全日病ニュース

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回復期や高度急性期の定義に注釈。例示も多目に

回復期や高度急性期の定義に注釈。例示も多目に

【2015年度病床機能報告】
機能報告の実施要綱決まる。9月早々に資料の閲覧等が可能に

 8月27日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は、マニュアルの改訂を含む、2015年度病床機能報告の実施概要を決めた。
 新たなマニュアルには、前年度の報告でうかがわれた医療機能選択における“勘違い”や“誤解”をなくすために、回復期機能に亜急性期医療の側面があることを指摘するとともに、特定機能病院については全病棟を一括した機能とみるのではなく、「個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして」選択するよう求めるなどの注釈が加えられた。
 今年度の報告期間は10月1日~10月31日と、昨年つまり初年度の報告で猶予された期間延長がない。
 そのため、事務局(厚労省医政局地域医療計画課)は、8月いっぱいに疑義照会窓口(電子メールベース)を開設するとともに、同省HPに今年度用の病床機能報告制度専用ページを立上げる予定だ。
 そして、同webサイトから9月上旬にも各医療機関に報告マニュアル等のツールが行きわたるよう、事務連絡で各都道府県に周知徹底を要請する方針だ。

 事務局が示した15年度病床機能報告の実施概要によると、報告する医療機能の時期は15年7月1日で、6年が経過した日は21年7月1日となる。
 報告事項は様式1を使った「構造設備・人員等」と様式2をもちいた「具体的な医療の内容」からなるが、報告様式1は10月31日(必着)が提出期限となる。
 様式2に関しては、6月診療分かつ7月審査分の電子レセプトがある医療機関については厚労省が当該データを収集・集計し、11月下旬に各医療機関に戻し、その修正・確認結果を12月11日までに送付するというスケジュールになる。
 2年目となる病床機能報告を着実に実施するために、事務局は昨年の結果を踏まえ、未報告や間違いなどにどう対応するかという問題に対する指針案を提示した。
 それによると、未報告の医療機関に対して、医療法は知事による権限行使(報告の命令)ができるとされていることから、そうした対応を原則とする。
 ただし、事務局は「昨年度は督促するだけにとどめた」と説明、今後も謙抑的対応をしていく考えを明らかにした。
 明確に選択間違いと考えられるものは医療機関に修正を求めるとした。その上で、入力ミスや未記入などを防ぐために、電子媒体による警告や送信停止などシステム上の対策をとる方針を打ち出した。
 この指針(「15年度病床機能報告の対応」)の中で、「回復期は回復期リハのみ」としたり、「特定機能病院は全病棟が高度急性期に該当する」とした医療機能に関する誤った解釈を取り上げ、「回復期には『急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療』も含まれること」を、「特定機能病院においても、病棟の機能の選択に当たっては、個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして、医療機能を適切に選択すること」を、それぞれ15年度病床機能報告マニュアルに明記する方針を打ち出した。
 この問題に関して、中川構成員(日医副会長)は「地域包括ケア病棟をとっている医療機関は回復期なのか急性期なのか悩むことだろう。具体的に例示してはどうか」と提案。
 北波地域医療計画課長は「報告マニュアルで、回復期の注釈に地域包括ケア病棟の例示を付け加える」考えを明らかにした。
 このやりとりに関連して、西澤構成員(全日病会長)は、「医療機能は、各病棟に入院している患者に提供されている医療にもとづいて判断されるもの。
 すなわち、病棟単位の医療機能の前提にあるのは病床単位の医療機能である。
 それを病棟の医療機能として捉える場合はケースミックスの視点に立つ必要がある。そうしたこととともに、医療機能別の患者数にもとづいて判断することをマニュアルで説明してはどうか」と提案。事務局は善処する意向を示した。
 事務局は、10月からの報告を前に各医療機関が判断する時間を十分確保できるよう、なんとか8月内に報告マニュアル等の資料をwebサイトに掲載したいとしている。検討会は事務局案の大筋に異論はなく、文言の修正は遠藤座長(学習院大学経済学部教授)に一任、15年度病床機能報告実施の概要を了承した。

