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医療保険改革関連法が成立。国保と医療費適正化に大改革

医療保険改革関連法が成立。国保と医療費適正化に大改革

都道府県に医療提供体制と医療費の整合的運営の責任。保険者の役割も重視

 2015年医療保険制度改革関連法案が5月27日の参議院本会議(写真)で可決され、成立した。
 国民健康保険法、健康保険法、船員保険法、高齢者医療確保法、支払基金法の各一部改正を一括した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」で、5月29日に公布された。
 これに伴い、政府は前出法の関係政令を、厚生労働大臣は関係省令をそれぞれ制定、5月29日に公布した。
 同法の成立によって、都道府県は2018年度から国保の財政運営の責任主体となるとともに国保運営の中心的役割を担うことが決まった。
 地域医療構想の推進を初めとする、今後出てくるであろう医療費抑制と医療提供体制整備の責任を都道府県に負わせる仕組みが「国保の財政責任」である。
 市町村の関係者からは「国保制度創設以来半世紀ぶりの大改正」といった声もあがっているが、今回の医療保険制度改革は、過去のどの改革よりも大きな意義をもつものとなった。
 給付の面では、「入院時食事療養費」の自己負担額が2回にわけて引き上げられる。病床種別の指定はなく、一般と療養(65歳未満)から精神、結核、感染症にいたるまでの負担増となる。その総額は1,200億円にのぼることが国会の審議で明らかにされている。
 改正法に盛り込まれた患者申出療養や紹介状なし大病院受診時の定額負担については、今後、中医協や社保審医療保険部会で詳細が検討されることになる。

「医療費目標」で医療費適正化計画と地域医療構想が連携

 医療保険制度改革関連法の成立によって、高齢者医療確保法に規定されている医療費適正化計画に「地域医療構想と整合的な目標」を盛り込むことが決まった。目標は「医療の効率的な提供の推進」と「医療費の水準」からなる。
 これまでの医療費適正化計画は、「医療費の見通し」(必須記載事項)と特定健診の実施率などの「住民の健康の保持の推進に関する目標」と後発医薬品の使用促進や平均在院日数短縮からなる「医療の効率的な提供の推進に関する目標」(ともに任意記載)を推進する、比較的シンプルなものであった。
 しかし、改正によって、「医療費の見通し」を立てる因子に「病床機能の分化及び連携の推進の成果」が加えられた上で、後発品の普及等を追加した「行動目標の達成による医療費適正化効果」を踏まえた「医療に要する費用の見込み」と定義が変わり、さらに、要因分析と対策実施を必須化するPDCAサイクルを回していく上で「医療に要する費用の目標」と呼称されることになる。
 医療費の「見通し」を「目標」とすることに全国知事会から強い反対の声があがったが、見直されることなく改正法が通った。この医療費目標の算定方法と「行動目標」は推計式等が厚生労働省から都道府県に提示される。
 目標達成が難しい場合に要因を分析して当該要因の解消に向けて関係者と協力して必要な対策を講じるという「要因分析・対策実施」は、都道府県の努力義務として改正法で新設されたものだが、そのベースにあるのは「地域医療構想に基づく医療提供体制の整備」と「医療保険者の取組の進捗状況管理」である。
 今年2月の全国厚生労働関係部局長会議で、保険局は「必要な対策の実施に係る概念整理(イメージ)」を都道府県等に示し、国、都道府県、医療保険者、医療機関等がそれぞれの役割の下で医療費抑制を推進していく新たな医療費適正化計画の目標達成の枠組を説明した。
 そのイメージは、地域医療構想における将来の医療需要が医療費目標となるが、中間年や各年次のチェックでその目標とそれを下支えする行動目標が達成できないと判明したときは、厚労省が提供するデータやツールを活用してその要因を分析、医療介護総合確保基金を活用した医療機関の取り組みと国保の保険者努力支援制度や保険者協議会を介した保険者の取り組みを喚起して、目標達成を目指すことになる。

□2015年医療保険制度改革関連法の骨子

1. 国民健康保険の安定化
①国保への財政支援の拡充により財政基盤を強化する。
②2018年度から都道府県が財政運営の責任主体となる。
2. 被用者保険者の後期高齢者支援金を段階的に全面総報酬割とする。
3. 負担の公平化等
①入院時の食事代に調理費が含まれるよう段階的に引上げる(療養病床の65歳未満患者以外の全入院患者が対象。現行の1食260円を16年度に360円、18年度に460円。低所得者、難病等患者は対象外)
②紹介状なしの大病院受診時に定額負担を導入
③健康保険の標準報酬月額の上限額の引き上げ
4. その他
①協会けんぽの国庫補助率を「当分の間16.4%」と定めるとともに、法定準備金を超える準備金に係る国庫補助額の特例的な減額措置を講じる
②被保険者の所得水準の高い国保組合の国庫補助を所得水準に応じた補助率に見直す(被保険者の所得水準の低い組合に影響が生じないように調整補助金を増額する)
③医療費適正化計画の見直しと予防・健康づくりの促進・医療費適正化計画の期間を6年とする・都道府県は計画の中に地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を設定する・保険者の保健事業に予防・健康づくりに関する被保険者の自助努力への支援を追加する
④患者申出療養の創設(患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療養の仕組み)
【施行期日】
2018年4月1日。ただし、4の①は公布日(5月29日)、2は公布日および17年4月1日、3と4の②~④は16年4月1日。