全日病ニュース

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厚労省 7対1からの移行促進、病床機能に対応した患者像の明確化を示唆

厚労省
7対1からの移行促進、病床機能に対応した患者像の明確化を示唆

【中医協総会】
16年度改定 入院医療を総括的に議論。診療側鈴木委員、四病協追加提言の反映を求める

 3月4日の中医協総会は、2016年度診療報酬改定に向けた検討作業の第2弾として入院医療を取り上げ、その1回目の議論を行なった。
 事務局(厚労省保険局医療課)は入院医療をめぐる診療報酬に関する包括的な課題を明らかにし、当面の論点(別掲)を提示。その中で、「7対1算定病床はやや減少したが、依然すべての種別の中で最も多い」と指摘。引き続き、16年度改定でも7対1からの移行を促す方策の検討を提起した。
 また、「急性期医療が提供されていることを評価する指標(平均在院日数、「重症度、医療・看護必要度」など)からみたとき、医療機関の幅広い多様性がある」として、「緊急性の高い患者や、高度な医療を要する患者の受け入れを評価する」仕組みの検討を求めた。
 地域包括ケア病棟(病床)には、そのさらなる増加を促す方向を示唆した。
 一方、回復期リハ病棟や療養病棟に関して、嚥下障害の併発など日常生活機能の低下傾向が在宅復帰の妨げになっているとして、「様々な心身機能への対応や介護サービスなど社会資源の利用に関する調整が鍵を握っている」と指摘、対応策の検討を促した。
 入院患者の嚥下障害等ADLの低下は、今後、地域包括ケア病棟(病床)に対しても留意が求められていくとみられる。
 他方で、回復期リハ病棟について、「受け入れる患者像やリハの効果は医療機関の間で大きな多様性も認められる」とも指摘。患者像やリハ提供要件の見直しを示唆した。
 慢性期に関しては、まず、療養病床における入院受療率や平均在院日数等の地域差の存在と、「在院日数が長い場合ほど病状の見通しが不変な患者や死亡退院する患者の割合が大きくなる傾向」を指摘。
 加えて、今回の介護報酬改定で介護療養型医療施設が担う機能が重点的に評価されたこと、さらに、特殊疾患病棟入院料・障害者施設等入院基本料等の対象患者像が療養病棟と重複していることに言及。
 その上で、「長期療養を担う病床における可能な限り在宅復帰を促すための評価のあり方」と併せて、「病床の機能に応じて適切に受け入れるための状態像に応じた評価のあり方」を提起した。
 事務局の論点は、一層の機能分化を進めるために、それぞれの病床機能に応じた対象患者の厳格化とそれにふさわしい医療の提供をより評価する方向を、16年度改定のベースにおく考え方を表わすものとなった。

14年10月現在
一般7対1の減少数は約1万4,000床にとどまる

 事務局は、また、14年度改定後の一般病棟7対1の届出状況(14年10月)を報告した。それによると、7対1から約2万8,000床が他入院料に移ったが、他入院料から約1万3,000床が7対1に移行した結果、7対1病棟は、約38万床(14年3月)から約36万6,000床へと約1万4,000床の減少にとどまった。
 7対1病床数が減少した医療機関における主な届出病床数の変化をみると、10対1が1万6,000床(約170施設)、回復期リハ病棟1が1,300床(約30施設)、地域包括ケア病棟1が6,500床(約150施設)それぞれ増加している。
 一方、地域包括ケア病棟(病床)の届出は合計で2万4,600床となり、亜急性期入院医療管理料の1万1,100床の倍に達した。
 ただし、7対1と地域包括ケア病棟(病床)はともに、データ提出加算の届出にこの3月末まで経過措置が認められているため、具体的な移行状況が判明するのは4月以降となる。

支払側「療養病棟9区分評価の是非を俎上にあげるべき」

 16年度改定にかかわる入院医療に関する初めての議論の冒頭に、診療側の鈴木委員(日医常任理事)は発言を求め、診療側として、入院にかかわる診療報酬見直しの基本的な考え方を明らかにした(別掲)。
 その中で、日医と四病協の合同提言(13年8月)を取り上げ、前改定の議論で「在宅の急変は急性期医療の対象であるが、一部は地域包括ケア病棟で対応する」と整理された考え方を引き続き堅持すべきであると述べた。
 さらに、合同提言を踏まえた四病協の追加提言(13年11月)に触れ、そこで四病協が提唱した「地域医療・介護支援病院」を、地域包括ケアの中で在宅医療を支える担い手として、専門特化した中小病院や有床診ともども評価すべきであると論じた。
 回復期リハ病棟に関しては、要件に追加された「重症度、医療・看護必要度」A項目の見直しを提起した。
 同じく万代委員(日病常任理事)は、急性期医療の定義を従来指標のままでいいか再検討する必要があると提起。
 地域包括ケア病棟に関しては、経過措置が終わった後の実態を15年度入院医療調査に追加することを提案した上で、「要件や評価のあり方をより移行しやすいものとすべきではないか」と述べた。
 これに対して、支払側の白川委員(健保連専務理事)は7対1病棟が小幅な減少にとどまったことに遺憾の意を示し、「すべての要件にわたって(7対1からの)病床転換を促すような見直しを期待する」とコメント。
 さらに、地域包括ケア病棟(病床)の機能の再整理を、さらには、「療養病棟入院基本料の9区分の評価がいいか悪いかの議論もされるべき」という見解を表わした。