医療機能の定量的指標に向け、各機能の定義を深める議論へ

 この日の検討会に、事務局は、今後、「報告された医療機能と、行われている医療内容、構造設備・人員配置等との関係を詳細に分析し、適切な病床機能報告に向けて検討していく」ことを提案した。
 この提案を記した「適切な病床機能報告に向けた今後の検討について」と題した資料は、提案の意味を以下のように記述している。

 平成26年度病床機能報告では、医療機関が、「医療機能の内容」に照らして、病棟の医療機能を選択して都道府県に報告することとなっていた。このため、同じ医療機能を選択している病棟でも、そこで行われている医療の内容等は必ずしも同等ではなかったり、同程度の医療内容と思われる医療機関でも、異なる医療機能を選択して報告している例もあったと考えられる。
 例えば、診療報酬の地域包括ケア病棟入院料を算定している病棟の場合、報告している医療機能は、主に急性期機能又は回復期機能となっている。
 今後、報告された医療機能と、行われている医療内容、構造設備・人員配置等との関係を詳細に分析し、適切な病床機能報告に向けて検討していく。
 ※平成26年度病床機能報告では、具体的な医療の内容に関する項目は、病院単位でしか把握できていないので、上記の分析を行う際には、この点に留意する必要がある。

 そして、この資料は、14年度の病床機能報告のマニュアルで示した4つの医療機能の説明を引用した(別掲)。14年度の病床機能報告で、各医療機関は、この説明を参考に医療機能を選択したことになる。
 その結果、選択された医療機能と当該病棟で実際に提供されている医療との間に不整合が生じる例が多かったことを受け、より整合性のとれた選択ができるよう、各医療機能の定義を掘り下げたいと、事務局はさらなる議論を求めたもの。
 焦点は主に高度急性期機能と回復期機能である。この日の議論でも、地域包括ケア病棟は急性期か回復期か判断に迷ったのではないかとの指摘や、「一部の特定機能病院や公立病院では絶対高度急性期で行くぞとの指令が飛んだ」といった恣意的な判断がはたらいたとの情報が紹介されたが、14年度の簡潔な定性的指標だけでは色々な解釈を招く余地があったのは事実だ。
 厚労省は、将来的には報告制度から得られる医療内容等のデータを分析して様々な定量的指標を開発する方針だが、現在得られている14年度報告の結果では、医療内容が病院単位であるために病棟単位の指標が得られない。これは15年度の報告も同様であるため、定量的指標の開発は17年度以降となる見込みだ。
 したがって、地域医療構想が策定される16年度以降、現在の定義のまま、各地の調整会議で医療機能の転換をめぐる話し合いがなされると、協議が立ち行かなくなる恐れもある。
 そうした点から、少しでも現場で共有できる定義が望まれるが、定量的指標がない中で定義を具体化するのは容易ではないというジレンマが否定できない。
 ジレンマは、しかし、これだけではない。この日の議論で西澤構成員が指摘した(前出)ように、医療機能を定義する場合の病床単位と病棟単位というロジックの問題もある。
 この日も相澤構成員(日病副会長)は、医療機能の概念を議論するのであれば「病棟だけでなく、(四病協の提言が試みたように)病院の類型化も一緒に考えていかないと国民には分かりにくい」と指摘した課題もある。
 病床単位したがって患者単位の機能は分かりやすいが、同じ患者が同一の病棟で異なる病期の経過をたどる、したがって様々な機能の患者が混在する実際の病棟を特定の機能に収斂させるのは、容易ではない。
 診療報酬の項目をもちいた例示が分かりやすいとの声もある。しかし、ストラクチャが先行する診療報酬の項目がどこまで機能を代替できるのかという問題もあり、今後の議論が注目される。