全日病ニュース

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県医師会が牽引、県と病院団体が密な協議を重ねる

【報告地域医療構想と支部の取り組み(4)福岡県支部】

県医師会が牽引、県と病院団体が密な協議を重ねる

10月末に県内初の調整会議、11月末までに全区域で1回目を開催

福岡県支部(全日病福岡)監事 津留英智

早くから模擬協議を開催―模擬演習を重ねる

 地域医療構想策定については病院病床が主体となる制度であるが、県医師会・県行政・県内病院団体が三位一体となり、各構想区域における2025年のあるべき医療提供体制について前向きに協議することが求められる。
 10月26日に、福岡県朝倉医療圏で、県内初めての地域医療構想調整会議が開催され11月末までに全区域(13医療圏)で第1回目の調整会議が終了する。
 地域医療構想策定に向けて、福岡県が、決して早い取り組みが出来ているというわけでは無い。
 これまでの準備段階として、厚労省「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」委員でもある産業医科大学の松田晋哉公衆衛生学教授には、当初より、県医師会での研修会、講演会、模擬協議の場等々あらゆる場面で、「地域医療構想について」繰り返しご講義を頂き、ご提供頂いた各医療圏のDPC、NDBに基づいた様々なデータを参考に、本年1月から模擬協議の場で、地域の現状と課題について、模擬演習を繰り返して来た。
 この経験は大きく、ある程度機を熟した所で、地域医療構想調整会議本番を迎えることになった。

福岡県支部の取り組み―福岡学会が大きな契機

 平成26年9月20日・21日に、福岡で第56回全日本病院学会を開催し、全国から約2,800名の参加があった。
 厚労省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長(当時)による「医療法改正と地域医療ビジョン」の特別講演があり、また、メインシンポジウム2においても、「病床機能報告制度から病院医療の明日を探る」というテーマの下、活発な議論があった。学会を通じてある程度、次年度の地域医療構想に向けた心構えができたと思う。

病院団体が合同研究会―あらかじめの意見交換

 県内には病院団体が複数あるが、民間主体の団体が「一般社団法人福岡県私設病院協会」(以下私病協)である。
 会員数223の民間病院を中心とした団体で、福岡県支部とほぼ同じ会員構成であり、昨年、理事役員を中心に「全日病学会in福岡」を運営した。もう一つ、公的医療機関を多く含む「公益社団法人福岡県病院協会」がある。
 今回の地域医療構想策定に関しては、各々の病院団体から互いの情報交流を求める形で、「福岡県地域医療構想合同研究会」が設立された(平成27年5月12日)。県医師会担当役員にも参加して頂き、およそ月1回のペースで開催している。特に福岡市内には公的な大病院が多く、DPC病床過剰地域であり、今後の病床機能区分、必要病床数に関しては、地域医療構想調整会議以前に、このような会合において、あらかじめ活発な意見交換を行うことの必要性を感じている。

私病協の取り組み―各調整会議の委員を選んで情報共有

 私病協では、平成27年3月より、各構想区域(13医療圏)調整会議の各委員を選出した。各委員には、模擬協議の場に出席して頂いた後にアンケートを取り、本番の調整会議で問題となりそうな課題や、病院協会に対しての要望など多くの意見を集約した。
 その後10月6日に、各委員を一同に集めた合同会議を開き、事前に理事会で取りまとめた「地域医療構想に当たって、私病協としての統一的な論点及び留意点について」の文書を手渡し、構想調整会議で民間病院の立場をどのように主張すれば良いか等々の打合せを行った。さらに、「地区連絡懇話会」として、区内の会員病院を集めて情報共有の場を設置した医療圏もあった。
 私病協では毎月様々な研修会を行っているが、今年10月の研修会では、西澤寛俊会長ともに人事異動で就任間もない厚労省医政局地域医療計画課迫井正深課長をお招ねきし、『地域医療構想に民間病院はどう対応すべきか』をテーマに講演会を行った。
 私病協では、また、会員の情報共有の為にホームページをリニューアルし、地域医療構想調整会議で議論された内容が、同一医療圏の会員にすぐに情報伝達できるように、会議報告書を掲載するように準備している。

