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地域包括ケア病棟 包括払い+診断群に応じた支払等が必要。200床以上は1病棟に限定

【鈴木委員】

地域包括ケア病棟 包括払い+診断群に応じた支払等が必要。200床以上は1病棟に限定

▲地域包括ケア病棟に関する日医・四病協の提言を陳述した鈴木委員

 10月28日の中医協総会は、2016年度診療報酬改定にかかわる審議事項として地域包括ケア病棟を取り上げた。事務局(厚労省保険局医療課)は「地域包括ケア病棟の包括範囲など、その評価体系を継続することについて、どう考えるか」と論点で提起、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の評価の枠組を大きくは変えない方向を示唆した。
 議論の冒頭で、診療側の鈴木委員は地域包括ケア病棟のあり方に関する「日医と四病協からの提言」(別掲)について説明し、事務局の考え方に対置した。
 「日医と四病協からの提言」とは、病床機能報告制度の立案に向けて「病床機能の区分」と「病院と病床機能との関係」について論じた13年8月の合同提言、そして、地域包括ケアシステムに必要な在宅医療支援や医療・介護連携などの病院機能を明らかにする中で、ポストとサブのアキュート機能を併せ持つ「地域支援病棟」と同病棟を有して病院として地域で地域包括ケアを担う「地域医療・介護支援病院」の整備を訴えた13年11月の四病協追加提言を指す。
 追加提言は、「地域医療・介護支援病院」が具有すべき機能を、高齢化社会への対応と地域包括ケア構築の視点から具体的に示すとともに、地域医療・介護支援病院の医療法・診療報酬上の扱いを提案、これに日医執行部も賛成している。
 この日の総会に事務局が示した16年度改定における地域包括ケア病棟入院料の視点は、基本的に、ポストアキュート活用の視点から急性期大病院からの転換が多い現状を追認するものだ。それは7対1病棟対策とはなるが、急性期病床のさらなる機能分化と地域包括ケアを推進するための医療提供体制構築という視点とは異なる。
 こうした考え方への対案として鈴木委員が示した見解は要旨以下の内容からなる。
(1)地域包括ケア病棟はポストアキュート機能の活用が中心で、サブアキュートの機能が弱い。
(2)超高齢化を踏まえれば24時間365日の2次救急に対応する病院が必要。かつ、地域包括ケア推進のためには医療・介護連携を支援する病院が不可欠。これらは急性期の機能に位置づけられる。
(3)これを地域に整備するためには、地域包括ケア病棟を病院機能の視点から位置づけ直し、その内容にそって診療報酬で評価する必要がある。
(4)機能分化を進める観点から、200床未満の病院には現行の包括算定に加えて急性期に対応する報酬体系を創設し、他の急性期対応病床を持たずに地域包括ケア病棟入院料のみを届け出た場合に算定できるようにしてはどうか。
(5)200床未満病院における地域包括ケア病棟入院料は1病棟に限ってはどうか。
 支払側の質問に、鈴木委員は「これは地域包括ケア病棟の現行機能と要件を見直すということではなく、病院としての機能を提案したものだ」と述べ、「従来の急性期型の医療機能を分化するだけでは(地域包括ケアシステムに)対応することはできない。治療目的以外の職種、体制、機能を病院に付加していくことが求められる」(追加提言)とし、病床(病棟)中心に論じられてきた機能分化に対して、異なる2つの機能を併せもつ地域包括ケア病棟は病院機能という視点を踏まえて考えていく必要があると強調した。
 こうした見解に、白川委員(健保連副会長)は「そうなると包括の範囲を含めて議論しなければならない」と応じる一方、「200床以上病院の参入を1病棟に限るというが、7対1については、療養病棟からの参入を抑える考え方と性格が異なるのではないか」と異論を唱えた。

鈴木委員の提出資料(要旨・10月28日中医協総会)*文中の下線・囲みは原文のとおり

□日医・四病協からの提言―地域包括ケア病棟のあり方(病院機能の視点より)

 「地域包括ケア病棟」の機能は「急性期病院からの急性期後の受け入れ」「在宅療養、介護施設等からの急性増悪の受け入れ」「在宅・生活復帰の支援」とされている。しかし、現時点のデータから、その機能は急性増悪時の受け入れ(手術、検査、治療)等の実施は極めて少なく、リハビリに代表される急性期後の医療が主体となっている。
 今後の超高齢化を踏まえれば、地域包括ケア体制の中で患者情報を共有し、急変時には24時間365日2次救急に対応する機能を持つ病院が必要と考える。
 そして、地域包括ケアを推進するためには、こうした入院受け入ればかりではなく、退院後に安心して療養できるための支援を行うなどの地域の医療・介護連携を支援する病院を地域ごとに整備することが不可欠である。そのためには、地域包括ケア病棟を病院機能という視点から位置付け、診療報酬において評価する必要がある。

□急性期病床の考え方(下図)

 病床機能から考えると、急性期には、在宅や介護施設等の患者の急性増悪対応、2次救急対応が含まれる。また、地域包括ケア推進のため、かかりつけ医との連携機能、介護との連携、患者支援機能等も必要であり、これらは地域に密着した病院が持つべき機能である。

□病院機能に着目した診療報酬上の評価のあり方

 地域の医療・介護連携を支援する病院は地域包括ケア病棟入院料として一部具体化された。しかし、地域における機能を考えると下記のような診療報酬体系が必要である。(下図)

□病院機能に着目した診療報酬上の評価のあり方(例示)

 今後、さらに急性期の患者を扱う病院の機能分化を進める観点、また、病院全体の機能の適切な評価及び高齢者の急性増悪への対応など地域の在宅療養を支援する観点から、基幹型病院と地域密着型病院との機能の違いに着目した2つの区分と、それぞれの機能にふさわしい報酬体系の整備が必要と考える(以下は例示)。
●許可病床200床未満の病院
 高齢者救急応需等、地域包括ケアにおける在宅療養支援等の機能を評価する観点から、現行の地域包括ケア病棟の包括算定に加え、急性期に対応する場合の報酬体系(診断群に応じた支払い等)を創設し、他の急性期対応病床を持たず、地域包括ケア病棟入院料のみを届け出た場合に算定できるとしてはどうか。
●許可病床200床以上の病院
 急性期の患者を扱う病院の機能分化を進める観点から、地域包括ケア病棟入院料を算定できる病棟は一病棟に限るとしてはどうか。

 

全日病ニュース2015年11月15日号 HTML版

 

 

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