全日病ニュース

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担当委員会を設置し、支援団体としての全日病の活動を開始

【報告 医療事故調査制度における医療事故調査等支援団体としての取り組み】

担当委員会を設置し、支援団体としての全日病の活動を開始

事故調査専門家の派遣や人材育成研修等を実施。遺族の質問や相談にも対応

医療事故調査等支援担当委員会(仮称)担当理事・常任理事 飯田修平

初めに

 医療事故調査制度(本制度)が制定され(2014年6月)、本年10月1日に実施された。
 全日本病院協会(全日病)は、医療法第6条の11に定められた医療事故調査等支援団体(支援団体)として告示された。10月の常任理事会で、医療事故調査等支援担当委員会(仮称)担当理事として活動承認を得たので、概要を報告する。

医療事故調査制度の概要

 本制度の目的は、医療事故(医療に起因し、予期しない死亡又は死産と病院管理者が判断した事例)の原因究明と再発防止である。医療事故発生時には、院内事故調査を実施し、遺族に説明し、医療事故調査・支援センターに報告し、調査終了時には、遺族に説明し、医療事故調査・支援センターに報告する義務がある。
 医療事故調査等支援団体と医療事故調査・支援センターが8月に告示された。
 全日病は支援団体として告示されたが、会員病院名は告示されていない。

医療機関の準備状況

 重大な医療事故発生は稀であり、重大な医療事故調査の経験がある医療機関でも事故調査の方法を熟知した職員は少ない。本制度対象事例か否かの判断、剖検あるいはオートプシーイメージング(Ai)、事故に関連する専門家招聘等が困難な医療機関も多い。

医療事故調査等支援担当委員会(仮称)の設置

 全日病は支援団体申請に際し、会員病院に参加の可否と支援可能項目をアンケート調査した。病院の機能や規模からは困難と思われる項目も可とする回答があり、再度、全回答病院に項目毎の可否を確認した。
 都道府県毎に支援団体協議会を設置して連携するという議論はあるが、具体的には決まっていない。各支援団体の具体的活動も未定である。放置できないので、筆者は、常任理事会に委員会規程案を提示し、支援団体活動の開始を諮った。

委員会(仮称)の概要

1)目的
支援業務の目的は、医療機関が院内事故調査を行うために必要な支援を行うことである。また、医療の信頼の創造のために、遺族の質問や相談にもできる限り対応する。
2)支援内容
i . 相談・助言(本制度全般、医療事故判断、院内事故調査手法、院内事故調査報告書作成、院内事故調査委員会設置・運営)
ii . 院内事故調査の専門家派遣
iii . 人材育成研修等
iv . 遺族の質問・相談受付
 医療法には規定されていないが、医療の信頼の創造のために、遺族の質問や相談に対応
v . 他支援団体と連携・協力
3)費用(相談・助言業務の実費、遺族の質問や相談は無料)

おわりに

 本制度には満足できないが、医療界の合意を経て制定されており、評価すべき事項も多い。制定後2年以内(2016年6月まで)に見直すことが参議院で付帯決議されている。
 医療事故調査に関する厚生科学研究で、全国アンケート調査・病院訪問調査・他分野の事故調査実務者と意見交換等を実施し、出版、講演、全日病ニュースや雑誌への寄稿、指針作成等を実施し、会員病院に周知した。また、本制度開始を知らせるポスター(病院職員向けと患者向け)を作成し、会員病院内に掲示している。
 第1回医療事故調査・支援センター運営委員会で、遺族には相談窓口がないという発言があった。
 これに対して、筆者は「本制度では遺族の相談受付はセンター業務ではないので、支援団体が自主的にするべき」と発言した。本制度における支援団体業務に規定されていないが、常任理事会で支援団体業務として認められた。
 満足できないのは医療提供側だけではない。本制度を実効あるものとして、全日病の目標である『医療における信頼の創造』を目指さなければならない。会員諸氏のご理解とご協力をお願いしたい。