全日病ニュース

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神野委員 脳卒中患者の評価を療養病棟並びとする考えに反論

【入院医療等の調査・評価分科会】

神野委員
脳卒中患者の評価を療養病棟並びとする考えに反論

 7月1日の「入院医療等の調査・評価分科会」は、2014年改定の入院医療実態調査(14年実施分)の結果を踏まえ、慢性期入院医療と短期滞在手術等基本料について議論した。
 慢性期入院について、事務局(厚労省保険局医療課)は、在宅復帰機能強化加算、療養病棟入院基本料2、医療区分の項目、脳卒中患者に関する評価の4点から調査結果を分析。
 在宅復帰機能強化加算については、加算を届け出ている医療機関に急性期病棟など他院からの入院よりも比較的退院が容易な自宅からの入院の割合が高い傾向があるとして、2 つの入院経路を分けることなく評価することの見直しを提起。併せて、在宅復帰率の計算1ヵ月未満の入院を除外していることの是非を検討するよう求めた。
 一方、退院支援専門職員の配置と早期退院に相関性があるとして、届出病棟に退院支援専門職員の配置など退院支援機能の強化を求める必要を論点にあげた。
 療養病棟入院基本料2については、「医師の指示見直しを必要としない患者」の割合と「看護師による定時観察のみで対応できる患者」の割合が相関していると指摘。療養病棟入院基本料1 のように重度患者の割合の基準を設ける方向での検討を提起した。
 医療区分については、うつ状態、褥瘡、頻回の血糖検査、酸素療法の評価方法を精緻化することを提案。状態像が療養病棟の対象患者と重複している特殊疾患病棟や障害者施設に入院する脳卒中患者については、包括範囲や点数等を同一にする方向での検討を求めた。
 短期滞在手術等基本料に関しては、「3」の手術の中に包括範囲の出来高実績点数にばらつきがあるものがあるとし、当該手術について点数設定の方法を見直す必要を指摘。併せて、算定件数が少ない手術を整理するという見直しを提案。
 さらに、透析患者を取り上げ、「総点数が平均的な症例を大きく上回る傾向にある」として、加算方式等による対応の必要を示唆した。
 事務局が提示した論点に対して、神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)は、とくに、障害者施設と特殊疾患病棟の評価見直しを示唆する論点を取り上げ、「調査結果をみると、状態が不安定で医療の必要性が高い患者が療養病棟よりも多く入院している。脳卒中の患者にしても障害者施設のレベルの配置と報酬が必要な患者が多い。十把ひとからげにみるのは正しくない」と指摘、安易に現行評価を見直すことに強い危惧を表わした。

事務局が提示した論点

□慢性期入院医療
○在宅復帰機能強化加算
・在宅復帰率又は病床回転率の評価に当たって、自宅からの入院と他院からの転院を区別して在宅等への退院を評価することをどう考えるか。併せて、在宅復帰率の算出から、1か月未満の入院を除外していることの影響についてどう考えるか。
・在宅復帰機能強化加算の届出病棟における一層の退院支援機能の強化についてどう考えるか。
○療養病棟入院基本料2
・医療療養病床の機能を有効に活用する観点から、療養病棟入院基本料2の病棟にも医療の必要性の高い患者を受け入れることを促すべきではないか。
○医療区分の項目
・「看護師による定時の観察のみで対応できる者の割合」が比較的高い、うつ状態、頻回な血糖検査、酸素療法等の状態や、褥瘡について、医療区分の評価に当たって、よりきめ細かな状況を考慮するべきではないか。
・「指定難病」の疾患が増加したことを踏まえた対応についてどう考えるか。
○脳卒中患者に関する適切な評価
・脳卒中患者について、特殊疾患病棟入院料や障害者施設等入院基本料における、包括範囲や状態を踏まえた評価方法についてどのように考えるか。
□短期滞在手術等基本料
・現行の対象手術等に包括範囲出来高実績点数にばらつきがみられる項目が存在することから、より実態に即した点数のあり方についてどう考えるか。  また、その際に、そもそも算定件数が少ない項目についてどう考えるか。
・短期滞在手術等基本料の対象患者のうち、透析患者など総点数が平均的な症例を大きく上回る状態に関する対応について、どう考えるか。
・短期滞在手術等基本料の対象となっていない手術等のうち、治療方法等が標準化されたために在院日数が短く、算定点数のばらつきが少ない項目が存在するが、これらの取り扱いをどう考えるか。