全日病ニュース

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支払側 大病院の外来定額負担で病院「増収分」の帰属に言及

支払側 大病院の外来定額負担で病院「増収分」の帰属に言及

【中医協】
定額に伴う初再診料の取り扱いも検討対象。患者申出療養制度の骨格を了承

 9月30日の中医協総会は、事務局(厚労省保険局医療課)が提示した患者申出療養制度に関する制度設計の骨格案(別掲)を了承した。同制度は2016年4月に施行される。厚労省は、この内容にもとづいて、必要な省令、告示、通知の準備を進める方針だ。
 この日は、外来医療(2)として、「紹介状なしの大病院受診時に係る選定療養」について検討した。
 紹介状なしに受診した患者に選定療養を適用して定額を徴収することを医療機関の責務とするという制度で、その運用の骨格として、事務局は別掲の考え方と論点を提示した。
 支払側の鈴木委員(日医常任理事)は、対象病院を「特定機能病院+500床以上の地域医療支援病院」とすることに賛意を示した。対象外の患者についても現行制度の基準に準じるべきとした上で、「緊急性の判断は現行どおり医療機関に委ねるべき」とした。
 金額については「再診時は初診時の半分程度でいい」としたが、初診時の金額は発言を控えた。当該医療機関の初再診料に関しては「基本的に現行のままでよい」とした。
 このほか、支払側からは、対象外とするケースに「がんなど検診からの受診」「被災者(被災地)」「別の診療科に通院中の患者」を加えるべきとの意見があった。
 支払側の白川委員(健保連副会長)は基本的に現行制度の考え方を踏襲すべきという意見を表明。緊急性についても「医療機関の判断に委ねるのは当然である」とした。
 ただし、金額に関しては「病院によって金額が異なるというのはどうか。
 大学病院とそれ以外とで分けるというようにシンプルにした方がいい」と、地域医療支援病院の500床という区切りに関しても「規模ではなく、機能という視点から議論していくべきではないか」と、事務局案に異論を唱えた。
 その上で「医療保険部会に示した金額を試算する資料に、“病院の増収となる案”あるいは“保険給付を減らす案”など色々な記述があった。この定額負担をすべて病院の増収としていく考え方は疑問である。今現在も(料金の自由設定というかたちで)病院の増収を認めるかたちになっているが、責務とする以上、その考えはどうなのか」と疑問を呈した。
 この論点は初再診料の設定に影響するものだが、同委員は「定額負担による収入増をどこが享受するかについて議論すべきではないか。保険者に還元するという発想もある」と論じた。
 定額負担の議論は今後も続けられる。

□紹介状なしの大病院受診時の定額負担に関する論点

(1)定額負担を求める大病院の範囲は「特定機能病院および一定規模以上(例えば500床以上)の地域医療支援病院」としてはどうか。
(2)現行制度で特別料金の徴収が禁止されている患者・ケース(緊急その他やむを得ない事情がある場合等)には定額負担を求めない、としてはどうか。
(3)定額負担の対象としない患者の例外規定をどうするか。
 現行制度では患者の緊急性は医療機関の判断に委ねているが、新たな制度において、軽症の患者を除くことについて、その範囲も含めてどう考えるか。
(4)その他、定額負担を求めない患者・ケースについてどう考えるか。
 例えば、地域に他に診療所等がなく、大病院が外来診療を実質的に担っているような診療科を受診する場合は、定額負担を求めないとすることが考えられるのではないか。
(5)定額負担を最低金額として設定することについて、その金額を含めどう考えるか。
 初診時の最低金額-3,000円程度、5,000円程度、10,000円程度再診時の最低金額-1,000円程度、初診時特別料金最低金額の約4分の1
*現行特別料金の徴収金額(平均)は初診で2,394円(1,210施設)、再診で1,262円(133施設)。
*厚生労働科研による調査研究は「一定規模以上の病院において初診時5,000円以上の定額負担を設定することで、軽症の場合に受診を控える可能性」を指摘している。
(6)定額負担を徴収する場合の初診料、外来診療料の評価についてどう考えるか。また、現行の、紹介率・逆紹介率が低い医療機関における減点の取り扱いをどのように考えるか。

