全日病ニュース

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2次医療圏と異なる区域は可能。最後は構想区域が2次医療圏に

2次医療圏と異なる区域は可能。最後は構想区域が2次医療圏に

【地域医療構想】
急性期と回復期の患者の対象を広げる

 地域医療構想の策定は4月1日をもって施行され、これに関連した政省令・告示が3月31日付で公布され、同日付の厚労省医政局長通知(医政発0331第9号)は、地域医療構想の策定を含む医療介護総合確保推進法の4月1日施行事項について解説、その周知かつ留意を求める旨を各都道府県知事に要請した。
 以下に医政局長による施行通知の内容を整理した。(1面記事を参照)

急性期、回復期、慢性期は構想区域内で対応が望ましい

●構想区域の設定に関する基準
医政局長による施行通知は、構想区域について、2次医療圏を原則としつつ、人口構造の変化の見通しその他の医療の需要の動向等を考慮して、地域における病床の機能分化・連携の推進にふさわしいと認められる区域を単位として設定すると簡潔に記しているが、GLは「現行の2次医療圏と異なる構想区域を設定することも可能」と明記している。
 その上で、2018年度からの次期医療計画で「2次医療圏を構想区域と一致させることが適当」とし、構想区域を新たな2次医療圏とすることを提唱している。
 医療計画の5疾病5事業の圏域設定について、厚労省は「従来の2次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する」(07年7月20日付の指導課長通知・医政指発07200001)ことを求めたが、GLでも、「急性期、回復期及び慢性期の機能区分はできるだけ構想区域内で対応することが望ましい」との考え方から、構想区域の設定を経て、人口規模、面積、アクセスに大きな差がある既設圏域の見直しが可能と、その道筋を示した。
 したがって、構想区域の設定問題は、医療関係者にとって、地域医療構想を策定する中できわめて重要なテーマになるとみられる。

2次圏と異なる区域設定に市町村単位のデータ処理の課題

●将来の病床数の必要量の算定方法
施行通知は「将来(2025年)の病床数の必要量の算定方法」を算定式を明示している。算定の具体的な方法はGLに詳しく示されているので、ここでは、施行通知で明らかにされた算定方法の注釈を踏まえ、留意すべき点を以下のように整理してみた。
・「年齢階級」は、原則、5歳ごとの年齢による階級とする。
・構想区域ごとに定める性別・年齢階級別入院受療率は、病床の機能区分ごとに定める以下の医療資源投入量(1日当たりの診療報酬の出来高点数=入院基本料相当分とリハビリ料を除く)の医療を受ける入院患者等のうち、当該区域に住所を有する者の性別・年齢階級別の数を当該区域の性別・年齢階級別人口で除して得た数、とする。
①高度急性期は医療資源投入量が3,000点以上とする。
②急性期は600点以上3,000点未満とするが、そうした医療を受ける入院患者には、175点以上600点未満の医療を受けていても、早期リハビリ加算を算定する患者で、リハビリ料を加えた医療資源投入量が600点以上となる者を含む。
③回復期機能は225点以上600点未満の医療もしくは主にリハビリを受ける入院患者、または、これらに準ずる者として厚生労働大臣が認める者とするが、175点未満でも、リハビリ(回復期リハを除く)を受け、かつ、リハビリ料を加えると175点以上となる者を含む。「主としてリハビリを受ける入院患者」とは回復期リハ病棟入院料の算定患者とする。「これらに準ずる者として厚生労働大臣が認める者」とは、在宅復帰に向けて調整を要する者(医療資源投入量175点以上225点未満)とする。
・慢性期機能の入院受療率は、構想区域に住所を有する慢性期入院患者に別定の範囲で都道府県知事が定める補正率を乗じた数に、障害その他の疾患を有する入院患者を加えて得た数を、当該区域の性別・年齢階級別人口で除して得た数とする。ただし、別定の要件に該当するときは、補正率により算定した2025年における病床数の必要量を2030年までに達成すればよいものとする。
 ここで、慢性期入院患者とは、療養病棟(特別)入院基本料、有床診療養病床(特別)入院基本料を算定する入院患者から医療区分1の患者の70%相当数を除くものとする。「障害その他の疾患を有する入院患者」とは、障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院基本料および特殊疾患入院医療管理料を算定する患者とする。
・地域医療構想には、構想区域における将来の居宅等における医療の必要量も定める。
 「構想区域における将来の居宅等における医療の必要量」は、(1)~(4)の合計数とする。
(1)当該区域に住所を有する慢性期入院患者のうちの、①医療区分1の70%、②入院受療率の地域差解消によって在宅の医療需要として推計する患者数(①を除く)の合計数。
(2)当該区域に住所を有する225点未満の医療を受ける入院患者のうち、①在宅復帰に向けて調整を要する者(175点以上225点未満)、②回復期リハ病棟入院料の算定患者、③リハビリを受ける患者でリハビリ料を加えた投入量が175点以上となる医療を受ける者の数を控除して得た数。
(3)2025年の人口に訪問診療の受療率を乗じた数。
(4)2025年の人口に当該区域の老健施設入所者の入所需要率を乗じた数。
 以上の算定方法において、「175点以上600点未満であっても、早期リハ加算を算定し、かつ、リハビリ料を加えると600点以上となる入院患者は医療資源投入量が600点以上3,000点未満(急性期)に含まれる」、「175点未満であっても、リハを受け、リハビリ料を加えると175点以上となる入院患者は医療資源投入量が225点以上600点未満(回復期)に含まれる」、「医療資源投入量が175点以上225点未満は在宅復帰に向けて調整を要する者として225点以上600点未満(回復期)に含まれる」という点で、医療機能区分の基準の緩和が図られた。これは、厚労省が病院団体等医療関係者の要請を受け入れたためだ。
 各都道府県はこの算定式にしたがって自県と各2次医療圏の病床の必要量を導くわけだが、全国単位の必要量はすでに厚労省の手で算出されており、各都道府県が算出した数字を積算すれば、厚労省が出した全国の合計数に一致することになる。
 各都道府県が算出した2次医療圏ごとの数字は5月以降に示されるとみられるが、問題は、都道府県に提供されるNDBのデータは都道府県と2次医療圏単位からなる各種数値であるため、現行圏域と異なる構想区域を設定する場合に、その医療需要と必要病床量をどのように算定するかである。
 人口等は市町村単位で把握できるが、患者の出入りを市町村単位でつかまえるためにはレセデータを患者住所から追跡し直すことになるため、都道府県には面倒な作業となりかねない。
 これが、2次医療圏と異なる構想区域設定の障害となるのか、医療関係者にとって関心の1つとなろう。

