてはどうか」と、異議を申し立てた。
この意見にも、「限定的な条件を付与する必要はない」と反対が出たため、松原構成員(日医副会長)は、「③を根拠とするのは合理的理由がある場合とする、としてはどうか」と修正提案を行ない、西澤構成員も賛意を示した。この提案に、遺族側よりも医師側の一部構成員が反発。議論は行き詰った。
こうした堂々巡りの議論が続いた結果、意見が一致しない論点は7 項目にも達した。
通常の検討会であれば、座長は阿吽の呼吸で取りまとめを宣したり、「座長一任」をとりつける。しかし、医療事故調査制度の難しさを知る山本座長は、「全員が全論点で一致しない限りとりまとめとはしない。多数決は採用しない。権限のない座長に一任されても解決しない」と訴え、構成員に歩み寄りを求めた。
多くの構成員は、「時間がない。次回と言わず、個別のすり合わせで意見調整ができないか」と、とりまとめへの熱意を示した。
しかし、自説に固執する構成員から“小異を捨て大同につく”心意気は示されず、検討会は座長まかせの調整となり、不調の場合は再度最後の会合にとりまとめを期待することを確認して散会した。