□患者申出療養の制度設計(要旨)

【はじめに】
患者申出療養は、患者の申出を起点とし、先進的な医療を身近な医療機関で迅速に受けられるようにするもの。したがって、国において安全性・有効性等を確認し、保険収載に向けた実施計画の作成を臨床研究中核病院に求め、国が確認、実施状況等の報告を臨床研究中核病院に求めるとした上で、保険外併用療養費制度の中に位置付けるもので、「混合診療」を無制限に解禁するものではなく、国民皆保険の堅持を前提とする。
【患者申出療養としては初めての医療の実施までの取扱い】
○患者申出療養の対象とする医療の考え方
・保険収載を目指さないものは患者申出療養の対象とはせず、保険収載を前提に、一定の安全性・有効性等が確認されたものについて、患者申出療養の対象とする。
・患者申出療養は基本的に臨床研究として実施する。
・患者申出療養として実施される医療の類型は以下のとおり。
①既に実施されている先進医療の身近な医療機関での実施
②既に実施されている先進医療の実施計画対象外の患者に対する医療
③先進医療としても患者申出療養としても実施されていない医療
④現在行われている治験の対象とならない患者に対する治験薬等の使用
 既に治験で使われている未承認薬の使用を希望する相談があった場合には、まずは主たる治験又は人道的見地からの治験につなげることを検討する。いずれの治験も実施されていない場合は、臨床研究中核病院が患者申出療養として実施できるか否か検討する。
○国における患者申出療養に係る審議
・安全性・有効性等を審査するために国は患者申出療養評価会議(仮称)を開催、実施が承認された医療は、患者の申出を受理した日から原則6週間以内に告示する。
・患者申出療養評価会議(仮称)は定期的に開催、原則として公開し、審議過程及び結果を事後的に公開する。
・6週間以内に告示できない場合は、その理由を明確にするとともに、持ち回り開催でなく全体会議を開催して、慎重に議論を行なう。
・同会議は当該医療について、実施医療機関追加の判断指標として「実施可能な医療機関の考え方」および「実施医療機関の追加に係る取扱い」を定める。
・告示された医療は、意見書を作成した臨床研究中核病院で同会議に認められた実施計画に沿って実施できる。当該医療は、また、あらかじめ実施医療機関として実施計画に記載された医療機関(特定機能病院及び患者に身近な医療機関を含む)でも実施できる。
【患者申出療養として前例がある医療の実施までの取扱い】
○実施医療機関の追加
・告示されて実施が可能となった医療は、前例がある患者申出療養として、臨床研究中核病院が実施医療機関を個別に審査し、追加することが可能となる。
・実施医療機関の追加を行なう場合も、患者から臨床研究中核病院に申出を行なう。臨床研究中核病院は実施医療機関の追加の審査を原則2週間で行なう。
・臨床研究中核病院は実施医療機関の追加を速やかに地方厚生(支)局に届け出る。実施が認められた医療機関は実施計画に沿って当該医療を実施できる。追加した医療機関に係る報告は患者申出療養評価会議(仮称)に報告する。
○患者申出療養の実施計画対象外の患者について
・前例のある患者申出療養については、患者申出療養評価会議(仮称)で認められた実施計画で定められている患者適格基準から外れる患者など、実施計画対象外の患者に、当該医療を実施することはできない。実施計画対象外の患者に実施する場合には、患者から国に申出を行なう。
【患者申出療養の実施後に係る運用】
○有害事象等の発生時の対応
・先進医療と同様に、重篤な有害事象等の可能性、被害が生じた場合の補償・治療の内容、費用等について、事前に患者又は家族に説明、文書により同意を得て、実施計画に記載する。
・有害事象等の発生時の対応も、先進医療と同様に行なう。
○報告・情報公開のあり方
・国に報告された事項は、原則として厚生労働省のホームページで公開する。
○患者申出療養を実施する場合の費用の取扱い
・患者申出療養は保険外併用療養費制度に位置付けられるものであり、その費用の額の算定に当たっては、先進医療と同様に、診療報酬の算定方法の例による。
・患者から患者申出療養に係る費用を特別の料金として徴収する場合は、先進医療と同様の取扱いとする。