全日病ニュース

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Ⅰ群評価の見直しとコーディングの質向上の考え方をまとめる

Ⅰ群評価の見直しとコーディングの質向上の考え方をまとめる

【DPC評価分科会】
「中間とりまとめ案」― 様式1やレセプト等に14桁コード記載を求める

 4月27日に開催された診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会は、事務局(厚労省保険局医療課)が提示した「DPC制度に係るこれまでの検討状況について検討結果(中間とりまとめ)案」を了承した。「中間とりまとめ案」は診療報酬基本問題小委員会を経て中医協総会に報告され、16年度改定に向けた検討の方向性について判断を仰ぐことになる。
 「中間とりまとめ案」は、2016年度改定におけるDPC制度見直しに関する検討課題のうち、昨年11月から今年4月までの5回にわたる議論の結果を整理したもの。検討項目は、(1)医療機関別係数(Ⅰ群病院=大学病院本院の評価のあり方)、(2)退院患者調査(ミスコーディングへの対応)、からなる。
 (1)では、Ⅰ群病院における係数のばらつきが大きい背景に「分院(Ⅱ群)の機能が高く本院(Ⅰ群)の機能が低い」大学病院の存在があり、そうした大学病院を一律の基礎係数で評価することの是非が問われた。
 その結果、「中間とりまとめ案」には、対応方針として、①他の大学病院本院と比較して機能の低い医療機関に関しては機能評価係数Ⅱで対応をする(対応すべき点としては「分院よりも機能の低い本院の評価」「精神病床の有無の評価」などが考えられる)、②Ⅰ群のみでなく、Ⅱ群病院にも同様の評価を行なうかを検討する必要があるのではないか、の2点が書き込まれた。
 (2)の退院患者調査に関しては、主に不適切なコーディングをなくしていく対策を検討した結果、以下の方針が掲げられた。
①DPC対象病院の要件である「適切なコーディングに関する委員会」の開催頻度を増やす(現行は年2回)
②DPC請求に関わる全ての医師・看護師等へ「適切なコーディングに関する委員会」を通してコーディングルールの周知を行なう
③「コーディングテキスト」に手術・処置・副傷病等(下8桁)のコーディングルールを記載する
④今後、DPC算定病床に入院した患者は様式1・Dファイル・レセプト等にコーディングの根拠となったDPCの14桁コードを記載し、包括対象外となった場合はその理由の記載を求める
⑤ミスコーディング率の定期的なモニタリングを行なう上記以外に「様式1と様式4の統合は引き続き検討する」、すなわち、16年度改定では見送ることが盛り込まれた。
 こうした検討方針のうち、大学病院の実績のばらつきと基礎係数との矛盾を機能評価係数Ⅱの評価で補正する方針に対して、美原委員(公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長・全日病常任理事)は、そうした矛盾はⅢ群にこそ当てはまるとして、Ⅲ群病院の評価のあり方をあらためて議論すべきとの見解を表明。具体的には「基礎係数と機能評価係数Ⅱの重みづけの見直し」を検討するよう求めた。

医療課「Ⅱ群病院は高度急性期機能を担う」

 Ⅰ群病院をめぐる議論の中で、医療課の佐々木企画官は、「これは医政局とはまだきちんと合意しているわけではないが」と前置きした上で、「Ⅱ群病院は高度急性期機能を担うところではないかと保険局としては思っている」と発言した。
 同企画官の発言は、Ⅱ群病院を3次医療圏に位置づけるべきではないかという瀬戸委員(東大大学院医学系研究科教授)の意見を受けてなされたもの。
 同委員の発言は要旨以下のとおり。
 「Ⅱ群病院の中には、大学病院に準じる医療活動をしていても、ほかに高度な病院がないと難易度の低い手術をいっぱいせざるを得なく、Ⅱ群に残れないという病院もあるのではないか。その結果、3次医療圏にⅡ群病院が1つもないという可能性が出てくる。できればⅡ群の病院は3次医療圏に最低数あるようにした方がいい。Ⅱ群の位置づけを、『大学病院に準じる』というだけではなく、3次医療圏の中の中核病院的な存在として位置づけてはどうか」
 この意見に対して、佐々木企画官は、Ⅱ群病院の要件、したがって診療報酬の上で高機能急性期病院を評価する考え方をなぞらった上で、「地域医療ビジョンということで、今後、各都道府県で、2次医療圏、3次医療圏の医療機関の高度急性期や急性期の病床の割り振りとかが議論されていくが、基本的にはそうした議論との整合性を考えたときに」と論じたあと、前述の発言を行なったもの。
 このあと、同企画官は、「改定に間に合うかどうかという議論もあるが、そういった各県での取り組み状況を見ながら、整合性が取れれば、そういう形で次期改定で対応できないかということは考えている。そういう意味では、ご指摘の点も、今後各県での議論の中で、そういった提案・要望として出てくるかもしれない」と続けた。
 そして、「これから各県とも議論を始めるところなので、まだDPC分科会でご紹介できる段階ではないが、しかるべき段階で、医政局のほうから検討状況などを分科会に報告いただいて、平成28年度改定でどうしていくかということを議論していただく予定である」と結んだ。
 医療課が「Ⅱ群病院は高度急性期」との考えを表明したのは今回が初めてではない。
 昨年9月5日のDPC評価分科会は16年度改定におけるDPC制度見直しに向けた検討の方向性を「中間とりまとめ案」に整理したが、その中で。医療機関群のあり方について、(1)Ⅰ群を大学病院本院とする現行制度を維持する、(2)Ⅱ群の要件を「地域における機能」とし、病院が地域でカバーしている機能を対象とした基準に見直す、(3)Ⅲ群は細分化しないが機能評価係数Ⅱの配分割合の引き上げを考える方向で検討する、とまとめた。
 この議論で、佐々木企画官はⅡ群について、「Ⅰ群に準じるという相対的な要件が設けられているが、それを、何らかの絶対的な基準に変える」方向で検討に臨む方針を説明した。実は、前述(2)は瀬戸委員の問題提起に通じる論点であるのだが、その際に「Ⅱ群病院はある程度高度急性期を担うものと考える」との認識を示している。

