全日病ニュース

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年金・医療等の自然増の要求幅は15年度当初予算比6,700億円程

年金・医療等の自然増の要求幅は15年度当初予算比6,700億円程

【経済財政諮問会議】
2016年度予算の概算要求基準決まる。前年度から自然増を1,600億円圧縮

 7月22日に開かれた経済財政諮問会議は「2016年度の予算の全体像」をとりまとめた。
 2016年度は、「骨太方針2015」で定めた「経済・財政再生計画における集中改革期間の初年度に当たる。
 「全体像」は、成長戦略を拡充・加速するとともに、「骨太方針2015」を踏まえて、経済再生と財政健全化の双方に寄与する歳出改革、歳入改革の本格的な取り組みを開始すると宣言。概算要求基準の設定、各府省の概算要求、地方財政計画の策定は、『2016年度予算の全体像』」を踏まえて行なうとした。
 経済財政諮問会議は翌7月23日の会合で財務省が提示した16年度予算の概算要求基準(「16年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」)を了承。政府は、16年度予算の概算要求基準を7月24日の閣議で了解した。
 16年度予算の概算要求基準は、年金・医療等の経費のうちの補充費途(法令にもとづく義務的経費で予算編成時と単価が異なっても閣議決定を要することなく支出できるもの)に指定されている経費は、「前年度当初予算における年金・医療等に係る経費に相当する額に高齢化等に伴う増加額として6,700億円を加算した額の範囲内において要求する」とした。
 「骨太方針2015」は、社会保障費の増加を、18年度までの各年度、高齢化に伴う自然増5,000億円ほどに抑える方針を示している。これに対して、今回の概算要求基準は、15年度当初予算比6,700億円程度までの増加範囲内で要求を認め、具体的には予算編成過程で調整を図るとしたことになる。
 ただし、15年度予算の概算要求基準では社会保障費の自然増は8,300億円とされたが、予算編成過程で4,200億円まで圧縮されている。自然増の要求幅は、概算要求基準の段階で早くも前年度から1,600億円減額された格好だ。

「2020年度までに消費税の再引き上げはない」

 経済財政諮問会議は、また、6月30日に決定した、同会議に付設する専門調査会(経済・財政一体改革推進委員会)の委員名簿を了承した。委員は有識者と産業界の14人からなり、医療関係からは松田晋哉産業医科大学医学部教授がただ一人選出された。
 推進委員会は、「経済・財政再生計画」を着実に実行するために、①改革工程表を作成するとともに、②歳出改革に向けた予算編成過程からPDCAを回す仕組みを構築、さらに、③改革工程表にもとづいた進捗管理・点検・評価を行なう。
 そして、歳出改革の集中取り組み期間が終わる18年度に経済・財政一体改革の成果を検証し、中間評価をまとめることになる。
 この18年度の中間評価に関連して、甘利内閣府特命担当大臣は,7月22日の諮問会議後の記者会見で、「20年度に基礎的財政収支(PB)の黒字を達成するスケジュールの中で、消費税率を10%からさらに引き上げていくという考え方はとっていない。税収増を考える上で、消費税率を引き上げるという以外にもいろいろな方法がある。18年度に(PB黒字化の)達成状況を検証する中で、歳出・歳入への対応も検証することになる」と述べた。
 17年4月に10%を実現した後、20年度まで消費税の再引き上げは政治日程に組み込まれていないと明言する一方で、18年度の中間評価いかんによっては選択肢に上がる可能性を示唆したものとみられる。

内閣府に「健康増進・予防サービス・プラットフォーム」を設置

 7月23日の経済財政諮問会議に、内閣府は、「歳出効率化に資する優良事例の横展開のための健康増進・予防サービス・プラットフォーム」の設置を諮り、了承された。
 「プラットフォーム」は、健康・予防のサービスに関する、歳出効率化に寄与する優良事例の創出と全国展開を図る取り組みを進捗管理するとともにフォローアップしていく、関係省庁の参加を得た省庁横断的な会議体で、自治体や企業・保険者に対する政府側の窓口となる。
 「骨太改革2015」に盛り込まれた歳出改革を健康・予防の分野で効率的に進めるとともに、市場創出効果を検討するために、内閣府に設置される。
 対象となる領域は、①医療保険者によるデータヘルス等、②生活習慣病等の重症化予防、③企業による健康経営、④ ヘルスケア産業の創出・育成、⑤ ITの利活用と規制改革等の制度改正からなる。
 「プラットフォーム」を構成するのは、甘利内閣府特命担当大臣(健康・医療戦略担当大臣)、塩崎厚生労働大臣、経済財政諮問会議の民間議員、三村日商会頭、横倉日医会長、永井自治医科大学学長などの8人。オブザーバーとして、健保連、協会けんぽ、全国市長会、日歯、日薬、日看協などの代表も名を連ねている。

予防・健康のインセンティブを担う「日本健康会議」

 「日本健康会議」が7月10日に発足、「骨太方針2015」に盛り込まれた健康・予防インセンティブ、生活習慣病の重症化予防、健康経営の各取り組みを全国展開するために、保険者・企業、医療団体、自治体による「連携」を実現した。基礎的財政収支(PB)の黒字化を目指す2019年まで活動する。
 同会議には、経団連、日商、全国知事会、連合、健保連、国保中央会、協会けんぽ、日医、日歯、日薬、日看協など31組織が名を連ねた(6月23日現在)。
 発足式では塩崎厚生労働大臣、安倍首相(代読・加藤内閣官房副長官)が来賓として挨拶。大塚健保連会長が活動指針となる「健康なまち・職場づくり宣言2020」を発表、横倉日医会長が今後の活動方針を説明した。
 「宣言2020」は、①予防・健康づくりのインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする、②かかりつけ医等と連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村とする、③保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする、④一定の基準を満たすヘルスケア事業者を100社以上とするなど、8項目にわたる数値目標を設定。
 これらを達成するためWGを設置し、厚労省や経済産業省と協力して具体的な推進方法を検討していく方針を打ち出した。