全日病ニュース

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全日病の療養病床転換予測等の調査結果を報告

全日病の療養病床転換予測等の調査結果を報告

【療養病床の在り方等に関する検討会】
土屋常任理事「大切なことは患者の視点であり、病院の思いではないか」

 10月23日の「療養病床の在り方等に関する検討会」(写真)で、構成員から、療養病床の転換先となる“新たな施設類型”のイメージとして「看取り中心の医療強化型の住まい」が提唱された。
 その機能は「療養病床をもつ有床診」が担ってきているとして、別の構成員からは「病院の一部を有床診に転換できないか」との提案も出た。さらに、「看護師と介護要員が24時間常駐する住まい」とし、医療(医師)は外付けとするイメージが語られた。
 こうしたイメージに対しては「特養や老健施設とどう違うのか」との疑問も示された。
 “終の棲家”とされる特養の入所者よりは医療のリスクを負っているが、在宅復帰を目指してリハを受けている老健入所者のような「短期」利用は想定されない、一定程度の医療を必要とするが在宅での療養が困難な患者。すなわち医療区分1に該当する患者を、医療施設体系の外でみていく“新たな施設類型”のイメージが 口々に語られた。
 しかし、イメージを具体化するに当たって、例えば、①住まいにふさわしい環境の確保、②緊急時への対応、③入所者の費用負担など、依然として難しい問題が横たわる。
 これらに関して、①医療隣接というメリットを踏まえて6.4 m2で臨む、②併設した病院の当直医に関する規制を緩和する、③低所得者の負担は“補足給付”するが一般所得の利用者は当然の負担を容認してもらう、といった“解決策”を述べる向きもあった。
 保たれるべき医療の質に関しては、“新たな施設類型”に重症度の高い患者が集まることのないよう、医療区分を見直すべきとの意見が少なからぬ構成員からあがった。
 では、こうした“新たな施設類型”は病床規制の対象となる医療施設なのかという点については、一部から肯定する見解が表わされたものの、こうしたイメージを唱える構成員の多くは発言を控えた。
 つまり、規制の外に置くという意味も含め、医療保険で丸抱えする医療施設ではないというのが検討会の暗黙の前提である。では、介護保険の枠内に位置づけるとすると、介護付き有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設を上回る看護・介護配置とするのか、それは特定施設の新基準とどう異なるのかなどが問われるが、この日の議論はそこまで踏み込まれなかった。
 保険制度に関連して、ある構成員からは、医療へのアクセスが十分とは言えない老健施設をあげ、「介護+医療とするならば、介護も医療も使い勝手に設計されなければならない」との声があがった。
 厚労省(医政・老健・保険の3局。庶務は保険局の医療介護連携政策課)はこの日、(1)「医療と住まいを同じ場所で提供する」ことをベースに、(2)それに「夜間・休日の当直体制またはそれを補完する医療機能」が付加される、(3)住まいは「プライバシーが尊重され、自立した日常生活を送ることができる環境」が確保されるといったイメージを提示した。
 この日語られた“新たな施設類型”には厚労省の想定を超えるものもあった。
 検討会後の囲み取材で、担当官は、「我々の想定しないかたちで議論が進んだ。議論内容をよく整理しないと、次回提出する資料を誤りかねない」と戸惑いを隠さなかった。
 「次回提出する資料」とは、終了直前に遠藤座長(学習院大学教授)が所望した、「本日の議論をまとめ、次回に“新たな施設類型”の骨格案を示してほしい」ということを意味している。
 このように、この日は、前回よりもさらに踏み込んだ議論が展開され、医療区分や「診療報酬と介護報酬の調整」の見直しといった重たい提案のほか、「仏における医療と介護が一体化したシステム」を検討すべきとの要請も出るなど、意見は多岐にわたった。
 その中には、現実とかい離したものや相互に矛盾した関係にある考え方も少なくなく、残り2~3回で収斂するのかみえないところもある。
 しかし、論じられるべき最大のテーマは、1つには現在よりもサービス水準が引き下げられる患者の思いにどう対応するのかであり、もう1つは、介護療養病床や25対1病床を運営している病院経営者と医療従事者の思いにどう応えるかである。
 少なからぬ構成員が「転換型老健がなぜ失敗したかを想起すべきだ」と指摘、「重要なことは患者の視点ではないか」とも訴えたが、この面の議論が深まることはなかった。
 その中で、全日病常任理事の土屋繁之構成員は、全日病が実施した療養病床をもつ会員病院の実態と意識状況を探る調査の結果を報告。介護療養と25対1の病棟をもつ病院の多くがそれらの廃止・終了に反対する一方、仮に廃止・終了となった場合に、多くの病院は20対1療養病床への転換を企図していることを明らかにした(8面に調査結果)。
 土屋構成員は「当該病院は医療の継続を強く希望している」と指摘した上で、「転換を忌避する理由の大きな1つは患者の医療度の高さである。(皆さんが想像するよりも)はるかに重い医療度の患者を我々はみている。この医療度と介護度の問題を考えないと判断を誤ることになる」という認識を表わした。
 「つまり、転換型老健をもってしても医療ニーズには対応できなかったということか」との座長の質問に、土屋構成員は「そのとおりだ」と答え、その証左の1つである前出調査結果の意味するところを読み取るよう言外に訴えた。