全日病ニュース

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省令・通知を補完する事項の留意点を整理

省令・通知を補完する事項の留意点を整理

【医療事故調査制度】
西澤研究班の研究報告まとまる。制度運用の指針として参照すべき価値

 昨年の医療法改正で創設された医療事故調査制度の運用に関する検討を行なってきた西澤研究班はこのほど報告書を完成、厚生労働省に提出した(全日病HPに掲載済み)。西澤寛俊全日病会長を研究代表者とする28人が議論の結果を「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」の総括研究報告(2014年度厚生労働科研)にまとめたもの。
 医療事故調査制度については同省に設置された「医療事故調査制度の施行に係る検討会」が、今年10月施行に向けた運用課題の検討結果をとりまとめており、5月8日に省令・通知として公布・発出されている。
 西澤研究班は昨年10月に中間報告(議論の整理)をまとめているが、その後設置された前出検討会の議論と並行して検討を重ね、検討会のとりまとめ(省令・通知)を踏まえた上で、同制度を運用していく上の具体的な留意点を整理するとともに、検討会で議論が及ばなかった事項の考え方も併せて提示、参考資料を付して最終報告とした。
 最終報告は、「提供した医療に起因する(疑いを含む)死亡又は死産」を判断する上の一助として、「医療」の範囲や「起因する」に関する検討会の解釈に踏み込んだ考察を加え、その結果を別紙で具体的な事例として示した。
 また、「予期しなかったもの」についても、検討会が示した3要件の解釈の深化に努め、拡大解釈とならない指針的な考え方を示している。
 院内調査については、「診療に関する記録の確認」「関係者へのヒアリング」「解剖」「死亡時画像診断」「医薬品、医療機器、設備等の確認」「原因分析と再発防止策の立案」などの各プロセスを考察し、望ましい調査手法を提示した。
 中小医療機関は欠かせない「支援団体の支援の内容」についても、支援類型と支援団体領域との関係性をマトリクスで表示するなど、実効性にとんだ具体的な視点を織り込んだ。
 さらに、第3者機関(医療事故調査・支援センター)の業務にも検討を加え、「院内調査結果の分析の方法」「医療事故調査従事者に対する研修事項」「センターの行なう普及啓発」などについて、重要な提案を行なっている。
 医療事故調査制度については、現在のところ、運用ガイドラインは予定されていない。
 そうした中、西澤研究班の最終報告は、検討会の議論結果(省令・通知)を細部にわたって補足・補完するとともに、医療機関が医療事故への適切な対応に資するよう、事故判断から調査手法、原因究明の方法、調査結果の報告、遺族への説明、再発防止策の立案、調査結果の普及、調査従事者の研修など、原因究明と再発防止の目的と理念にそった制度運営を可能とする考え方と留意点を、現場の視点から整理している。
 まさに、医療機関の管理者だけでなく医療安全担当者さらには広く医療に携わる関係者にとって数多くの示唆に富む内容からなる、各医療機関が指針として参照すべきものとなった。

□西澤会長の談話

 医療事故調査制度については5月8日に省令・通知が出たが、厚労省はこれ以上のガイドラインを出さないとしている。
 したがって、研究班の報告をある程度指針として役立てていただきたい。
 事案発生に際しては「提供した医療に起因する」か否かを判断することがきわめて重要だ。
 そこで、研究班では「医療」の範囲をどう定義するかの議論に時間を割いた。また、院内調査の方法や遺族への説明のあり方にも力を注いだ。
 研究班は検討会とりまとめから踏み込んだ点や検討会では議論が及ばなかった部分を検討した。両者を比較して、事故調査に必要な視点や留意事項を補足・補完していただきたい。
 全日病としては、研修を通して会員病院の調査対応力を高めていきたい。また、制度運用のより分かりやすい解説がほしいとの声があるので検討していきたい。