全日病ニュース

全日病ニュース

同時改定に向けた介護報酬改定検証調査の内容固まる

同時改定に向けた介護報酬改定検証調査の内容固まる

【介護給付費分科会】
看取りとターミナルなど、医療提供に関する医療・介護の横断調査を実施

 9月18日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会(写真)は、(1)2015年度介護報酬改定の検証調査(15年度調査)の調査票、(2)介護事業経営実態調査、(3)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について議論した。
 15年度改定の検証調査は診療報酬の改定検証調査と同様、介護報酬改定の効果検証と実態の把握が目的で、次期改定の重要な基礎資料となる。
 15年度は影響が比較的早く出る改定項目を中心に調査されることになり、そのテーマは、①リハビリと機能訓練の機能分化とそのあり方、②介護保険施設等における医療ニーズへの対応のあり方、③認知症高齢者への介護保険サービス提供の実態、④介護保険サービスにおける質の評価に関する調査研究などの7項目となった。
 この日は介護報酬改定検証・研究委員会がまとめた調査票案がそれぞれ示され、基本的に了承された。修正を求める意見の反映は田中滋分科会長(慶應義塾大学名誉教授)と事務局(厚労省老健局老人保健課)に委任された。
 調査は10月にも開始され、来年3月には分科会に結果が報告される。
 このうち、リハについては、評価の視点を「機能訓練」のみから「活動」と「参加」へと広げたり、多職種連携にもとづくリハ・マネジメントの仕組みなど15年度改定で重点的な見直しが行なわれた。
 検証調査では、通所リハ、通所介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、短期入所生活介護、介護保険3施設について各500~1,500事業所を対象に、機能訓練もしくはリハ提供の内容、人的配置、利用者の満足度などを調べる。
 医療ニーズへの対応に関しては、医療サービスの提供体制と提供状況の実態に加え、看取りとターミナルケアの実態も調べ、施設類型間の差異や特徴をなどを把握する。
 特養(対象2,000施設程度)、老健(2,000施設程度)、介護療養型(1,600施設程度)とともに医療療養病床(1,200施設程度)も調査対象に加えられた。18年度同時改定のテーマの1つが介護施設に対する医療提供のあり方となるという点だけでなく、医療提供に関する、医療保険から介護保険にいたる慢性期の横断調査は前例にとぼしいこともあり、きわめて注目される調査となる。
 認知症対応に関しては、介護保険すべての施設・事業所を対象に、介護保険データベースを活用した概況調査とともに、1万ヵ所程度を対象にサービス提供の実態や利用状況などを調査する。
 精神病床や療養病床は対象に入らないが、介護保険の全サービスを対象とする認知症に関する本格的な横断調査は初めてとなる。
 これら調査の実施に関しては、テーマごとに調査検討組織が設置され、調査設計から報告書作成にいたる工程を管理する。医療ニーズの調査は6人の委員からなるが、病院からは日慢協副会長の安藤高朗氏(全日病副会長)と池端幸彦氏が参加している。
 このほか、この日は、介護事業経営実態調査の見直し検討に関する論点と現在までの議論の整理が示され、介護事業経営調査委員会に付託する検討点について意見が交わされた。
 介護事業経営実態調査については、「15年度予算編成における大臣折衝事項」(15年1月11日)で、「サービス毎の収支差その他経営実態について改善措置を講じ、17年度に実施する介護事業経営実態調査に確実に反映させる」と明記された。
 したがって、今年の12月までに調査設計の案を固め、改定2年目の16年度には調査を実施する必要があり、その具体案の提案を、付設の介護事業経営調査委員会に付託している。
 論点としては、(1)実態調査は、現在、改定後2年目の3月の1ヵ月を対象としているが、それを通年あるいは複数年とするかどうか、(2)サービスごとにしている実態調査を法人単位の調査とするか(その際、キャッシュフロー、内部留保、借入金も把握するべきか)、(3)介護報酬の設定に際してサービス間の収支差率を比較しているが、税等の費用を控除する前の収支差率を用いるのは課税法人と非課税法人の間に不公平をもたらさないか、などがあげられている。
 この日の議論では、「診療報酬改定に用いる医療経済実態調査のように、複数年を対象とするとともに、経年調査も行なうべきではないか」とする意見がある反面、「複雑な調査にすると零細な介護事業所の多くは回答できなくなる」との声も多くあがり、議論の行方は混とんとしている。