全日病ニュース

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地域包括ケア病棟 対象患者の拡大や回リハとの機能の違いの明確化が課題

地域包括ケア病棟
対象患者の拡大や回リハとの機能の違いの明確化が課題

【入院医療等の調査・評価分科会】
厚労省「手術の外出し」「退院困難な患者受け入れ促進策」を論点にあげる

 「入院医療等の調査・評価分科会」は、6月19日、2014年度入院医療等調査結果の各論の検討を開始した。この日は、(1)地域包括ケア病棟入院料、(2)総合入院体制加算、(3)医療資源の少ない地域に配慮した評価、を取り上げた。
 このうち、地域包括ケア病棟入院料に関して、事務局(厚労省保険局医療課)は、回復期の機能にそって患者を幅広く受け入れるために、病態がより複雑な患者や在宅復帰が困難な患者に対する診療の評価を検討すべきとして、①手術料等を包括外とすること、②より入念な退院支援を要する状態の患者の受け入れを促すことの2点を提起した。
 分科会の大勢は事務局提案に肯定的であるが、一部の委員からは「出来高算定は一部の手術とすべき」「(手術の)対象疾患や状態像を明確にすべき」との声もあがった。リハや高額薬剤を出来高にすべきとの意見は特段出なかった。
 リハに関しては、「回復期リハ病棟との機能の違いを明確にすべき」という提起があった。
 また、「退院の見通しが立っている患者や介護面で課題の少ない患者が多く、受け入れている患者は特定の状態に集中する傾向がみられている」との事務局指摘に関連して、「患者選別が行なわれている」と懸念する声もあがった。
 総合入院体制加算について、事務局は、①加算1の化学療法件数要件の緩和、②加算2への実績要件の導入、③加算1と2に共通する「精神疾患を合併する患者など、多様な患者を受け入れる」ための要件のあり方、の3点を提起とした。
 加算2の要件厳格化には賛成の声があがる一方、「加算2をとりながら診療実績が乏しい病院は規模が小さい可能性がないか」としてデータの精査を求める意見もあった。
 医療資源の少ない地域に配慮した評価に関しては、「患者流出率20%未満」を外すなど地域要件を変えた場合に、対象地域が現行の30医療圏から41医療圏に増えるという予測を示したほか、事務局は「10対1病院を対象に加える」などを検討点にあげたが、「地域事情に対する特例的な対応は診療報酬では難しいのではないか」との意見も出るなど、議論は深まらなかった。

地域包括ケア病棟に関する調査結果の概要 (事務局資料から編集部が整理)

○入院患者は高齢者が多く、そのピークは80~84歳となっている。疾患別には骨折・外傷、肺炎、脳梗塞が多い。骨折・外傷の患者が1/3強を占めているが、肺炎、脳梗塞は7対1・10対1病棟(入院日数が15~60日の患者)と似た割合を示している。
○患者の59%が自院の急性期病床から、18%が他院の急性期病床から、12%が自宅からの入棟。入院理由は、全体としては「治療のため」が多いが、他院急性期病床から入棟した患者は88%がリハを目的としている。
○ほとんど検査や画像診断を要しない患者も一定程度入院している。処置の実施は一般病棟・療養病棟より少なく、回復期リハ病棟に近い。手術の実施はほとんどみられない。
○患者の7割が個別リハを受けており、急性期病床から転棟した患者にその割合が高い。その大部分は脳血管疾患等リハと運動器リハで、脳血管疾患リハの約半数が廃用症候群に対するリハであった。個別リハの平均は1人1日2単位をやや超える程度である。1人当たり提供単位数の分布は幅広く、患者の状態に応じて異なる頻度でリハが提供されている。
○退院の見通しが立っている患者や介護面で課題の少ない患者が多く、受入がなされている患者は特定の状態に集中する傾向がみられている。在宅復帰率も70%を上回る医療機関が大多数であった。退棟先は主に自宅であるが、家族のサポートや介護施設の確保等が困難なために退院予定が立っていない入院患者が一定程度存在している。

事務局が提示した論点と課題から(下線は編集部)

