全日病ニュース

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日本専門医機構 総合診療専門医のプログラム整備基準案を決定

日本専門医機構
総合診療専門医のプログラム整備基準案を決定

6つのコアコンピテンシーで医師像を示す。3年間で小規模施設と病院の総合診療を経験

 日本専門医機構は4月6日の理事会で総合診療専門医の「専門研修プログラム整備基準案」等を了承。4月21日に、専門研修カリキュラム案、指導医とプログラム統括責任者の要件、総合診療専門医養成過渡期の考え方、を公表した。
 研修期間は3年。2017年度に研修を開始、20年度に最初の専門医が誕生する。
 カリキュラム案は、総合診療専門医研修の到達目標として6つのコアコンピテシー(修得すべき基本能力)を明示、経験目標と合わせ、総合診療専門医の医師像を明確にした。

日本専門医機構の理事会で承認されたうちの「専門研修プログラム整備基準案」はなお加筆補正が必要として公表が控えられたが、「専門研修カリキュラム案」「専攻医の指導およびプログラム統括責任者について(要約版)」「総合診療専門医を養成する制度の構築とその展望(要約版)」の3点が公表された。
 同機構は、この3つも、「整備基準案」の修正によっては変更があり得るとしている。
 公表が見送られた「整備基準案」には、計3年のうち18ヵ月を専門研修に当て、その中で診療所・小規模病院(専門研修Ⅰ)と総合診療部門をもつ病院(専門研修Ⅱ)を各6カ月以上経験すること、加えて、内科を6ヵ月以上、小児科と救急科を各3ヵ月以上、さらに、産科、整形外科、リハビリテーション科なども6ヵ月以内で適宜研修することも可能とするプログラムの考え方が盛り込まれている。
 カリキュラム案に掲げられた6つのコアコンピテンシーは、(1)人間中心の医療・ケア、(2)包括的統合アプローチ、(3)連携重視のマネジメント、(4)地域志向アプローチ、(5)公益に資する職業規範、(6)診療の場の多様性、からなる。
 それぞれのコアコンピテンシーに一般目標と個別目標が示され、各個別目標には必須目標と努力目標の別が明記された。
 そのうち、「診療の場の多様性」では、個別目標に、必要な専門家への紹介、外来で可能なリハの提供、認知症への対応、救急外来における軽症全般及び中等の一部の担当、災害時の救急医療の実施、併存疾患の多い患者の主治医機能、在宅療養の高齢患者に対する高齢者総合機能評価の実施、在宅療養の障がい者(児)への対応、在宅緩和ケアに必要な疼痛管理や疼痛管理以外の症状管理、多職種連携会議への出席など、プライマリ・ケアを実践する病院・診療所の医師に求められる知識、技能、態度を習得課題としてあげている。
 また、経験目標の1つに「介護保険制度の仕組みやケアプランに則した各種サービスの実際」をあげ、①主治医意見書の作成、②居宅介護サービス・施設の患者・家族への説明と適応の判断、③ケアカンファレスにおけるアドバイス、④施設入居者の日常的健康管理、⑤施設入居者の急性期対応と入院適応の判断と、医療・介護の連携に欠かせない業務の経験を求めている。
 専門研修を実施する施設基準はⅠⅡの別に設けられるが、病床の規模は施設基準から除かれた。専門研修基幹施設の基準はⅠまたはⅡの基準を満たした上で、プログラム統括責任者の常勤等を要件としている。
 指導医に関して、日本専門医機構は、「6つのコアコンピテンシーを現に地域で実践している」臨床医に参画を促したいとしている。しかし、一方で、同機構は「専門医資格を更新した専門医が指導医につく」ことを原則としている。
 2020年に誕生する専門医の最初の更新は5年後の2025年となる。したがって、少なくとも2025年までは現在の“総合診療医”が指導医等を担うことになるが、新たな指導医と専攻医の数によっては、さらに長い期間、過渡期の指導医に依存せざるを得ない。
 そのため、多くの臨床医にその任を委ねる必要があるとして、以下の6つの学会等の認定医・専門医などを候補にあげ、レポートの提出と指導医講習会の受講を条件に指導医とする方針を打ち出した。
①プライマリ・ケア連合学会のプライマリ・ケア認定医および家庭医療専門医
②全国自治体病院協議会と全国国民健康保険診療施設協議会の地域包括医療・ケア認定医
③日本病院総合診療医学会認定医
④大学病院または臨床研修病院で総合診療部門に所属して総合診療を行なう医師(卒後臨床経験7年以上)
⑤④の病院と協力して地域で総合診療を実践している医師(同)⑥都道府県・郡市区医師会から「カリキュラム到達目標の6 つのコアコンピテンシーを地域で実践している」として推薦された医師 ただし、指導医として認定するが、それをもって総合診療専門医とみなすかどうかの結論はまだ出ていない。
 このほか、総合診療専門医に関しては、指導医にならない既存専門医の移行措置や総合診療医とサブスペシャリティ専門医との関係なども明確にされる必要があるが、他の基本領域専門医と同様に、引き続く検討課題とされた。