調整会議の運営とともにデータの分析・活用が重要に

●地域医療構想を実現するために必要な措置に関する規定
 施行通知は、標題に関する説明の「勧告、命令等に従わない病院等に対する対応」の中で、都道府県知事は、公的医療機関等が命令・指示に従わない場合には、①医療機関名の公表、②地域医療支援病院の不承認または承認取消し、③(一定条件の下で)管理者の変更命令等の措置を講じることができる、と明記されている。
 これはGLにより詳しく説明されているが、施行通知では、地方への権限移譲に伴う政令(平成27年政令第128号)の施行に伴い、今後、指定都市の市長が病院の開設の許可等に関する事務・権限を行なうが、その場合も前出①~③の取扱いは変わらないこと、また、医療法において、指定都市の市長は都道府県知事による地域医療構想の達成の推進のための勧告・命令等の趣旨を尊重することになっている旨を明らかにしている。
●地域医療構想策定後の取り組み
 構想策定後の取り組みについては、GLでは重要な部分として地域医療構想調整会議のことを中心に詳しく説明されているが、法令上の規定を伝える施行通知は策定後の取り組みに触れていない。しかし、地域医療構想の実現に向けた取り組みは、まさに、調整会議の運営のいかんにかかっているといっても過言ではない。
 調整会議については、過剰な機能への病床転換を志向するあるいは要請等を受けた病院と地域の医療や保険者等関係者との協議のあり様にもっとも関心が集まっているが、それと並んで重要なことは、地域医療構想が策定されるまでの間に、調整会議あるいは各病院が、各都道府県から提供されるデータをどう読み込んでいくかという作業であり、そこから導かれるシミュレーションやベンチマーク等の作業が各病院の今後の行き方を左右するとみられる。
 しかし、多くの病院はデータの分析や活用に不慣れであり、DPCデータの扱いに精通している病院でも、地域や都道府県単位の、しかも将来推計のデータとなると、アナリストの数は少ないと思われる。
 この分野は医師会をはじめとする医療団体が主導的な役割を発揮することが期待され、病院団体に新たな役割が求められようとしている。