□地域包括ケア病棟入院料
【論点】
●地域包括ケア病棟は期待された役割を果たすことができているか。地域包括ケアシステムの中で期待される役割を踏まえ、

    病態がより複雑な患者や在宅復帰が困難な患者の診療に関する評価のあり方
等をどう考えるか。
・地域包括ケア病棟の包括範囲や施設基準は、本来、受け入れが期待される患者の受け入れを進める上で適切に機能しているか。
    >多様な状態の患者の受け入れが滞らないよう、例えば、手術料等を入院料の包括外とすること
についてどのように考えるか。
・退院支援の体制等について機能強化を図りつつ、
    より入念な退院支援を要する状態の患者の受け入れを促す
ことについて、どう考えるか。
□総合入院体制加算
・総合入院体制加算の届出を行っている医療機関であっても、重症な救急患者や小児・周産期、精神疾患を合併する救急患者の受入実績に乏しい医療機関が存在するほか、重症の入院患者の割合も様々であった。
・総合入院体制加算1の実績要件のうち、最も満たすのが困難とされる要件は「化学療法が4000件/年」、次いで「人工心肺手術が40件/年」であった。
・総合入院体制加算2の届出医療機関に、満たすことが望ましいとされる6つの実績要件をほとんど満たしていない施設が一部みられた。これらの施設は病床規模が小さく、平均在院日数が長く、診療実績に乏しい傾向にあった。
【論点】
●小児・周産期や精神疾患を合併する救急患者の受入を含め、総合的かつ専門的な医療の提供を図る観点から、総合入院体制加算の施設基準の要件についてどう考えるか。
    精神疾患を合併する患者等、多様な患者の受け入れが確保される要件
をどう考えるか。
・実績要件のうち最も満たすことが困難とされる
    化学療法の件数要件
をどう考えるか。
    総合入院体制加算2の実績要件のあり方
についてどう考えるか。
□医療資源の少ない地域に配慮した評価
・医療資源の少ない地域に配慮した評価の利用状況は極めて低調である。
・当該評価の対象地域に関する現行の要件には、①患者の流出率が一定以上の場合には対象とならない、②医療従事者数自体は要件とされていない、③2次医療圏の中心部が離島でない場合は離島に所在する医療機関であっても対象とならない、等の特徴がある。
・このほか、7対1や10対1の医療機関は対象ではないことが、対象医療機関が少ない原因であるとの指摘もある。
【論点】
●当該評価の利用が低調である要因と対応についてどう考えるか。
●当該評価を引き続き実施するとした場合に、その要件について、どう考えるか。例えば、
    ①患者流出率の要件を緩和することや医療従事者が少ないこと自体を要件とする
ことについてどう考えるか、②2次医療圏の一部が離島となっている場合も対象とすることについてどう考えるか、③その他の要件について
    (10対1を算定している医療機関の取り扱い
等)どう考えるか。

平成26年度 事業実績報告書(前文)

 全日本病院協会における平成26年度事業実績について報告する。全日病は、その理念の下、制度や環境変化に対応した、多岐にわたる事業活動を行った。
 平成25年4月1日より、「公益社団法人全日本病院協会」となり、平成26年度も公益法人としての活動のさらなる充実、そして全国の支部活動との連携・推進を行った。また、本部社屋の移転については平成25年6月に行われ、平成26年度は多くの研修会、委員会、等が本部社屋にて開催されており、特に週末の利用については、空いている日がない状況であった。
 平成26年4月は診療報酬改定が行われ、個々の病院にとっては方向性を示さなければならない改定内容が盛り込まれた。また、6月には地域医療介護確保総合推進法が成立し、このための基金や地域医療構想、病床機能報告制度、等が具現化もしくは骨格が固まった。これらの矢継ぎ早な政策に対応するため、「2025年に生き残るための経営セミナー」を企画し、様々な観点より第1~8弾、計11回開催した。
 平成26年度の事業活動は、総会、理事会、常任理事会を始め、本書「第3. 事業活動1. 委員会活動」にあるように(1)~(21)の委員会活動が行われた。その事業内容については、極めて多岐にわたっており、本書を参照されたい。
 第56回全日本病院学会は、福岡県支部が担当し陣内重三学会長の下、平成26年9月20日、21日、ヒルトン福岡シーホークにおいて開催された。参加登録者数は2,789名、一般演題数557題であり、多くの講演、シンポジウム等が行われた。また、夏期研修会は、平成26年8月31日に熊本県支部が主催し、阿蘇リゾートグランヴィリオホテルにおいて開催された。
 「第3. 事業活動3. 研修会等」は、(3)~(29)の研修会・講習会が開催された。また、「第3. 事業活動4. 調査研究活動」は、(1)~(21)の調査・研究活動が行われ、各方面に発表された。
   四病協・日病協に関しては、すべての会議に全日病として参加し、活発な議論を行っている。さらに、「第3. 事業活動5. 要望及び陳情活動等(資料添付)」にあるように、(1)~(9)の要望活動を全日病または四病協、日病協として行ってきた。これらの内容についても、本書を参照されたい。また、人間ドック事業、認定個人情報保護団体としての事業、日本医師会・四病協の懇談会も継続して行なわれている。
 厚生労働省補助事業として、昨年に引き続き「医療の質の評価・公表等推進事業」を、同省老人保健事業推進費等補助金として「サービス付き高齢者向け住宅における介護・医療ニーズへの対応能力に関する評価手法に関する調査研究事業」を受託し、調査・研究を行った。
 このように、多方面にわたる幅広い活動を行ってきた全日病であるが、今後も公益法人として、国民の健康および福祉の増進を図るため、会員病院、都道府県支部とともにさらなる事業の充実と発展を期す。

