全日病ニュース

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手術料等の外出しで両論併記。認知症やせん妄の患者はB項目で評価の方向

【地域包括ケア病棟/重症度、医療・看護必要度】

手術料等の外出しで両論併記。認知症やせん妄の患者はB項目で評価の方向

入院医療等の調査・評価分科会 検討結果(中間とりまとめ案)
(編集部注)以下は8月26日の分科会に提示された中間とりまとめ案の概要だが、同日の議論を反映し、数ヵ所にわたる修正が加えられる。

1. 急性期入院医療について
1-3. 重症度、医療・看護必要度について
・現行の基準を満たす患者以外にも、医師による指示の見直しや看護師による看護が頻回に必要な患者が存在している。
・手術直後の患者や救急搬送後の患者は、処置やADLの状況等により、現行の基準を満たさないことも多い。このほか、現行の基準には含まれないが、医師の指示の見直しが頻回で急性期の医療の必要性が高い状態として、無菌治療室での管理等が挙げられた。
・7対1病床で「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合が高い医療機関は、手術などの高度な治療の病床数当たり実施件数が少ない傾向がみられた。
・現行の基準を満たす患者の割合は同程度でも、相対的にA項目の該当患者割合が高い医療機関やB項目の該当患者割合が高い医療機関が存在する。特定機能病院ではA項目の該当患者割合が高く、B項目の該当患者割合が低い傾向がみられた。
・急性期医療では、発症早期のリハビリや術後の早期離床等が推奨されているが、現在の基準では早期離床を進めにくくすることが懸念される。例えば、術後の一定日数等の患者にはB項目の点数によらず基準を満たすこととすれば、こうした懸念は解消されうる。
・A項目のみに着目した評価と現行基準による評価を比較したところ、「A項目3点以上の患者」では「A項目2点以上かつB項目3点以上の患者」と比べ、医師による指示の見直しや看護師による観察等が頻回に必要な患者の割合は概ね同等又はやや多かった。
・一般病棟用のB項目は、特に「寝返り」「起き上がり」「座位保持」の項目間に極めて高い相関がみられ、「起き上がり」「座位保持」の項目を除いても、該当患者割合への影響は小さかった。これら3項目のうち、「寝返り」の項目は看護業務の負担からみても最も重要であるとの意見があった。
・認知症患者への看護提供頻度は高い傾向にある。
 また、せん妄は急性期の入院治療中にしばしばみられ、看護提供頻度は高い傾向にある。一般病棟用のB項目にはない「他者への意思の伝達」「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の3項目は認知症及びせん妄と特に関係が強かった。このうち、「他者への意思の伝達」「診療・療養上の指示が通じる」は類似の状態を評価していた。
・このように、現行の一般病棟用のB項目から「起き上がり」「座位保持」の2項目を除き、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の2項目を加え、仮の7項目とした場合、認知症やせん妄の患者がB項目でこれまでより高く評価される。仮の7項目を用いて7対1病棟で試算しても、点数分布や3点以上となる者の割合は現行と大きな差はなかった。
2. 短期滞在手術等基本料について
・調査結果から以下の特徴が観察された。
一「水晶体再建術」は、平成26 年度改定の前後で両眼の手術の減少、片眼の手術の増加がみられ、診療形態に大きな変化がみられた。
一「ヘルニア手術」や「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術」は乳幼児等の症例が多くみられ、年齢によって出来高実績点数に大きな違いが認められた。
一一部の手術について、全身麻酔と全身麻酔以外の方法で実施されている項目がみられたが、麻酔方法の選択に当たって、患者の特性よりも医療機関の診療方針が影響していると考えられた。その他、出来高実績点数のばらつきがみられ、算定件数が少ない項目もみられた。