鈴木委員の発言(要旨)

 急性期に関しては、日医と四病協の合同提言に基づき、急性期には重症、中等症、軽症があり、急変は急性期であるが、その一部は亜急性期すなわち現在の地域包括ケア病棟でも診ることができるという前回の整理を、今後も継続させるべきである。その上で、急性期の大病院は高度急性期から急性期医療に特化できるようにすべきである。
 前回の改定以降、急性期大病院の一部に、空床を埋めるためにケアミックス化や病院の分割を行なう動きもあるが、病床を削減して診療密度を上げるべきと考える。とくに、毎年一般会計から7,000億円も繰り入れている公立病院は率先して病床を削減すべきである。
 次回改定では、そうした、高度急性期と急性期に特化して地域の最後の砦となる病院には、さらなる評価が必要と考える。
 前回改定で創設された地域包括ケア病棟・病床をさらに増やすために、次回改定でも一層の評価が必要である。地域包括ケア病棟・病床は、本来、かかりつけ医機能を持つ中小病院のためにできた病床である。かかりつけ医機能を持つ200床未満の病院は、地域包括ケアシステムの中で、有床診や診療所とともに中心的役割を果たす貴重な資源である。
 前回改定で四病協が追加提言した「地域医療・介護支援病院」は、病室単位の急性期病床を残しながら地域包括ケア病棟・病床を中心に地域のかかりつけ医の在宅を支える機能を持つものであり、次回改定では、専門特化した中小病院や有床診とともに、在宅支援を行なう中小病院や有床診を評価すべきである。
 回復期リハ病棟は創設以来著しい成果をあげてきたが、高齢化の進展により対象患者の重度化も進んでいるため、回復期リハの対象患者像を明確にする必要がある。前回改定で「重症度、医療・看護必要度」A項目が要件に入ったため、必ずしも回復期リハ病棟にふさわしくない重症患者が増えているとの指摘もあり、A項目の見直しの検討も必要である。
 高齢化の進展に伴い療養病床の入院患者も重度化しており、療養病棟入院基本料2の患者の重度化が進行することが考えられる。いずれにしても医療療養病床には今後より重度者の受皿としての役割が求められるだろう。
 15年度介護報酬改定で介護療養病床の機能は確保する考えが示されたが、日医としては病院としての存続が必要であると考えている。すなわち、重度者の受皿として介護療養病床の廃止は難しくなるのではないかと考える。
 障害者施設等入院基本料の病棟には医療療養病棟より重症な方が入院しており、なお出来高払いの継続が必要である。さらに、特殊疾患病棟には重度の難病で長期療養の必要な方が多く入院している。両方の病棟ともその機能に応じた適切な患者の入院の継続が必要である。


入院医療(その1)の課題と論点(要旨)

●急性期医療
・14年度改定で7対1病床は減少したが、依然すべての種別の中で最も多い。
・急性期医療を評価する指標に平均在院日数、「重症度、医療・看護必要度」などが用いられているが、こうした指標からみたとき、医療機関の幅広い多様性がある。
・医療資源を有効に活用して、質の高い医療を確保するためには、急性期病床がその役割を一層発揮するとともに、地域における効率的医療提供体制の構築を推進する必要がある。
【論点】
 急性期病床の機能分化を進めるため、緊急性の高い患者や高度な医療を要する患者の受け入れを評価するとともに、連携や在宅復帰を図る方策をさらに検討すべきではないか。
●地域包括ケア病棟・病床、回復期入院医療
・高齢化により日常生活機能の低下した患者が増えており、在宅復帰を進めるためには、心身機能への対応や介護サービスなど社会資源の利用に関する調整が鍵を握っている。
・「地域包括ケア病棟」の整備が進み、急性期から回復期への移行の円滑化が図られている。
・回復期リハ病棟は病床数やリハの提供単位数が急激に伸びている一方、受け入れる患者像やリハの効果は医療機関の間で大きな多様性も認められる。
【論点】
・14年度改定の影響を分析しながら、地域包括ケア病棟をはじめとする地域包括ケア体制の強化のあり方や円滑な医療連携を進める方策を、さらに検討を進めるべきではないか。
・回復期リハ病棟の実情を踏まえつつ、その機能が一層適切に発揮される評価のあり方を検討すべきではないか。
●慢性期入院医療・療養病床では入院受療率や平均在院日数等に大きな地域差がみられる。
・在院日数が長い場合ほど、病状見通しが不変な患者や死亡退院患者の割合が大きくなる傾向がある。また、医療区分ごとの患者割合等に療養病棟入院基本料1と2で違いがある。
・14年度改定で在宅復帰を促す見直しが行なわれ、15年度介護報酬改定では、介護療養型が担っている機能について重点的な評価が行われた。
・特殊疾患病棟や障害者施設等の入院基本料等は対象が定まっているが、意識障害を有する脳卒中など、状態像が療養病棟と重複している場合もある。
【論点】
 密度の高い医療を要する患者を病床の機能に応じて受け入れる、状態像に応じた評価についてどう考えるか。また、長期療養を担う病床で可能な限り在宅復帰を促すための評価のあり方についてどのように考えるか。