全日病ニュース

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14年度調査の分析結果をまとめる。議論は中医協へ

14年度調査の分析結果をまとめる。議論は中医協へ

【入院医療等の調査・評価分科会】
「重症度、医療・看護必要度」、慢性期入院、退院支援等で改定方向を提起

 診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(写真)は8 月26 日に、2014年度調査結果の分析を踏まえた入院医療に関する改定課題の検討結果を「中間とりまとめ案」にまとめた。事務局が提示した案にいくつか修正を求める意見が出たが、修文は武藤分科会長(国際医療福祉大学大学院教授)に一任された。
 「中間とりまとめ案」は、15年度診療報酬改定に向けた個別的な論点を提示する最初の資料となる。
 その各論として、(1)重症度、医療・看護必要度、(2)短期滞在手術等基本料、(3)総合入院体制加算、(4)地域包括ケア病棟入院料、(5)医療資源の少ない地域に配慮した評価、(6)慢性期入院医療(在宅復帰機能強化加算、療養病棟入院基本料2、医療区分、障害者施設等入院料及び特殊疾患病棟入院料等)、(7)退院支援に係る評価、(8)入院中の他医療機関の受診が取り上げられ、それぞれ論点と検討の方向性が提起された。
 9月初旬の診療報酬基本問題小委員会で検討された後、中医協総会に報告され、10月以降の本格化する15 年度改定の議論に供される。
 「入院医療等の調査・評価分科会」は引き続き15 年度入院調査結果に関する検討作業に入る。(4面に「中間とりまとめ案」の概要を掲載)

地域包括ケア病棟入院料の手術等外出しは両論併記

 「中間とりまとめ案」は、「重症度、医療・看護必要度」に関して、急性期医療の提供をより評価する視点から、指標を増やした上でA項目のみで基準を満たすという考え方を検討する必要があること、一般病棟用のB項目の項目を整理・追加することで認知症やせん妄の患者に対する手間のかかり具合をより高く評価できることなど、見直しの方向性を提起している。
 短期滞在手術等基本料についても、水晶体再建術やヘルニア手術の点数、透析患者の除外など見直すべき点を指摘する一方、対象となる手術等の拡大を検討課題にあげた。
 総合入院体制加算については、1と2ともに、要件等を再検討する必要を指摘。
 地域包括ケア病棟入院料に関しては、「手術料や麻酔料を包括外とすることも選択肢として考えられる」とする一方で、「手術の実施が極めて少なかったこと等から、引き続き手術料も包括とすべきとの意見もあった」と賛否意見を併記した。
 算定数が極めて少ない医療資源の少ない地域に配慮した評価については、対象地域の条件を変えることで適用となる2 次医療圏の拡大を提案。
 慢性期入院医療に関しては、まず、在宅復帰機能強化加算について、回転率等何らかの指標に急性期病棟から患者を受け入れて在宅に復帰させる条件を加味するとともに、在宅復帰率の算出における入院期間に関するルールの見直しを提案。
 次に、療養病棟における退院支援に向けた取り組みを促す措置と療養病棟入院基本料2に医療区分2・3の患者の割合に関する要件のそれぞれ導入の検討を盛り込んだ。
 さらに、医療区分に関しては「うつ状態」と「頻回の血糖検査」の判断基準の緻密化と「褥瘡」の判断基準から入院期間中の発生を除外することなどを求めた。
 また、障害者施設等入院料及び特殊疾患病棟入院料等における脳卒中の患者に関しては入院対象から除外することや入院する場合には点数評価を同一にすることなど見直しの検討を提起した。
 退院支援に関しては、退院支援室等の設置、早期退院に向けた多職種のカンファレンス等の実施、専任・専従の退院支援職員の病棟配置など、総合的な取り組みを求める必要を書き込んだ。

各所にデータや議論にない指摘も。事務局の問題意識か

 「中間とりまとめ案」は、全体として調査結果が示すデータの分析と論点掘り起しに終始し、中医協総会における議論のための基礎資料という趣きでまとめられた。
 それは、前改定時の同分科会のまとめが、7対1 病床を削減するなど政策起案者である事務局(厚労省保険局医療課)の目的意識のあまり、中医協の議論に先行して、より踏み込んだ提案を打ち出すものとなったことへの反省から、調査結果の分析と検討項目の抽出を担う診療報酬調査専門組織の本来業務に徹するという中医協方針に沿うものであった。
 しかし、中には、次のように、データ分析の帰趨から問題点を導くというよりも、あらかじめ意図する措置へと議論を誘導しかねない箇所もみられる。
◎介護療養病床との機能分化を図るためには、療養病棟入院基本料2についても、医療区分2又は3の患者の割合について何らかの要件を設けることも考えられる。
◎いずれにしても、入院期間中に新たに褥瘡が生じたことをもって、それまでの医療区分を変更する必要はない。
◎障害者施設等入院基本料や特殊疾患病棟入院料等に入院する意識障害を有する脳卒中患者の多くは、本来これらの病棟への入院が想定される状態像とは異なっており、引き続きこれらの病棟の入院対象とすることについては課題があると考えられる。また、引き続きこれらの病棟への入院が必要であるとしても、同一の状態にある患者について、病棟間で報酬の評価方法等が大きく異なっていることには、留意を要する。
 以上の3点に関しては、障害者施設等に入院する脳卒中患者の少なからぬ部分が「入院が想定される状態像とは異なっている」というデータが得られた以外、論述された論理を支えるエビデンス(議論の帰結を含む)はなく、政策担当者の問題意識から導かれたものと言わざるを得ない。
 こうした提起に対して、神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)を初めとする医療系委員はそのつど疑問と異論を唱えたが、事務局が修正に応じることはなかった。
 そうした中、神野委員が強く求めてきた「重症度、医療・看護必要度」の評価指標にせん妄を追加する考えは、B項目を想定しつつも、検討の方向性の中に盛り込まれた。また、短期滞在手術等基本料3の見直しも基本的に同委員の主張が反映された。
 障害者施設等における脳卒中患者の取り扱いに関しても、同委員の意見が「これらの病棟に入院する脳卒中患者の中には、医師による指示の見直しの頻度が高い患者が存在することなどから、患者毎の状態にも留意すべきとの意見があった」というかたちで明記された。
 その一方で、「一般病棟を併設していない地域包括ケア病棟に関しては手術等の外出しを認めてはいかがか」あるいは「退院支援担当者は地域に行けるようにすべきであり、病棟に張り付かせることになる専従は避けるべき」などの具体的な意見が書き込まれるまでにはいたらなかった。
 「中間まとめ」を得て、中医協総会は本格的な改定議論に入る。