全日病ニュース

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2014年度の基金 規模、事業構成、公民割合に都道府県のばらつき大

2014年度の基金
規模、事業構成、公民割合に都道府県のばらつき大

【医療介護総合確保促進会議】
交付割合は公24.6%、民71.4%。ただし、機能分化への投入は少なく

 医療介護総合確保促進会議が3月6日に開かれ、事務局(厚労省保険局医療介護連携政策課)は、2014年度の地域医療介護総合確保基金の交付状況等の報告を行なうとともに、その事後評価をめぐる視点について意見を諮った(3面に関連記事)。
 報告によると、14年度の基金総額は903.7億円。各都道府県が計画した事業額の内訳は、病床の機能分化・連携に関する事業が174億円(基金総額の19.3%)、居宅等における医療提供に関する事業が206億円(22.8%)、医療従事者の確保・養成に関する事業が524億円(58.0%)という結果となった。
 基金総額のうちの602.4億円が国費で、その交付対象となった事業の内訳は、病床の機能分化・連携が152事業(事業全体の8.2%)、居宅等の医療提供が537事業(29.0%)、医療従事者の確保・養成が1,164事業(62.8%)であった。
 いずれも、地域医療構想策定前ということもあり、機能分化・連携に資する事業と事業額の割合はかなり小さなものとなった。
 この602.4億円の都道府県を介した交付先の公民割合は、公的機関が24.6%(147.9億円)、民間機関が71.4%(430.4億円)、交付先未定4.0%(24.1億円)となっている(15年2月現在)。
 ここでいう公的機関とは「医療法第31条に規定する公的医療機関並びに国、独立行政法人、国立大学法人及び地方独立行政法人が開設した医療機関」(事務局資料)とされているので、都道府県・市町村の開設する病院・診療所と国保連、日赤、済生会、厚生連などを含む、幅の広い公的医療機関を指している。
 ただし、これは交付額(国費)における割合であり、都道府県負担を含めた各都道府県の基金総額に占める公民の割合とは異なる。
 国費交付額における公民の内訳を事業分野別にみると以下のようになるが、機能分化・連携や医療従事者確保はともかく、在宅医療の事業に占める公的の割合が比較的大きい点から、都道府県によっては中小の自治体医療機関に積極的に投入していることが推察される。
①病床の機能分化・連携に関する事業
 交付額115.2億円のうち、公的機関に32.4億円(28.1%)、民間機関に64.7億円(56.2%)、交付先未定が18.1億円(15.7%)
②居宅等における医療の提供に関する事業
 交付額138.0億円のうち、公的機関に22.6億円(16.4%)、民間機関に113.2億円(82.0%)、交付先未定が2.2億円(1.6%)
③医療従事者の確保・養成に関する事業
 交付額349.3億円のうち、公的機関に92.9億円(26.6%)、民間機関に252.5億円(72.3%)、交付先未定が3.9億円(1.1%)
 都道府県別の交付額と基金規模は別掲のとおりだが、交付額(国費)に占める民間の割合をみると、90%を超える都県(埼玉県、東京都、福岡県)がある一方、50%を下回っているところが7県もある。
 公的病院のシェアが高いこともあるのだろうが、担当部局の認識が地域医療再生基金から変わっていない点もあるようだ。規模だけでなく、公民や事業分野の割合など、都道府県の認識や地域の医療等機関の取り組み姿勢いかんで、基金の活かされ方が大きく違ってくる1つの証左といえよう。
 15年度以降の基金は、機能分化・連携については地域医療構想にそった事業が対象となるが、構想策定前は「回復期病床等への転換など構想策定前においても必要性が明らかな施設・設備整備に対する助成事業」に投入される。
 構想の策定は15年度後半から16年度、都道府県によってはさらに時間がかかるところもあるとみられる。したがって、自主的な病床転換等の計画は15年度と16年度が採択のチャンスとなる。
 一方、15年度から交付される介護分に関しては、医療介護連携の分野となる在宅関係に不整合な状態が生じる可能性がある。それは15年度にスタートする介護保険法の地域支援事業(市町村が主体)に基金とは別の地域支援事業交付金があてられるために、これまでの在宅医療連携推進事業を受け継いで創設された包括的支援事業(在宅医療・介護連携推進事業)に基金が使えないという矛盾である。
 つまり、在宅医療自体は基金の対象となるが、地域包括ケアとなるべき在宅医療・介護連携の事業が都道府県裁量の基金から外れ、市町村の裁量となるわけで、会議でも、多くの構成員から「都道府県と市町村の連携がとれないと基金ひいては地域医療構想もうまくいかない」と、懸念の声があがった。