全日病ニュース

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安倍首相 費用対効果や「地域間格差の見える化」の政府一体による推進を指示

安倍首相
費用対効果や「地域間格差の見える化」の政府一体による推進を指示

【経済財政諮問会議】
塩崎大臣 経済・財政一体改革の具体化・加速へ厚労省方針を説明。16年度改定の課題も

 10月16日の経済財政諮問会議は「経済・財政一体改革の具体化・加速」について議論した。
 「経済・財政再生計画」に掲げられた歳出改革の主要80項目は、諮問会議に付設された経済・財政一体改革推進委員会の手で、改革の具体的内容、定量的な目標値と達成時期、実施主体等を工程表に落とし込む作業が進められている。
 その工程化に関して、推進委員会委員でもある伊藤元重議員(東大大学院教授)は、同委員会における現時点(10月13日)の考え方(中間整理)を報告した。
 「中間整理」は、社会保障分野における重点課題として、①入院医療、②外来医療、③薬剤・調剤、④介護、⑤国民の行動変容をあげ、例えば、①には「地域医療構想実現に向けた都道府県の取組状況を測る指標」を、②には「外来医療費の地域差是正に向けた都道府県・保険者の取組状況を測る指標」や「外来医療費の地域差を測る指標」といったKPI(評価指標)を検討、それぞれに2018年度、2020年度の目標値を設定して進捗状況を毎年度点検・評価していくという考え方を示している。
 「中間整理」について説明した伊藤議員は、5月の諮問会議に示した「地域差を半減できれば2.2兆円の医療費が抑制される」という試算に言及。その削減を目指すKPI等のツールと、それと表裏一体の関係にある医療費の見える化の考え方を明らかにした。
 それによると、社会保障の分野では「都道府県別一人当たり医療介護費・薬剤費(年齢等補正後)の地域差の半減」を重点課題とし、それを実現するための中間ターゲットとして「患者(入院・外来)数、要介護認定者数、処方箋数」あるいは「平均在院日数、外来回数、利用日数、処方日数」などからなる「セミマクロ指標」を取り上げ、これら1つ1つにKPIを設けていく必要を提起。
 その中で、同議員は、KPIごとに「関係する政策群」を明示して、対応すべき省庁と施策という主体を明らかにした。
 見える化に関しては、地域差を軸とする「医療介護の提供体制の実態」「入院・外来・薬剤調剤費及び保険料負担の実態」「DPC・NDB・レセプトを用いた受療内容等と生活習慣等の経年変化(例、食事等と疾病の関係)の実態」などを例示。KPIと同様に、「見える化」すべき事項ごとに厚労省や保険者などの実行主体を明らかにした。

データヘルス推進で10月中に医療ICT活用推進懇談会

 伊藤議員に続いて塩崎恭久厚生労働大臣は経済・財政一体改革の具体化・加速に向けた厚労省の対応について説明した(別掲)。
 塩崎大臣に対して、民間議員からは、「経済・財政一体改革の計画初年度である16年度に診療報酬改定に改革を具体的に反映するようお願いしたい。また、医療費の地域差の解消に向けて、優良事例の横展開を強力に進めていただきたい」という要望意見が示された。
 安倍首相も「民間議員からの提案を踏まえ、費用対効果や地域間格差の見える化を政府一体で推進してほしい」と指示した。

□塩崎厚生労働大臣の説明内容(要旨)

(1)地域医療構想については全都道府県で策定のための会議の設置が終わり、議論が始まっている。各都道府県に2016年半ば頃までの策定を要請しており、16年度中に全都道府県で策定できるよう支援していく。
(2)医療費適正化計画に関しては、今年度中に国の医療費適正化基本方針を見直し、各都道府県は16年度以降に策定する。基本方針に向けて、厚労省として、医療費適正化の取組を測る指標(「特定健診等の実施率」に加えて「後発医薬品の使用状況」「重症化予防の取組」等)および都道府県が医療費目標を算定する標準的推計式を今年度中に策定する。
(3)18年度からの「保険者努力支援制度」の趣旨を現行インセンティブ強化制度に前倒して反映させるなど、インセンティブを強化する。具体的には、「後発医薬品の使用状況」や「重症化予防の取組」等に関する評価指標を今年度中に作成。「保険者努力支援制度」を待たずに、16年度から、上記のような施策に積極的に取り組む自治体に特別調整交付金を傾斜配分する。
(4)10月中に医療ICT活用推進懇談会(仮称)を立ち上げ、医療等におけるICT活用の中長期的な戦略や医療ネットワークのインフラ整備、保健医療データの活用・分析方法の具体化、電子カルテデータの標準化等に向けた議論を加速し、「データヘルス」を推進する。
(5)16年度改定に向けては、「保健医療2035」の提言を踏まえ、総合的な診療を行なうかかりつけ医の普及・確立、患者の価値やアウトカムを考慮した診療報酬体系・インセンティブの設定など、20年後を見据えた保健医療のあり方の転換を実現するための検討を進めていく。
(6)上記も含め、16年度改定に向けて、主に次の課題について検討を進めていく。
①急性期・回復期・慢性期等の病床機能に応じた評価を行い、病床機能の分化・連携、機能強化を推進していく。
②地域のかかりつけ医が、患者の状態や価値観も踏まえ、適切な医療を円滑に受けられるようサポートする「ゲートオープナー」機能を確立していく。
③かかりつけ薬剤師・薬局の評価、薬学管理や在宅医療等への評価・適正化、いわゆる門前薬局の評価の見直し。
④残薬や多剤・重複投薬を減らすための取り組みの推進
⑤後発医薬品について診療報酬・調剤報酬上の使用促進策を検討。その薬価水準についても検討。
⑥イノベーションの評価、基礎的医薬品の安定供給の確保
⑦16年度に費用対効果評価を試行的導入、引き続き本格的な導入に向けて検討。医療サービスの効果・価値等を点数に反映させるなど、パフォーマンスに応じた診療報酬体系を構築していく。
(7)予防・健康づくりへ、データヘルス計画に基づき、今年度から、各医療保険者がレセプト・健診情報等のデータ分析に基づく保健事業を実施。厚労省として、データヘルス事業の評価基準を今年度中に策定し、好事例集の作成や横展開を進める。また、呉市国民健康保険における後発医薬品の使用促進、各種保健事業(糖尿病性腎症等の重症化予防、重複・頻回受診者の指導など)、レセプト点検の推進を横展開していく(全国展開した場合の医療費削減効果は約0.2兆円=機械的試算)。
(8)経済界・医療団体・保険者・自治体等が参加する「日本健康会議」で20年までの数値目標を入れた「健康なまち・職場づくり宣言2020」を採択。先進事例の全国展開のためWGを設置した。
(9)個人のインセンティブ強化等(ヘルスケアポイント付与等)を推進する。
(10)「経済・財政再生計画」(16~20年度)を踏まえ、関係審議会で、負担能力に応じた公平な負担と給付適正化の検討を開始。その結果を踏まえ、法案提出も含めた所要の措置を講じる。