全日本病院協会役員名簿 (2015年6月20日~2017年6月定時総会終結時まで) ○印は各職における新選出を表わす

会長 西澤寛俊 北海道(医)西岡病院理事長
副会長 猪口雄二 東京都(医)寿康会病院理事長
安藤高朗 東京都(医)永生病院理事長
神野正博 石川県(医)恵寿総合病院理事長
○織田正道 佐賀県(医)織田病院 理事長
○美原 盤 群馬県(公財)美原記念病院院長
【理事55名】理事のうち正副会長は上記に表記。ゴシックは常任理事(20名)
北海道大橋正實(医)耳鼻咽喉科麻生病院理事長
〃高橋 肇(医)高橋病院理事長
〃徳田禎久(医)禎心会病院理事長
〃橋本政明(医)網走脳神経外科・リハビリテーション病院理事長
青森県村上秀一(医)村上新町病院理事長
宮城県中嶋康之(医)中嶋病院理事長
福島県土屋繁之(医)土屋病院理事長
茨城県○永井庸次(株)ひたちなか総合病院院長
〃○諸岡信裕(医)小川南病院理事長
栃木県藤井 卓(医)藤井脳神経外科病院理事長
埼玉県中村 毅(医)戸田中央総合病院理事長
〃中村康彦(医)上尾中央総合病院理事長
千葉県平山登志夫(医)平山病院理事長
東京都飯田修平(公財)練馬総合病院理事長
〃稲波弘彦(医)岩井整形外科内科病院理事長
〃猪口正孝(医)平成立石病院理事長
〃木村 厚(医)木村病院理事長
神奈川県須田雅人(医)赤枝病院院長
〃山本 登(医)菊名記念病院理事長
岐阜県山本眞史(医)笠松病院理事長
静岡県○池田 誠池田病院院長
愛知県重冨 亮(医)紘仁病院理事長
三重県齋藤洋一南勢病院院長
京都府清水 紘(一財)嵯峨野病院理事長
大阪府加納繁照(医)加納総合病院理事長
〃日野頌三(医)日野病院理事長
兵庫県古城資久(医)赤穂中央病院理事長
〃西  昂(医)西病院理事長
〃宮地千尋(医)宮地病院理事長
岡山県佐能量雄(医)光生病院理事長
広島県○大田泰正(医)脳神経センター大田記念病院理事長
山口県木下 毅(医)光風園病院理事長
徳島県川島 周(医)川島病院理事長
〃田蒔正治(医)たまき青空病院理事長
香川県松井孝嘉(医)松井病院理事長
愛媛県貞本和彦(医)貞本病院理事長
高知県田中 誠(医)上町病院理事長
福岡県○江頭啓介(医)さくら病院理事長
〃丸山 泉(医)丸山病院理事長
〃牟田和男(医)牟田病院理事長
長崎県○井上健一郎(医)井上病院理事長
熊本県上村晋一(医)阿蘇立野病院理事長
〃○山田一隆(医)高野病院理事長
大分県畑 洋一(医)畑病院理事長
宮崎県大塚直純(医)大塚病院理事長
〃濱砂重仁(医)市民の森病院理事長
鹿児島県鉾之原大助(医)市比野記念病院理事長
〃牧角寛郎(医)サザン・リージョン病院理事長
沖縄県新垣 哲(医)西武門病院理事長
【監事2名】
東京都五十嵐邦彦公認会計士
東京都古畑 正 古畑病院院長
【議長・副議長】
議長 木村佑介 東京都(医)木村病院名誉院長
副議長 宮城敏夫 沖縄県(医)浦添総合病院理事長