全日病ニュース

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諮問会議「経済再生と両立する財政健全化計画」で医療・介護に大胆な提案

諮問会議「経済再生と両立する財政健全化計画」で医療・介護に大胆な提案

医療法人営利業務の解禁、地域医療構想前倒し、診療報酬抜本見直しによる病床適正化等

 5月19日の経済財政諮問会議は財政健全化計画の策定に向けた論点(各論)の整理を行なった。議論を主導しているのは、経済再生と両立する財政健全化計画の策定に向けて、「この3ヵ月間に30回以上にわたって、関係各省や自治体、有識者のヒアリングを重ね、その結果を論点として整理した」民間議員の4人である。
 民間議員は、前回(5月12日)の提案を踏まえ、「経済・財政一体改革」の個別改革目標として、(1)社会保障(保険料)負担率(対国民所得比)の上昇に歯止めをかける、(2)主要公共サービス(医療費、後発医薬品利用等)の1人当たりの地域差を半減する、(3)地方公共サービスと社会保障サービスにおける取り組みの先進的100事例を選定し、インセンティブの仕組みを活用して全国展開すること、などを提起。
 その上で、実現すべき明確な成果指標を計画に盛り込むとともに、遅くとも年内に2020年度までの改革工程を具体化することが必要と述べ、厚労省に方針の明確化を求めた。
 臨時議員として出席した塩崎厚生労働大臣は申出を受諾。諮問会議は、次回、社会保障の改革課題と工程について、「時間軸を明確にした」案を提示することを確認した。
 民間議員の提案について、会議後の記者会見で甘利内閣府特命担当大臣は「民間議員の御提案の取組の必要性・重要性については合意が得られた」とした上で、「各歳出分野で公的分野の産業化、インセンティブ改革、見える化といった取組を進めるとの点で一致した。これを土台として、関係大臣から具体的な検討結果が示される。このキャッチボールをしながら、具体的に形のみえる方向にしていきたい」と述べ、考え方の土台になるが、具体化に向けては議論途上であるとした。
 民間議員が示した論点の要旨は以下別掲のとおりであるが、4月27日の財政制度分科会に財務省が提案した内容と重なる部分が多い。

「経済再生と財政健全化を両立する計画の策定に向けて」論点整理・各論から(抜萃) 経済財政諮問会議(5月19日)における民間議員の提案

【基本的な考え方】
●以下の2点を基本視点として、集中改革期間(2016~18年度)、本計画期間(~2020年度)、2025年度まで、さらには、それ以降に分けて、それぞれ実行すべき政策を明確にする。ただし、医療費の地域間格差の是正などできることは2015年度からただちに取り組む。
(1)企業等の医療、介護、子育て等への参画を拡大し、公的給付の重点化・効率化と新サービスの創造・拡大等を通じた経済成長を同時に実現する(公的分野の産業化)。
(2)社会保障制度の関係者がそれぞれムダのない効率的なサービス給付を自ら実現するための制度改革に取り組む(インセンティブ改革)。
【改革の基本方針】
(1)社会保障サービスの産業化の促進社会保障サービスや健康増進、疾病予防等の分野への多様な民間事業者の参入、医療機関、介護事業者等との連携を促す。
・マイナンバーも活用して、医療関連データを利用できる環境を早期に整備する。
・参入障壁を是正する。医療機関等が民間事業者と連携できる環境を整備(例えば、一般医療法人に特定の営利性業務を本務として解禁)し、また、多様な事業者の参画を早急に拡大する。
・薬剤師や看護師等が行なうことのできる業務の範囲拡大等を推進する。
(2)インセンティブを強化する仕組み作りデータ活用の徹底と保険者と被保険者双方の努力を促すインセンティブの強化が不可欠。効率的な病床配置等を実現するためには、医療機関を誘導する報酬体系とする必要がある。
・保険者努力支援制度、後期高齢者支援金加減算制度の仕組みを大胆に見直し、アウトカム指標に基づく配分を強化する。
・被保険者に対するヘルスケアポイントの付与、保険者の判断で受診回数等に応じた保険料の傾斜設定が可能となる仕組み等を導入する。
・要介護認定率や1人当たり給付費の地域差がより保険料水準に反映される仕組みを構築することにより、保険者(市町村)による介護予防に向けた取組を推進する。
・高度急性期病床や療養病床が過剰となっている背景には収益の高さがある。ニーズに応じた効果的な病床配置の実現、医療療養から施設療養介護・在宅への促進等のため、診療報酬体系を2016年度から大胆に見直す。
・地域医療構想を実質的に前倒しする。このため、診療報酬体系の見直しに加え、基金の配分や国民健康保険の財政支援制度についても、改革を行う自治体への重点配分を2015年度から徹底する。また、病床再編・地域差解消を促進するよう、医療費適正化の改革が進まない地域における診療報酬の引下げも活用する。
(3)地域差の「見える化」と報酬の見直し等による病床の適正化等
・都道府県別の医療提供体制の差を徹底したデータ分析により一層の「見える化」を図り、適切な体制転換を促す。併せて、大胆な病床再編を可能とする県の権限強化を図る。
・外来医療費についても、データから地域差を分析して標準外来医療費を算定できるようにした上で医療費適正化計画に反映し、頻回受診や過剰投薬等を排除する仕組みを構築する。効果的な医療サービス提供のインセンティブになるよう、外来医療費の窓口負担(受診時の追加負担や保険免責等)の仕組を工夫する。
・地域医療構想を実質的に前倒しで実現する取組の一環として、都道府県は、成果指標(病床数、平均在院日数、国保被保険者や後期高齢者の受療率や調剤費等)を定める。国は2018年度に都道府県の取組状況を評価し、その評価結果を国から地方への財政移転(補助金・交付金)の配分に反映する。
(5)保険収載範囲の見直し
・医療技術や薬の費用対効果に関するエビデンスに基づいて、保険収載ルールや保険適用範囲を見直す。また、医療機関に対する第三者評価を制度的に原則化する。
・後発医薬品については、現在目標(17年度末に60%)を米独並みの80~90%程度に引き上げる。また、18年度から保険償還額を後発医薬品価格に基づいて設定する。さらに、スイッチOTCが認められた医療用医薬品を含む市販類似薬を保険収載から除外する。
・介護保険における軽度者(要支援、要介護1・2)に対する保険給付のあり方を抜本的に見直す。