全日病ニュース

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地域包括ケア病棟や褥瘡の評価等で中間報告を一部手直し

地域包括ケア病棟や褥瘡の評価等で中間報告を一部手直し

【入院医療等の調査・評価分科会】
16年改定に向けた入院医療の報告を中医協が了承、入院各論審議の基礎資料に

 10月15日の入院医療等の調査・評価分科会は、2016年度改定に向けた入院医療に関する15年度調査結果の分析を終えるとともに、8月の中医協総会に中間報告した14年度調査の分析と合わせた最終報告(「入院医療等の調査・評価分科会における検討結果」)をまとめた。
 「検討結果」は中間報告に、その後議論された「特定除外制度の見直し」と「ICU等の重症度、医療・看護必要度」に関する分析結果を加える一方、中間報告の内容を一部修正・補正するものとなった。
 特定除外制度の見直しに関しては自宅に戻った患者で在宅医療を受ける割合が少ないことが明記され、「退院支援の状況や退院後の状況を引き続き注視する必要があるとの意見があった」ことが書き込まれた。
 ICU等の「重症度、医療・看護必要度」についてはA項目の一部評価項目の整理統合が提起されている。
 その他、中間報告の内容に関しては、地域包括ケア病棟入院料の部分に「7対1・10対1や特定集中治療室等の届出を行っている医療機関は、自院の急性期病床から地域包括ケア病棟へ転棟した患者が特に多くなっていた」と追記され、7対1等からの転換が主にポストアキュート利用に偏している事実が指摘された。
 また、慢性期における褥瘡に関しては、中間報告にあった「入院期間中に新たに褥瘡が生じたことをもって、それまでの医療区分を変更する必要はないものと考えられる」という断定的な記述が削除され、入院時に発生した褥瘡による医療区分評価をめぐる賛否両論を併記した。
 「検討結果」は10月21日の診療報酬基本問題小委員会を経て中医協総会に提示され、了承された。
 基本小委で、診療側中川委員(日医副会長)の「これは報告であり、すべては中医協で議論するという考え方でいいか」との質問に、宮嵜医療課長は「そのとおり。分科会はデータと論点を提示したに過ぎない」と回答。その上で、「検討結果の内容は、今後の入院医療に関する各論の議論に付される」と説明した。

「入院医療等の調査・評価分科会における検討結果」から*10月21日の中医協総会で了承された「検討結果」は8月の「中間とりまとめ」(9月1日号に要旨を掲載)にその後 の議論内容を追加するとともに、「中間とりまとめ」を一部修正している。ここでは、「中間とりまとめ」への追記・修正部分を報告する。