九州支部連絡協議会の取り組み―各支部の取り組みや課題で情報交換

 「全日病ニュース」(8月1日号)で、長崎県支部長の井上健一郎先生が『九州支部連絡協議会発足』の記事をご報告されているが、陣内重三福岡県支部長の声かけの元、この6月1日に準備会議を開き、7月に九州支部連絡協議会が設立された。月1回の会合を開き、進捗状況を含めた各支部の取り組み・課題について情報交換する、有意義な会となっている。
 第2回の協議会に合わせて、8月29日に厚労省医政局の佐々木室長(当時)と猪口雄二副会長を講師として招き地域医療構想についての研修会を行った。

県医師会が牽引した準備期間―模擬協議やデータブックの説明会

 これまでに模擬協議が、第1 回(平成27年1月20日)、第2回(3月3日)、第3回(8月23日・30日)と3回行われた。各地域の医師会担当理事、各病院団体の担当役員、地域の保健所担当者等々が多数参加し、産業医大公衆衛生学松田教授からの基調講演と実践的な演習が行われた。
 また、県医師会の主催で、3月には厚労省医政局地域医療計画課高山義浩課長補佐による「地域医療構想の策定に向けて」と題した講演が行われた。
 8月4日には「医療計画作成支援データブックDISK1」および「地域医療構想策定支援ツール」利用に関する説明会があり、9月より使用可能となった。

「構想プロジェクト委員会」の設置-県・医師会・病院団体の協議体

 本年4月の地方選の影響で県行政の動きもしばらく停滞したが、県保健医療介護部部長始めとする人事異動があったため、5月11日に県医療指導課に直接赴き、私病協として担当者に今後の策定スケジュールの確認を行った。
 その結果、①福岡県は民間業者委託や大学等研究機関への協力依頼などはせずに県独自でデータを出す、②構想調整会議議長には保健所所長を考えている、③構想区域に関しては2次医療圏を考えている、④6~7月の県議会で構想策定のスケジュールを説明後、7月6日の福岡県医療審議会およびその後の医療計画部会にて確認・承諾を得て、今後のスケジュールに関して公表を行う、という回答を得た。
 その間も、7月30日に、県医師会の主催で、県行政と病院団体からなる協議会として「第1回地域医療構想プロジェクト委員会」がもたれ、地域医療構想策定に向けたすり合わせが行われた。
 結果として、①原則として調整会議議長には各地域医師会会長を任命すること、②地域医療構想のデータは産業医大公衆衛生学教室に協力をお願いすること、③構想区域は取りあえず二次医療圏とする等々が確認された(これらの事項は最終的には福岡県医療審議会と医療計画部会で決定される)。

策定作業の開始―日程、会議体、調整会議構成メンバー決まる

 7月6日の第1回福岡県医療審議会に、地域医療構想策定体制案、地域医療構想策定会議と地域医療構想調整会議の設置運営要綱案、各会議の構成員、構想策定スケジュール案(図)が提示された。

 地域医療構想調整会議の構成員は、郡市医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、福岡県病院協会、私病協、全国自治体病院協議会、県精神病院協会、有床診療所連絡協議会、県医療法人協会、医療保険者、市町村、保健所の13名を基本とすることになった。

課題山積の構想策定作業-関係団体とともに九州支部協の取り組みも重要

 以上、福岡県のこれまでの動向を中心に述べたが、各構想区域(13医療圏)の調整会議は始まったばかりであり、初回から構想区域間の流入・流出の問題がスムーズに協議されるとは考え難い。さらに県境での流入・流出の協議ともなれば、とても予定されている年内の調整は困難と思われる。
 今回の構想調整会議の委員構成を見ても、慢性期から在宅への移行を議論するに当たっては、そこに関わる慢性期(療養型)病床の団体、あるいは在宅医、老健施設等の団体は委員として入っていない。特定の協議に関しては部会やワーキンググループを置くことになっており、メンバーの再調整が必要となるであろう。
 地域医療構想策定に関して、特に県内でも過疎地においていかに医師、看護師マンパワーを確保するかなど、これからも、県行政、県医師会、各病院団体が継続して協議していかなければならない課題が山積みされている。
 今後とも、全日病九州支部連絡協議会等での情報交換を通じて、最善の解決法を見出して行きたい。