全日病ニュース

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薬剤師配置案に「病棟薬剤師加算」の特定入院料への拡大を対置

薬剤師配置案に「病棟薬剤師加算」の特定入院料への拡大を対置

【入院医療等の調査・評価分科会】
神野副会長が提起。7対1転換の選択肢拡大へ「病棟群単位の入院基本料」も主張

 厚生労働省は10月1日の診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(写真)に2015年度入院実態調査の結果を提示。分科会は入院医療に関する議論を再開した。
 14年度入院実態調査の結果を分析した結果はすでに8月の中医協総会に報告されており、16年度改定に向けて入院医療検討課題を抽出する後半の議論となる。
 15年度調査の主たるテーマは、①一般病棟(7対1・10対1)における特定除外制度見直しの影響、②特定集中治療室管理料の見直しの影響、からなる。2,000施設に調査票を送り、814施設(病棟数2,130、患者数68,081人。ICU等の患者数は2,548人)から回答を得た(回収率40.7%)。
 特定除外制度の見直しに関しては14年度調査でも取り上げられているが、今回15年度調査は見直しに対応した医療機関の取り組み内容など、より詳しい実態の把握に努めた。
 その結果、7対1と10対1とも、90日超患者における「非医学的理由で入院する割合」がほぼ20%以下に下がっていることが判明。神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長、全日病副会長)は「病院が努力した結果だ。評価されるべき」と評した上で、「本当に、患者が困っていないか、自院・他院を含めた再入院率を調査すべき」と求めた。
 特定集中治療室管理料について見直した結果を調べた部分では、「重症度、医療・看護必要度」のA項目に高い相関性をもつ項目があることやA項目3点の患者の医療密度が相対的に低いなど、ICUの重症度評価項目の問題点が浮き彫りにされた。
 委員は概ねA項目の組換えや評価重みづけの変更に賛成しており、見直し課題として中医協への報告に盛り込まれるのは必至となった。
 事務局は、また、ICUを薬剤師必置とすることを提案した。この提案に、神野委員は「人員配置基準というかたちで人を増やしていくのか、それとも医療の内容に応じて配置を評価していくのかで、考え方が分かれる」とした上で、後者の考え方に立つとき、チーム医療として薬剤師の役割はさらに重要になっていることから、ICUに限定するのではなく、病棟薬剤業務実施加算を特定入院料にも広げるかたちをとるべきとの認識を示した。
 ICUをもつ比較的大きな病院が対象となった15年度調査は、地域包括ケア病棟に関して、7対1や10対1からの転換意向、その使われ方、機能に対する各病院の考え方についても調べた。
 それによると、利用実態はほとんどが自院および他院急性期病棟からの受皿であった。
 この結果について、神野委員は「ICUをもつような7対1や10対1の病院が併設する地域包括ケア病棟・病床はポストアキュートという使い方になる。その場合、在宅の急変患者は7対1や10対1に入院してから地域包括ケアに転棟することになる。調査結果をみると、7対1や10対1の中に地域包括ケア病棟・病床を考えているところが少なくない。
 そこで、日病協が提案しているように入院基本料を病棟群単位で算定できれば、7対1と10対1あるいは13対1が併存し、その中に地域包括ケア病棟・病床を併設していく余地が生まれることだろう」と論じ、サブアキュートという使い方を増やしていくとともに、7対1からの転換の選択肢を増やすことになる病棟群単位の入院基本料を検討するよう求めた。
 この日の意見を踏まえて事務局は次回の入院医療分科会にとりまとめ案を提示する。そこで合意が得られれば、10月後半から、中医協を舞台に、16年度改定に向けた入院医療の具体的な議論が展開されることになる。

調査結果に対する事務局の分析と論点から

●特定除外制度の見直しについて
・90日超患者について、7対1の98%、10対1の80%が出来高算定を選択していた。
・出来高算定患者を平均在院日数の算出に含めることで、平均在院日数の算出値が0.5日程度延長していた。
・患者の退院先については自宅や一般病床以外の病床が大半であった。
・特定除外制度の見直しに伴って何らかの取り組みを行なった医療機関では90日超患者の減少割合が多かった。取り組みの内容は、「退院支援や相談窓口の充実」の他、7対1では「他の医療機関との連携強化」や「他医療機関への転院促進」が、10対1では「自院の他病棟への転棟促進」が多くみられた。
●特定集中治療室管理料の見直しについて
・ICUにおける「重症度、医療・看護必要度」について、A項目が2点であっても医療密度の高い患者が入院している一方、A項目が3点の患者は相対的に医療密度が低いことや、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」にのみ該当する患者の割合が極端に高い医療機関がみられることを踏まえ、「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たすための条件についてどう考えるか。
・現状における薬剤師の配置状況や、薬剤師配置による効果を踏まえ、ICUにおける薬剤師の配置についてどう考えるか。
●その他
・ICU等を持つ7対1・10対1入院基本料届出医療機関では、地域包括ケア病棟に入院している患者の約80%が自院の急性期病棟からの転棟患者であった。また、当該病棟の利用趣旨としても、ほぼ100%の施設が「自院の急性期病棟からの受け皿として利用」していた。
・7対1病棟において地域包括ケア病棟を届け出ていない理由としては、入院患者の状態・ニーズと合致していない又は制度の成行を見極めたいとする回答が多かった。10対1病棟においては、その他、スタッフの確保や在宅療養支援病院の届出等を満たすことが難しかったとの回答もみられた。