II. 検討結果の概要
1. 急性期入院医療について
1-1. 7対1入院基本料の算定病床の動向について
・7対1入院基本料から他の入院料へ転換した理由としては、10対1入院基本料に転換した医療機関では、「重症度、医療・看護必要度の基準を満たさないため」、「看護師の確保が困難なため」「平均在院日数の基準を満たすことが困難」、一部の病床の届出を他の特定入院料等に変更した医療機関では、「より患者の状態に即した医療を提供できる」等の回答が多くみられた。また、7対1入院基本料からの転換を行わなかった理由としては「施設基準を満たしており、転換する必要性がないため」とする回答が最も多かった。(この項は「中間とりまとめ」に大幅な加筆・修正が加えられた)
1-2. 特定除外制度の見直しに伴う影響について
・7対1、10対1一般病棟で90日を超えて入院している患者について、平均在院日数の計算対象として出来高算定とするか、平均在院日数の計算対象から除いて療養病棟と同等の報酬体系とするか病棟ごとに選択することとされているが、ほとんどの病棟で、出来高での算定が選択されていた。また、療養病棟と同等の報酬体系を届け出た医療機関が少なかったことから、2室4床に限って出来高算定が可能となっている経過措置を届け出ている医療機関数や病床数も少なかった。(この項は「中間とりまとめ」に下線部分が加筆された)
・7対1、10対1一般病棟に90日を超えて入院していた患者の退棟先は自宅が最も多く、他病院の急性期病床へ転院した患者は5~7%程度であった。こうした患者が減少した医療機関の多くでは退院支援室や地域連携室が設置されていたほか、制度の見直しに伴い、「退院支援や相談窓口の充実」「他の医療機関との連携強化」等の取り組みを進めた医療機関では90日超の患者が減少した割合が高かった。また、現在も90日を超えて入院している患者の入院理由として、「医学的な理由のために入院医療が必要である」患者が約6割みられた一方、「医学的には外来、在宅でもよいが、他の要因のために退院予定がない」患者も約2割みられた。この他、介護を要する患者や経口摂取が困難な患者が、90日未満の入院患者と比較して多いとの特徴もみられた。なお、90日を超えて入院した患者の退院先の多くは自宅であったが、在宅医療を受けた患者はわずかであったこと等から、退院に向けた支援の状況や退院後の状況を、患者側の視点も含め、引き続き注視する必要があるとの意見があった。(この項は「中間とりまとめ」に大幅な加筆・修正が加えられた)
1-3. 重症度、医療・看護必要度について
・今後、こうしたデータを活用し、「重症度、医療・看護必要度」のA項目について、診療報酬の算定項目に基づく評価や項目の統一・簡素化により、評価の負担を軽減できる可能性があるか検討すべきとの意見があった。(この項は上記のとおり「中間とりまとめ」が修正された)
●特定集中治療室管理料について(この項はすべて「中間とりまとめ」に追加された)
・特定集中治療室に入院している患者の90%以上が「重症度、医療・看護必要度」A項目の「心電図モニター」「輸液ポンプ」に該当しており、これらの項目には高い相関がみられた。「重症度、医療・看護必要度」該当患者において最も多くみられたA項目の組合せは「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」の3項目に該当する患者であり、全体の13%を占めた。
・A項目が3点の患者は、A項目が2点以下の患者よりも、医師による指示の見直しが頻回な患者や看護師による頻回の処置・観察が必要な患者の割合が少なく、包括範囲出来高実績点数の低い患者も多くみられる。このことから、A項目が2点であっても医療密度の高い患者が特定集中治療室に入院している一方、A項目が3点の患者には相対的に医療密度が低い患者も多いことが考えられる。また、特定集中治療室に入院する患者のうち「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」にのみ該当する患者の割合が平均よりも著しく高い医療機関がみられる。例えば、こうした項目にのみ該当する患者の「重症度、医療・看護必要度」に関する評価を適正化したうえで、基準から外れる患者は一定の割合に限って入室の対象とするなど、特定集中治療室を重症患者が一層適正に利用するための要件の設定について検討を要する。
・ハイケアユニットにおいても、心電図モニターや輸液ポンプに該当する患者は極めて多かったことから、今後同様の観点から分析し検討していく必要があるとの意見があった。
・現在、病棟薬剤業務実施加算の算定対象に特定集中治療室等は含まれていないが、実際に、約半数に専任の薬剤師が配置され、「医師・看護師の業務負担が軽減した」「副作用の回避、軽減や病状の安定化に寄与した」等の効果がみられたとする回答が得られた。
6. 地域包括ケア病棟入院料について
・地域包括ケア病棟の入棟前の居場所では、急性期からの受入、緊急時の受入及び在宅復帰支援等の役割が期待されており、調査結果においても自宅及び自院・他院からの入院患者が多数を占めた。また、7対1・10対1入院基本料や特定集中治療室等の届出を行っている医療機関においては、自院の急性期病床から地域包括ケア病棟へ転棟した患者が特に多くなっていた。(この項は「中間とりまとめ」に下線部分が加筆された)
8. 慢性期入院医療について
8-3. 医療区分の評価項目について
・「褥瘡」の患者は、入院期間が長期に及ぶ患者により多くみられた。また、入院時からの褥瘡保有率が高いにも関わらず、入院中に発生した褥瘡保有率が低い医療機関が存在する一方、入院時からの褥瘡保有率が低いにも関わらず、入院中に発生した褥瘡保有率が高い医療機関もみられた。これら入院期間中に新たに褥瘡が生じた患者に対する評価については、褥瘡をもって入院してきた患者と同様に医療区分2として高く評価することは妥当でないとする意見があった一方、栄養状態が悪い場合等もあり、やむを得ず褥瘡が生ずる場合もあるとの意見があった。いずれにしても、褥瘡の発生をできるだけ防ぐ取り組みを、一層推進していく必要がある。(この項は「中間とりまとめ」から一部を削除し、下線部分が加筆された)
9. その他
9-1. 退院支援に係る取組について
・平成26年度診療報酬改定において、7対1入院基本料や地域包括ケア病棟に在宅復帰率の要件が設けられた。こうした病棟から、自宅への退院と、在宅復帰率が要件となっている他の病棟への転院・転棟は、分子として同等に評価されることとされたことから、在宅復帰率の算出値は、実際に自宅へ退棟している割合よりも高い値となるが、7対1入院基本料においては、在宅復帰率の基準(75%)を上回り、90%を超える医療機関が多かった。地域包括ケア病棟においては、基準(70%以上)を一定程度上回る、80~90%の医療機関が多かった。 (この項は「中間とりまとめ」がゴシック部分へと修正された)