全日病ニュース

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医療課長「大病院外来は定額制とともに診療報酬の措置も引き続き検討」

▲診療側(左側の列)は初再診料等の引上げが必要との認識を示した

医療課長「大病院外来は定額制とともに診療報酬の措置も引き続き検討」

【中医協総会】
地域包括診療料の届出施設(14年7月)は29都道府県に122。病院はわずかに13

 4月8日の中医協総会は2016年度診療報酬改定に向け、「外来医療」について1回目の概括的な議論を展開した。(1面記事を参照)

 16年度改定に向けた外来に関する議論の課題として、14年度改定の答申書附帯意見は、以下の3点をあげている。
(1)初再診料、時間外対応加算等について引き続き検討する。
(2)主治医機能の評価(地域包括診療料・地域包括診療加算)の影響、大病院の紹介率・逆紹介率や長期処方の状況等を調査・検証し、外来医療の機能分化・連携の推進について引き続き検討する。
(3)処方医やかかりつけ医との連携を含めた分割調剤について引き続き検討する。
 これを踏まえ、事務局は、「外来医療に対する診療報酬上の評価」「外来医療全体の受診動向」「外来の機能分化」「受診行動」「主治医機能」という5つの視点から外来医療の現況データを提示、議論に付した。
 14年度改定の結果検証のうち、外来の機能分化・連携に関する調査はこの6月に実施されるため、結果が出るのは秋以降となる。また、医療保険制度改革として「紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入」が実現する見通しだ。
 したがって、正確な実態と制度変更を踏まえた本格的な議論はまだ先になるが、事務局は、この日のデータから、次のような点を指摘した。
①病院の診察時間は長くなる傾向にあるが、病院の待ち時間は短くなる傾向にある。
②外来に対する勤務医の負担感は徐々に軽減されている。
③「重複受診」は高齢者だけでなく、小児にも比較的多い。
④「重複投薬」は比較的小児に多い。薬局による疑義照会から推計すると、重複投薬は年間約117万件に達する。
⑤薬局による疑義照会から推計すると、「残薬に伴う日数・投与回数の調整」による薬剤費削減効果は約29億円となる。
⑥1回に7種類以上の処方が行なわれる頻度は診療所よりも病院で高い。院外処方1件あたりの処方日数も病院で長く、診療所は短い傾向にある。
 以上の指摘等を踏まえると、外来の機能分化・連携の推進に向けた診療報酬上の取り組みは徐々に効果を表わしてきているが、大病院における非紹介患者の割合はいぜんとして高く、同時に、「重複受診」「重複投薬」「残薬」への対応がより重要な課題となっているとする事務局の問題意識がみえる。
 このうち、「重複受診」「重複投薬」「残薬」への対策として登場したのが前改定における地域包括診療料と同加算であるが、改定後(14年7月)の届出数は、地域包括診療料が29都道府県に122施設(うち病院は13)、地域包括診療加算は全国で6,536施設と少なく、しかも、都道府県間のばらつきが大きい。
 議論にあたり、事務局(厚労省保険局医療課)は、16年度改定に向けた外来医療の課題を、「外来の機能分化・連携を推進する方策や、重複投薬や残薬を減らす方策、主治医機能の強化を含め、外来診療の質の向上と効率化を図る方策について、平成26年度改定の答申書付帯意見も踏まえ、更に検討していくべきではないか」と整理した。

地域包括診療料と同加算の拡充に支払側は慎重な構え

 議論の冒頭、診療側の鈴木委員(日医常任理事)は、支払側を代表して、外来に関する概括的な見解を表明した。その骨子は以下のとおり。
①「残薬」に関しては長期処方の制限を検討する必要がある。また、入院時持参薬の制限(DPC対象病院)において常備薬は認めることを検討する必要もある。さらに、重複投薬への対応も含め、かかりつけ医が薬局等の薬剤師と連携して対応していくことが必要。
②(地域包括診療料と同加算による)かかりつけ医機能の評価はわが国の医療提供体制を大きく変える可能性もあることから、検証調査の結果を踏まえ、じっくりと考えるべきである。
③処遇改善や光熱費・施設整備費等のコスト上昇に対応するため、初再診料や外来診療料はさらなる充実が必要である。
 鈴木委員は、「かかりつけ医(の機能を担う医療機関)には中小病院も含まれる」ことを強調した上で、前改定で新設された地域包括診療料と同加算について「服薬管理をかかりつけ医の業務と確認したことや院内処方を基本としたことは評価する」など、「日本医師会は、これはかかりつけ医の評価の道筋をつくったものと考えている」と肯定する一方で、その拡充など今後の展開に関しては、地域医療に与える影響が大きいことを理由に、「ゆっくりと進めるべきである」と注文をつけた。
 これに対して、支払側の白川委員(健保連専務理事)は、外来医療への対応について、「前改定で実施した措置等の傾向を引き続き行なっていく方向で臨むべき」とした上で、「大病院外来の問題は定額負担の導入が決まった後に議論すべきだが、それによっても分化は大幅には進まないだろう。いろいろな角度から策を考えないとならない」との認識を表わした。
 また、重複処方等に関しては「薬剤師の役割が非常に大切だ」と発言。長期処方の制限の検討については「処方期間を議論することには賛成する」と、さらに、「主治医機能の強化という方向は診療側と同じだ」とも述べ、支払側の考えに同調した。
 ただし、「初再診料の底上げという考え方は受け入れられない」として、報酬引き上げについては診療側と一線を画した。
 大病院外来の定額負担に関して、宮嵜医療課長は「改正法が成立後に中医協で審議していただくが、その直接的内容にとどまらず、色々な面から機能分化を考えていくことになるのではないか」と、引き続いて診療報酬上の措置を検討する必要を認めた。