全日病ニュース

全日病ニュース

地域医療連携推進法人制度が創設。2017年度に施行

地域医療連携推進法人制度が創設。2017年度に施行

【医療法一部改正法】
施行5年後に検討。社会福祉法の改正と外国人技能実習法は継続審議

 2015年の通常国会は9月27日に閉会し、戦後最長245日の審議を終えた。今国会で、医療法一部改正法が9月16日の参議院本会議で可決・成立した。
 社会福祉法等一部改正法案は7月31日の衆議院可決を経て参議院に送付されたものの審議にいたらず、また、外国人技能実習法案は衆議院の審議途中で会期を終え、それぞれ継続審議となった。
 外国人技能実習制度の適正な実施を図る外国人技能実習法案に関しては、新たな技能実習制度の施行と同時に対象職種に介護を追加することが想定されている。また、社会福祉法等一部改正法案には社会福祉法人制度の大幅な改革措置が規定されている。
 両法案とも安全保障関連法案や派遣法改正法案をめぐる与野党攻防の影響を受けて審議日程が大きく遅れたものだが、所管する厚労省と法務省(外国人技能実習法案)は次の臨時国会で審議に付されるものとみている。
 成立した医療法一部改正法の概要は以下のとおり。
1. 地域医療連携推進法人制度の創設(医療法第7章に明記)
2. 医療法人制度の見直し
(1)経営の透明性の確保とガバナンスの強化
・基準に該当する医療法人は公認会計士等による監査・公告を行なう。
・医療法人は、役員と特殊の関係がある事業者との取引報告を作成して都道府県知事に届け出る。
・医療法人は、理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等を規定。理事会の設置、社員総会の決議による役員の選任等に関する所要の規定を整備する。
(2)医療法人(社会医療法人等を除く)が都道府県知事の認可を受けて実施する分割に関する規定の整備
(3)社会医療法人の認定等に関する改正
・都道府県をまたいで病院や診療所を開設している場合で、基準に適合する社会医療法人は、当該病院所在地の都道府県知事だけで認定が可能。
・社会医療法人の認定を取り消された、一定要件に該当する医療法人は、救急医療等確保事業の実施計画を作成し、知事の認定を受けたときは収益業務を継続して実施できる。
 改正法において、一般社団法人である地域医療連携推進法人の社員はそれぞれ1つの議決権をもつとされたが、議決権に関して不当に差別的な取り扱いや社員が提供する経済価値に応じた異なる取り扱いをしない定めが定款にあれば、「この限りでない」とされた。
 また、理事は3人以上とし、そのうち「少なくとも1人は、診療に関する学識経験者の団体の代表者その他の医療連携推進業務の効果的な実施のために必要な者として厚生労働省令で定める者であること」とした上で、代表理事を1人置くことを求めている。
 この代表理事について、参議院厚生労働委員会は、附帯決議に「地域医療連携推進法人の代表理事は医師又は歯科医師を選任することを原則とすること。また、医師又は歯科医師以外の者を代表理事とする場合でも、営利法人等との利害関係、利益相反を厳重にチェックし、医療の非営利性を損なわないようにすること」を要求、省令等に盛り込むことを求めた。
 今回の規定事項に関しては施行5年後に必要な検討を加えることが附則に明記されたが、前出の附帯決議は、とくに地域医療連携推進法人を取り上げ、「地域医療構想の達成のために有効に機能しているか、地域の医療提供体制に過不足が生じていないか等について十分検討し、必要な措置を講ずる」ことを求めている。
 同改正法には、主たる部分に関しては公布の日から2年以内に施行されるが、医療法人分割規定と社会医療法人認定等の事項は1年以内に施行する旨が明記されている。
 同改正法の公布日を含め、厚労省は施行にいたる日程の検討を進めているが、後者は2016年度の上半期(4月~9月)、前者に関しては17年度の施行を想定し、省令等改正の準備を進めていく方針だ。
 地域医療連携推進法人だけでなく、医療法人の定款に関する部分も本則だけでは不明な点が多く、政省令や通知がまたれるところだ。