全日病ニュース

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「機能分化は強制的に行なうものではない」

【第57回全日本病院学会】

「機能分化は強制的に行なうものではない」

特別講演「日本医師会の医療政策」から 横倉義武日本医師会長

 人口の大変動を考えると2025年に向けて医療機能の分化・連携の強化は必要であり、この方向性は間違っていない。しかし、機能分化には各地域の実情を反映させる必要があり、国や自治体が決めて強制的に行なうのではなく、各医療機関が地域での役割をしっかり考えてそれぞれの選択をしていくことが必要である。
 医療提供体制構築に対する我々の考え方は、2013年8月の日医・四病協共同提言の中の「基本方針」で、「地域の医療・介護・福祉との連携の下、地域包括ケアシステムの実現に向けて、在宅医療を含めた地域特性にあわせた柔軟な医療提供体制を構築する」と記した。
 国は、2025年医療需要の推計結果を示して、全国の病床数を減らさなければならないというが、それは違う。
 構想は医療機能別の医療需要と現状の病床数を踏まえて策定されるが、現状の病床数を表わす病床機能報告は機能を病棟単位で選択するというものである。
 しかし、医療制度において、1つの病院が複数の機能を担うことを禁じられているわけではない。
 地域医療構想は、各病院が区域の中でどういう機能を果たしているかをよく確認し、将来の需要を見極めて、どういう機能でいくかを自ら選択していくことに意義がある。
 地域医療に対する不安は地方でとくに高い。それだけに、地域ごとに、地域全体を俯瞰した地域包括ケアシステムが必要であり、その中で医療機関の連携、医療と介護の連携が実現されなければならない。
 骨太2015には過去3年間の社会保障費の自然増が1兆5,000億円であったことから、それを基準に今後の自然増としていく考えが盛り込まれた。14年度の医療費は前年度から約0.7兆円増えている。16年度の概算要求に厚労省は社会保障費の6,800億円増を計上したが、これが確保されるか否かが16年改定の重要な点となる。