全日病ニュース

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7対1・10対1における地域包括ケア病棟・病床の動きを調査

7対1・10対1における地域包括ケア病棟・病床の動きを調査

【入院医療等の調査・評価分科会】
2015年度実施の入院調査案まとまる。特定除外制度やデータ提出加算の実態も

 4月30日に開催された診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」は、2014年度改定で見直された入院関連項目の影響等を検証する調査のうち、15年度に実施する分の調査項目案を基本的に了承した。
 14年調査は、調査票の原案を診療報酬基本問題小委員会を経て中医協総会に諮った上で6~7月に実施され、9月以降に調査結果(速報)が同分科会に報告される。
 調査項目は、(1)7対1・10対1における特定除外制度見直しの影響、(2)7対1・10対1におけるデータ提出加算の届出状況、(3)7対1・10対1における地域包括ケア病棟・病床の届出状況、(4)特定集中治療室管理料の見直しの影響、からなる。
 7対1・10対1入院基本料届出施設に関しては病棟転換の有無と転換先についてたずねるだけでなく、具体的に、地域包括ケア病棟・病床の届出に関する状況も調べる。
 地域包括ケア病棟・病床の届出状況は14年度調査でも取り上げられているが、事務局(厚労省保険局医療課)は「その後の推移も含めて再度調査することにした」と説明した。
 事務局は、また、「重症度、医療・看護必要度」、短期滞在手術等基本料等、地域包括ケア病棟入院料、慢性期入院医療など14年度に実施した入院調査の結果(速報値)を次回の分科会に報告することを明らかにした。
 したがって、分科会は5月から8月にかけては14年度調査の結果の分析について議論し、9月以降に特定除外制度の見直し、データ提出加算、特定集中治療室管理料、そしてその他検討が必要な事項に関する議論が展開されることになる。

地域包括ケア病棟は再度の調査。在宅支援機能の状況も項目に

 15年度調査案に対しては分科会の委員から調査項目に追加・修正を求める意見が相次いだが、その多くが地域包括ケア病棟・病床の設問等に向けられた。
 その1つとして、神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)は、「1年経過して、地域包括ケア病棟の役割や機能は変ってきている。看取りや医療必要度高い在宅患者のレスパイトなど、在宅を支援する機能の充実化がうかがわれる」と指摘、「この辺りの状況を把握できる調査内容にしてほしい」と求めた。
 これに対して事務局は、「現時点では主にポストアキュートについてたずねる方針であるが、そうしたご意見も反映できるよう努めたい」と善処する意向を示した。
 また、池端委員(医療法人池慶会理事長)は、「療養病床は手術が出来高だが、地域包括ケア病棟・病床は包括されているので苦しいと思う。この点をどうみているか、届出を行なわなかった理由の回答の1つに手術の包括化を追加してはどうか」と提案、事務局は「追加を検討する」と回答した。
 一方、石川委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)は、地域包括ケア病棟・病床と他医療機関との連携の状況をたずねる必要を提起。事務局もその必要を認めた。日医常任理事である石川委員は「地域包括ケア病棟は地域連携が前提となるが、これは地域差が大きい。とくに在宅医療がまったく整備されていないところは(その機能発揮に)大変な問題がある。地域医療構想できちんとしたビジョンを打ち出してしっかりした議論をしていく必要がある。この調査がそうしたことに少しでも役立ってほしい」と述べ、今回調査への期待感を表わした。
 他の意見も含め、事務局案の修正を武藤分科会長に一任し、15年度調査の案は了承された。

医療課「病棟群単位の入院基本料」中医協議論の可能性を認める

 分科会の今後の検討事項を確認する議論の中で、安藤委員(医療法人西福岡病院理事長)は、「ある地域医療支援病院が地域包括ケア病棟を設けたために地域で問題となった。これは自己完結型であり、急性期病院のケアミックス化は想定外ではないか」として、「こうした動きを全国レベルで拾い上げてはどうか」と提起した。
 これに対して、「ケアミックス化を介した転換プロセスという可能性もある。各病院がどういう役割分担をしていくかは地域医療ビジョンの中で地域ごとに定めていくことになる」と、前出事例を擁護する発言も出た。
 一方、7対1入院基本料見直しの一環として実施された短期滞在手術等入院基本料3の見直しを取り上げ、「短期滞在手術3をどう拡大していくのか。しないのか。DPCとの関係をどうするのか」との質問も出た。
 これに事務局は、「算定対象をどうするのか、個別の議論としてはある。基本的には中医協の議論だが、(調査結果の分析から)そのテーマを(中医協に)提案することもある」と答えた。
 こうした議論に対して、神野委員は四病協と日病協が提案した「入院基本料を病棟群単位で算定する」考え方を取り上げ、「入院基本料を病棟群で選択できれば看護師の配置に苦労することもないし、患者の疾病によっては必ずしも7対1に入る必要もなくなる。こうした議論は中医協で可能か」とたずねた。
 事務局は「そうした議論が出てくれば中医協としてどう対応するか考えることになるのではないか」と述べ、議論対象となり得ることを認めた。