全日病ニュース

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重度者、医療処置、ターミナルは基準を大きく上回るも4月の単価は微減

【●強化型Aを算定― 病院としての存続が不可なら医療療養への転換を検討】

重度者、医療処置、ターミナルは基準を大きく上回るも4月の単価は微減

日医 強化型A・Bの病院としての存続を求め、早く方向性を打ち出すべきと要望

医療法人博仁会理事長・志村大宮病院院長 日本医師会常任理事 鈴木邦彦

 介護療養病床は、平成18年12月に直前までの推進から一転して突如6年後の廃止の方針が決定されたため、現場の怒りと反発を買い、厚生労働省(以下、厚労省)への不信も含めて、今日まで未解決の課題となっている。
 私は当時日本医療法人協会の常務理事であったが、翌年1月に開催された常務理事会で怒号が飛び交ったことを覚えている。以来、現場の実情を無視した政策は実現が困難であるという教訓を残しつつ、延長された廃止期限である平成30年3月末まで3年を切った。
 一方、廃止期限前最後の改定となる今回の平成27年度介護報酬改定において、新たに療養機能強化型A・Bのサービス費が設定されたことから、このまま単なる廃止とはならない可能性が出て来た。
 筆者は日本医師会常任理事として昨年7月から介護保険が主担当となり、介護給付費分科会に途中から参加したので、その間の議論も踏まえて、自院の介護療養病床の今後についての見解を述べることにする。

当院の介護療養病床の対応

 当院は茨城県北西部の常陸大宮市にある。同市は人口約4.3万人だが、県内で最も高齢化が進んだ自治体の一つであり、高齢化率は既に31.8%に達していて、わが国全体の10年後を先取りしているとも言える。
 当院は178床の中小病院で、介護療養病床は48床だが、それ以外に一般病床(10対1)56床、地域包括ケア病床4床、緩和ケア病床20床、回復期リハビリ病棟50床からなるケアミックス型病院である。
 当院は15年位前から地域リハビリテーションの理念に基づいて現在の地域包括ケアに取り組んでおり、病院、老健、特養の施設系サービス以外に、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、通所リハビリ、通所介護、訪問診療、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリや配食サービスなど様々な在宅サービスも提供しているため、ご利用者やご家族は必要や希望に応じてサービスを選択することができる。
 高齢化が進むと家族介護力が低下するので施設系サービスの需要が増加するが、高齢者数の増加に伴って要介護高齢者数も増加するので、施設が過剰に存在しない限り、施設系サービス利用者は重介護者が中心となり、在宅サービスのニーズも高まる。
 即ち、高齢化がピーク時に40%と世界に類を見ないレベルに達するわが国においては、かつてのように施設だけではなく、高齢化率が14~18%台の北欧のように在宅だけでもなく、施設も在宅も活用する日本型が必要であると考えている。
 その際には各在宅サービスをバラバラに提供するのではなく、効率性の点からも、かかりつけ医機能を持つ中小病院、有床診療所、診療所や郡市区医師会が、可能な範囲で在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所となったり、在宅ケアセンターを設置したりして、訪問診療だけでなく、訪問看護や訪問介護、訪問リハビリなどをできるだけ総合的に提供することが望ましい。
 そして、今後は、次の世代のためにも、個々の医師や看護師の負担をできるだけ軽減しながら、全体として24時間365日の対応ができる仕組みの構築が必要である。
 通常のかかりつけ医の在宅を推進するためには、中小病院や有床診療所の病床の活用や、とくに今後高齢者の実数の増加が著しい大都市部では、さらに無床の在宅療養支援診療所との連携が必要となるであろう。そのネットワーク作りの中核として郡市区医師会が果たすべき役割は大きい。
 ところで、このような状況から、既に高齢化が進んでいる地域にある当院の介護療養病床の平均要介護度は高く、ここ数年ずっと5.0である。従って今回の改定における療養機能強化型もAが算定できている。ちなみに重度者の割合は99.8%(基準は50%以上)、医療処置の実施状況は91.6%(同50%以上)、ターミナルケアの実施状況は35.8%(同10%以上)であった。
 また、療養機能強化型Aを算定したことによる改定前との収益の比較では、前年度の平均単価と比べると4月の単価は99.5%と微減となった。

今後の介護療養病床の行方について

 今回の介護報酬改定の議論の中で、迫井老健課長は「機能は確保する」と何度も言明していることから、療養機能強化型A・Bのいずれかを算定できれば当面は存続できることになると思われる。しかし、それ以外は「その他」とされており、いかにも冷たい扱いであるが、他の道を探してほしいとのメッセージであろう。
 療養機能強化型A・Bについては、私からも介護療養病床は高齢化が進むほど医療ニーズのある重介護者の受け皿として必要になると度々発言しており、日本医師会としては病院としての存続を求めているが、まだ明確な回答は得られていない。
 いずれにしても、次回の同時改定に向けた議論の中でその方向性が決定されることになるが、私からは、準備が必要なのでできるだけ早く方向性を打ち出すべきと要望している。
 当院としては、元々医療療養と介護療養が半々であったものを、当時の厚労省の方針に沿ってすべて介護療養病床に変えており、看護師不足もあってそのままにしてきたが、病院として残れないのであれば、市内に他に療養病床はないので、医療療養病床に転換して重医療・重介護者の受け皿になることを考えている。