地域医療構想GLは高度急性期の類型を示していない

 この発言がなされた昨年9月は病床機能報告制度がスタートする10月の直前である。したがって、病床機能報告制度とその延長にある地域医療構想における医療機能の概念と診療報酬の評価との整合性が意識されてきた時期ともいえる。
 地域医療構想のガイドラインは「高度急性期は特に診療密度が高いことが必要となることから、必ずしも当該構想区域で完結することを求めるものではない」と指摘。あるいは「(高度急性期の医療需要に対する医療提供体制については)他の構想区域の医療機関で医療を提供することも検討」すると述べるなど、2次医療圏を越えた圏域でその機能の病床の整備を進める考え方を明らかにしている。
 したがって、高度急性期の機能を持つ病棟は3次医療圏単位で考えるというのは地域医療構想の上ではあながち間違いではない。ただし、地域医療構想のGLは、高度急性期の機能を持つ病棟とはなんであるかについては明らかにしていない。
 GLは、「病床の機能別分類の境界点の考え方」で、高度急性期を「救命救急病棟やICU、HCUで実施するような重症者に対する診療密度が特に高い医療」と定義しているが、GLが明らかにしているのは、将来の医療機能別の医療需要(患者数)を推計する上で2013年度における機能別の患者数を求める指標として1日の出来高換算3,000点以上の患者を高度急性期として区分したに過ぎず、必ずしも救命救急病棟やICU、HCUを高度急性期の病棟・病床と断定したわけではない。
 高度急性期がどういう医療を提供する病棟・病床であるかは、現時点では前出のような定性的定義によるしかないが、その定量的な定義は、今後、病床機能報告の内容を分析する中から導かれることになる。
 したがって、病床機能報告の初年度(14年10月)の結果を踏まえた地域医療構想における機能別の必要病床数は、あくまでも13年度の機能別患者数から類推した将来の患者数を病床数に換算したもので、その病床がどういう類型の病棟・病院に収斂していくかは即断できない。逆に言えば、どう収斂させていくかは地域ごとに地域医療構想調整会議を踏まえた医療機関の自律的な判断に委ねる、というのが地域医療構想の狙いということになる。
 そうした意味からは、前出企画官の「(DPC)Ⅱ群病院は高度急性期機能を担うもの」という考え方は、構想を策定する都道府県をミスリードする可能性があるともいえよう。
 ただし、そうした医療機関の自律的な病棟政策をデータにもとづく現状分析と基金事業で支えるだけでなく、診療報酬の面からも支援していくという課題は現在にいたるまで具体的な議論となっていない中、医政局との協議(合意)を踏まえつつ検討していく必要性を述べた点で、前出企画官の発言はまさに正鵠を射るものいえよう。
 もっとも、そうした議論は各都道府県の構想が出揃わないだろう16年度改定には間に合わないし、また、DPC制度枠内の議論に収まるものでもない。
 いずれにしても、介護報酬とのタブルとなる18年度改定が大きなやまばとなるのは必至であるが、その際、病棟単位の評価と病院単位の評価の間にどう整合性をつけるのかが、診療報酬にとって重要なテーマになると思われる。