全日病ニュース

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医療費適正化基本方針、外来定額負担、入院時生活療養費等を検討

医療費適正化基本方針、外来定額負担、入院時生活療養費等を検討

【医療保険部会】
改革工程の具体化に向けた議論を開始。診療報酬特例も俎上に

 10月21日の社会保障審議会医療保険部会に、事務局(厚労省保険局総務課)は、「経済・財政再生計画」にうたわれた改革工程の具体化に向けた検討課題を提示した。
 「骨太方針2015」には2020年度までの改革工程を今年末に策定することが明記され、「経済・財政再生計画」に社会保障分野における検討事項が明記されている。
 渡辺総務課長は「経済・財政再生計画に盛り込まれた課題のうち医療・介護関係が38項目を占めている」と述べ、それらは、(1)医療費適正化に向けた取組み、(2)医療費用の負担のあり方、(3)保険給付の範囲・内容等からなると整理、その具体的項目を説明した。
 このうち、(1)に位置づけられる都道府県医療費適正化計画に関しては、「国として本年度中に基本方針を策定するが、その基本的方向は内閣官房のWGが検討しており、その内容を当部会で議論していただく」とした。
 同じく、(1)として提起されている診療報酬特例に関しても、「高齢者医療確保法において都道府県別の診療報酬をつくることが可能。この際、そのあり方を検討してはどうか」と提案した。
 (2)には、紹介の有無にかかわらない「外来時の定額負担」が含まれているが、渡辺課長は過去議論された「受診時定額負担」を例示し、「骨太ではこうしたことも含めての検討が提起されている」と説明。大病院、紹介の有無、外来などに限定されない定額負担制度も俎上にのぼることを認めた。
 (3)に位置づけられる、生活習慣病治療薬等にかかわる「費用面も含めた処方のあり方等の検討」について、宮嵜医療課長は「欧米では費用面を基準に処方を判断するという実例がある」ことを紹介。「“安い薬から処方する”ということになるのだろうが、これが日本になじむかどうかも含めて議論していただくということではないか」と解説した。
 渡辺課長は、また、かつて導入が試みられた「参照価格制度」に言及。議論対象となる可能性を示唆した。
 改革工程は経済財政諮問会議の専門調査会がまとめるが、厚労省は医療保険部会で12月までに数回の議論を重ね、工程に反映させたいとしている。

改革工程の具体化に向けた医療保険部会の検討課題(事務局資料から)

(1)医療費適正化に向けた取組み
①外来医療費をデータに基づき地域差を分析し、重複受診・重複投与・重複検査等の適正化を行ないつつ地域差を是正する。
②地域医療構想と整合的な形で、都道府県ごとに医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定する医療費適正化計画を策定。国が2015年度中に標準的な算定方式を示す(都道府県別の医療費の差の半減を目指す)。
○医療保険制度改革法により、都道府県は最速で16年度から医療費適正化計画を見直し、第3期計画(~24年3月)を策定することが可能となった。国としても都道府県の計画策定を支援するため、本年度中に医療費適正化基本方針を策定する必要がある。その際、NDB等を活用して医療の「見える化」を行ない、個々の行動目標の項目や医療費の推計式について検討する。
○内閣官房の「医療介護情報の分析・検討WG」で9月から議論を開始し、年内に医療費適正化基本方針の大きな方向性を検討し、医療保険部会等の議論も経て、年度内に告示。
○都道府県の行なう病床再編や地域差是正の努力を支援する取り組みとして「高確法第14条の診療報酬の特例の活用のあり方の検討」がある。
(2)医療に要する費用の負担のあり方
①医療・介護を通じた居住費負担の公平化の検討(入院時生活療養費)
②かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討
③世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点からの検討
a. 高額療養費制度の在り方
b. 医療保険における後期高齢者の窓口負担の在り方
(3)保険給付の範囲・内容等
 公的保険給付の範囲や内容を適正化し、保険料負担の上昇等を抑制するための検討。
a. 生活習慣病治療薬等について、費用面も含めた処方のあり方等の検討
b. 市販類似薬に係る保険給付について見直しを検討
c. 後発品の価格等を踏まえた特許の切れた先発品の評価の仕組みやあり方等の検討