全日病ニュース

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介護福祉士配置数が多かったこともあり収入減を免れる

【●強化型Aを算定】

介護福祉士配置数が多かったこともあり収入減を免れる

強化型の新設は高水準の看取り機能を存続していくという方向性を示すもの

医療法人財団利定会大久野病院理事長長 進藤 晃

 当院は東京都心から電車で1時間半ほど西にある西多摩郡に立地している。
 西多摩郡の人口は東京都の人口の約3%で40万人。面積は東京都の25%を占めている。東京都の水を確保する為の山林とベッドタウンが混在し、高齢化が進んだ過疎地域の山間部と人口密集地帯の都市部が存在している。
 西多摩は東京都心の地価に比較して安い為、昭和40年代から都心部では採算がとりにくい特別養護老人ホームや療養型病院が沢山開設された。その結果、特養は人口10万人対1,500ベッド、療養病床は人口10万人対570ベッドと日本一多いベッド数が運営され、都心部では運営しづらい療養を提供してきた地域である。
 近年は老人保健施設も多数開設され、高齢者の療養施設は十分に満たされている。例えば、回復期リハビリ病棟入院中に特別養護老人ホームへ申し込みを行えば、退院時に入所可能であった。
 その中で当法人は158床(回復期リハビリ50床、医療療養病床50床、介護療養型医療施設58床)の大久野病院と在宅機能強化型診療所、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を運営している。

法人全体で慢性期の総合的な機能提供を目指す

 当法人は「社会に活かす医療の提供」を理念に、障害を負った方に医療やリハビリを提供して在宅へ復帰させ、復職も支援している。さらに、家族への安心感を提供することで、医療を通じて社会を活かすような運営を心がけている。
 在宅療養されている方を看て行くには、機能強化型在宅支援診療所による医療の提供と併せて、看護師による在宅療養の環境整備と療養状況の確認が可能な訪問看護ステーションと医療的視点を持ったケアプランの作成が可能な居宅介護支援事業所が必要である。
 在宅療養には後方支援が必要であるが、自院は、療養病床ではあるが、病院としてその体制を整えているなど、法人全体で慢性期の総合的な機能提供を目指している。
 在宅療養中に入院が必要となる状況は必ずしも急性期病院である必要はなく、当院の様な慢性期病院でも十分なことがみられる。
 様々な原因で発生する廃用症候群には回復期リハビリ病棟で対応し、重装備が必要ない肺炎の場合には医療療養病棟で受け入れ、リハビリや医療区分の適応がないレスパイト的な入院や認知症の終末期は介護療養型医療施設で受け入れてきた。
 この組み合わせは、当院にとって非常に便利な組み合わせで、様々な状態の方を受け入れる事が可能である。
 逆に、利用者からみても便利な機能の組み合わせである。その為に、平成18年に介護療養病床の廃止が決まった時には大変な戸惑いを感じた。今回、介護療養型医療施設の廃止はいまだ変更されていないが療養機能強化型としての道が記された。

解釈変更によって基準のクリアが可能に

 療養機能強化型の施設基準の1つは「入院患者のうち重篤な身体疾患※1を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者※2が一定割合以上であること。」とされた。
 当初、この基準の解釈を、認知症Ⅲb以上かつ心不全または腎不全、呼吸不全の状態だと読み込んでしまった。
 そのため、とてもクリアーできる基準ではない、制度は作ったが移れる施設が無いので介護療養は廃止という方向なのかと勘違いした。
 しかし、その後の読み込みとQ&Aや疑義解釈によって、認知症Ⅲb以上の方が50%以上であることがわかり、クリアできた。
 次に、経管栄養や喀痰吸引を必要とする人が30%以上または50%以上とされた。
 Q&Aでは一人に2処置を行っても1人で数えるとしていたが、4月28日のQ&Aによって1人に2処置を行った場合は2人と数えることになり、その上、経管栄養は、過去行っていた人で経口維持加算又は栄養マネジメント加算を算定されている者、喀痰吸引も、過去に行っていた人で口腔衛生管理加算又は口腔衛生管理体制加算をされている者と回答された。
 この回答によって、当院では当初30%であった物が50%を超えて機能強化型Aの基準をクリアーすることが出来た。また、介護福祉士の配置が多かったこともあり、機能強化型Aをクリアーすることで今回改定による収入減を免れた。非常にラッキーだったとしか思えない。
 しかし、良く考えると、これから迎える超高齢化少子化社会は多死社会である。平成26年に東京都病院協会で介護療養型医療施設からの過去1年の退院先を調査したが、自院については死亡退院が58%、急性期病院への転院が7%であった。自施設で看取りが行われている事がわかる。
 介護療養型医療施設から転換した老人保健施設や特別養護老人ホームでは看取り率が低下し、急性期病院への転院が多く見られる。
 この看取り機能を老人保健施設や特別養護老人保健施設に転換させて、低下させることは現実的ではないと思う。この看取り機能を残していくという方向性をこの改定で示していただいたと思う。