・短期滞在手術等基本料では原則として全ての基本診療料・特掲診療料が包括化されているが、他の包括入院料に例があるように、高額の医療を要する特定の部分を包括から除外することも考えられることから、透析患者について分析したところ、透析患者の出来高実績点数は平均的な症例を大きく上回っていた。
・短期滞在手術等基本料の新たな対象となり得るものとして、「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」「体外衝撃波腎・尿管結石破砕術」「ガンマナイフによる定位放射線治療」は在院日数が短く、出来高点数のばらつきが少なかった。
3. 総合入院体制加算について
・総合入院体制加算の届出を行っている医療機関であっても、救急患者の受入について限定的な対応方針をとっている施設や重症の入院患者の割合が少ない医療機関がみられた。また、特に受入が進んでいない認知症や精神疾患を合併する患者については、受入を推進するための方策を更に検討すべきとの意見があった。
・総合入院体制加算1の届出に当たって求められる6つの実績要件のうち、「化学療法が4,000件/年」の要件を満たすことが困難とする医療機関が多かった。
・総合入院体制加算を届け出た医療機関において「重症度、医療・看護必要度」A項目の該当患者割合には大きな差がみられた。A項目の該当患者割合が高い医療機関では、手術等の医療機関における件数だけでなく、病床数当たりの件数も高い傾向がみられ、より高い密度で高度な医療が提供されていた。
・総合入院体制加算2の届出医療機関のうち約5%は、当該加算の届出医療機関が満たすことが望ましいと規定されている6つの実績要件のうち1つ以下しか満たしていなかった。これらの医療機関は、実績要件の多くを満たす医療機関と比較して、手術の実績等において大きな差があるほか、平均在院日数が約1日長かった。
4. 有床診療所入院基本料について (略)
5. 地域包括ケア病棟入院料について
・地域包括ケア病棟には急性期からの受入、緊急時の受入及び在宅復帰支援等の役割が期待されており、調査結果においても自宅及び自院・他院からの入院患者が多数を占めた。
・入院患者の疾患としては骨折・外傷が多く、リハビリを目的に入院している患者が30%程みられるなど、患者は特定の状態に集中する傾向がみられた。処置の実施は頻繁ではなく、ほとんど検査や画像診断を要しない患者も一定程度入院していた。
・地域包括ケア病棟が、地域包括ケアシステムのなかでより積極的な役割を担うに当たって、自宅からの受け入れ患者等に幅広い医療を提供する機能を拡充する観点から、手術料や麻酔料を包括外とすることも選択肢として考えられるが、一方、現状において、手術の実施が極めて少なかったこと等から、引き続き手術料も包括とすべきとの意見もあった。
・リハビリは、現時点では、患者の状態に応じて異なる頻度で提供され、想定した期間内に自宅に退院する患者が多いなど、概ね適切に実施されているものと評価された。
・入院患者の退棟先は主に自宅で、在宅復帰率は高い水準にある一方、家族のサポートや介護施設の確保等が困難なため退院予定が立っていない入院患者が一定程度存在していた。
・より入念な退院支援を要する状態の患者の受け入れを図る方策を探るため、退院支援の取り組みの効果等について、次のような結果が得られた。
一病棟に専任又は専従で、退院支援職員の担当者を配置した医療機関では、より早期に関与を始められたり、より多くの患者に退院支援を行えたりするといった効果が指摘された。
一また、退院支援計画の作成や、早期退院に向けた入院後の多職種カンファレンスを実施している病棟では、実施していない病棟と比べて平均在院日数が短い傾向が見られた。
6. 医療資源の少ない地域に配慮した評価について
 対象地域の選定条件として、患者の流出率が少ないことよりも、むしろ、医療従事者数が少ないことを重視した場合のシミュレーションを実施したところ、対象となる二次医療圏は30 から41 に増加するが、人口密度、人口当たり・面積当たりの医師・看護師数、病院密度のいずれも、現行よりも低い二次医療圏が対象となる傾向がみられた。
7. 慢性期入院医療について
7-1. 在宅復帰機能強化加算について
・当該加算を算定している病棟において、必ずしも急性期病棟から受け入れた患者の多くが在宅に復帰できているわけではなかった。病床回転率等の算出に当たって自宅からの入院と他院からの転院を区別していないこと等が背景にあると考えられた。
