全日病ニュース

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世界遺産「熊野」の伝承世界を絵解きで解説

世界遺産「熊野」の伝承世界を絵解きで解説

【2015年度夏期研修会】
「医師数の割合は10年後にG7に、その後、OECDに追いつく」

 全日本病院協会の2015年度夏期研修会は、和歌山県支部(成川守彦支部長)の担当で、7月12日、和歌山県白浜町のラフォーレ南紀白浜に116人の参加を得て開催された。
 研修会の開始前に「みなべ炭琴クラブ」による演奏が行なわれ(写真)、会場は紀州備長炭で作った楽器が奏でる温もりに満ちた調べに包まれた。
 和歌山県の幸前保健福祉部長が、来賓として前夜の懇親会に列席した仁坂和歌山県知事の挨拶を代読した。
 15年度の夏期研修会は、(1)世界遺産「熊野」講座、(2)地域包括ケアシステム時代のチーム医療における看護の役割、(3)公立医科大学における医学教育・医師養成・地域医療支援についての3題から構成された。
 「世界遺産『熊野』講座」は、「熊野三山参詣曼荼羅絵解き」と銘打った副題のとおり、全国に3,000余ある熊野神社の総本社として鎮座する熊野本宮大社(本宮)、熊野速玉大社(新宮)、熊野大社(那智)への参詣が織りなす信仰を今に残された古画を使って解説、熊野三山が生み出した伝承・説話に関する講義となった。
 講師の山本殖生氏(国際熊野学会事務局長)は熊野の世界遺産登録に尽力した人物として知られ、この日も自ら扮した「熊野比丘尼」のいでたちで曼荼羅絵解きを各地で実演、熊野世界の伝承人となっている。
 続いて登壇した日本看護協会の大久保清子副会長は2025年問題を看護の視点から整理して示し、「治すから支える・癒す」時代における看護師の役割を再構築する必要を提起。
 地域包括ケアを構築していく中で、看護師が要となる院内チーム医療が地域に出ていく必要を説くとともに、地域における異なる機能の施設間の看看連携や医師・ケアマネほかとの連携など、「時々入院、ほぼ在宅」を支える「地域における多職種連携」に看護師が重要な役割を果たすべきであると論じた。
 その一方で、看護師と他職種の役割分担の推進と看護の専門性を高めていくことも重要な課題であると指摘した。
 最後に、和歌山県立医科大学の岡村吉隆理事長・学長は、創立時の40名が70周年を迎える今や100名になっている和歌山医大における定員増の推移を説明。
 医学部生は全国的に着実に増加をたどっており、「医師数の割合は10年後にはG7レベルに、さらにその後、OECDに追いつく」と展望する一方で、学力の低下、留年や退学の増加など、質の面で問題が生じているとの懸念を示した。
 そして、和歌山医大を例に、定員増加を主に支えてきた地域枠の実態と医学部教育の現状を紹介。地域に従事する医師の養成に努めていると、医学教育の現状を明らかにした。