・入院期間が31~60 日の退院患者が多く、これは、在宅復帰率等の算出から入院期間が1 か月未満の患者を除くために生じる現象と考えられた。急性期病棟から受け入れた患者の在宅復帰を進めることが本来の目的であったが、その目的を果たしていないと考えられた。
・こうしたことから、回転率等何らかの指標に急性期病棟から患者を受け入れて在宅に復帰させることを加味し、在宅復帰率の算出における入院期間に関するルールを改めるとで、所期の目的に適った評価が可能になると考えられる。ただし、急性期病棟から受け入れた患者の在宅復帰は大きな困難を伴うことから、急性期病棟からの受け入れ患者に限った場合、現行の回転率等と同じ水準に基準を設定することは難しいとの意見があった。
7-2. 療養病棟入院基本料2について
・療養病棟入院基本料1は医療区分2又は3の患者を8割以上受け入れていることが要件になっているが、療養病棟入院基本料2にこのような要件はなく、近年、医療区分1の患者が増加している傾向がみられる。療養病棟入院基本料2についても、医療区分2又は3の患者の割合に何らかの要件を設けることも考えられる。
7-3. 医療区分の評価項目について
・「うつ状態」「頻回の血糖検査」「酸素療法」に該当する患者の必要とする医療の密度は極めて多様であることから、密度の高い治療を要するかどうか等に基づいて、更にきめ細かな評価を行うことで、より適正な評価が可能になると考えられる。
・「褥瘡」の患者は入院期間が長期に及ぶ患者により多くみられた。これについて、必ずしも入院期間中に新たに褥瘡が生じていることを示すものではないとする意見と、その様な可能性も示唆されるとの意見が両方みられた。いずれにしても、入院期間中に新たに褥瘡が生じたことをもって、それまでの医療区分を変更する必要はないものと考えられる。
・医療区分1のより重症患者の評価のあり方やADL区分を含め、次の医療・介護の同時改定等に向けて、医療区分のあり方について抜本的な調査や検討を求める意見があった。
7-4. 脳卒中患者に関する慢性期医療の適切な評価について
・障害者施設等入院料及び特殊疾患病棟入院料等において、意識障害を有する脳卒中の患者など、状態像が療養病棟の対象患者と重複している患者が一定程度入院していた。
・これらの病棟に入院している脳卒中患者は、医療区分の内訳、医師の指示の見直しの頻度、看護師の観察・管理の頻度等は療養病棟の患者と概ね同等であった。他方、これら病棟に入院している脳卒中患者の1日当たり請求点数は、療養病棟と比較して高額になっていた。
・障害者施設等入院基本料や特殊疾患病棟入院料等に入院する意識障害を有する脳卒中患者の多くは、本来これらの病棟への入院が想定される状態像とは異なっており、引き続きこれらの病棟の入院対象とすることについては課題があると考えられる。また、引き続きこれらの病棟への入院が必要であるとしても、同一の状態にある患者で病棟間で報酬の評価方法等が大きく異なっていることには留意を要する。なお、これらの病棟に入院する脳卒中患者の中には、医師による指示の見直しの頻度が高い患者が存在することなどから、患者毎の状態にも留意すべきとの意見があった。
8. その他
8-1. 退院支援に係る取組について
・より入念な退院支援を要する状態の患者の受入及び円滑な在宅復帰への流れを促進するための退院支援の取組の効果等について分析を行い、以下の結果が得られた。
一退院支援を行うに当たって、面会日の調整や早期の退院支援の開始、患者1人当たりの退院支援に係る時間の確保等の困難があることが指摘された。また、患者が退院できない理由として、入院・入所先の確保等が課題になっていることが示された。なお、入院患者のなかには、要介護認定を受けた患者も多く入院していることから、介護サービスとの連携が重要であるとの意見があった。
一病床規模に関わらず多くの医療機関が退院支援室等の設置や早期退院に向けた多職種のカンファレンス等を実施していた。また、病棟に専任・専従の退院支援職員を配置している場合があり、より早期の関与やより多くの患者に対して退院支援を行えるようになる等の効果が指摘された。
一連携施設数が多いなど、退院支援に向けた連携を積極的に実施している施設では平均在院日数が短い傾向がみられた。この傾向は入院期間の長い種別の病棟でより顕著であった。
8-2. 入院中の他医療機関の受診について(略)