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医療課長「退院支援要員の専従・専任は議論次第」

医療課長「退院支援要員の専従・専任は議論次第」

【中医協総会・2016年度改定の議論】
診療側「療養病棟入院基本料2の要件変更は医療区分の抜本見直しが前提」

中医協総会における2016年度改定の審議は個別テーマごとの論点にもとづく議論へと移った。以下に10月28日、11月4日、11月6日における議論の要旨を紹介する。

10月28日の中医協総会 入院医療(5)

◎地域包括ケア病棟入院料に関する論点
 地域包括ケア病棟に求められる役割や、実際の医療提供の状況、入院基本料をはじめとする他の病棟との関係を踏まえ、前改定で設定された地域包括ケア病棟の包括範囲など、その評価体系を継続することについて、どう考えるか。
◎慢性期入院医療に関する論点
①療養病棟における患者像に応じた評価
・医療療養病床の機能を有効に活用する観点から、療養病棟入院基本料2の病棟にも医療の必要性の高い患者を一定程度受け入れるよう求めることとしてはどうか。
・酸素療法(医療区分3)、うつ状態(同2)、頻回な血糖検査(同2)に該当する患者は看護師の観察頻度等が低い傾向にある一方、急性増悪があった患者もみられるなど、状態が多様であると考えられることから、こうした項目の医療区分の評価がより適正なものとなるよう、よりきめ細かな状況を考慮することとしてはどうか。
②療養病棟における在宅復帰機能の評価
 療養病棟の在宅復帰機能強化加算の要件において、在宅復帰率の算出から1ヵ月未満を除外するルールを見直す一方、より直接的に、急性期等から受け入れた患者の在宅復帰の頻度を評価することとしてはどうか。
③障害者施設・特殊疾患病棟の脳卒中患者の評価
・障害者施設等入院基本料や特殊疾患病棟入院料等の病棟に入院する意識障害を有する脳卒中患者の多くは、本来これらの病棟への入院が想定される状態像とは異なっており、引き続きこれらの病棟の入院対象とすることについてどう考えるか。
・当面脳卒中患者がこれらの病棟に入院を要する場合には、特に状態の変動が大きい患者を除き、療養病棟に入院する患者と同等の評価となるよう見直してはどうか。
◎退院支援に係る取り組みに関する論点
・退院支援に係る評価について、現在算定回数の多い退院調整加算及び介護支援連携指導料を中心として、簡素化を図ることとしてはどうか。
・患者が安心・納得して退院できるよう、退院支援に専従する職員がいくつかの病棟を担当として受け持ち、多職種カンファレンスの実施等を通じて入院後早期に退院支援に着手するとともに、医療機関が他の医療機関等と恒常的に顔の見える連携体制を構築するなど、現行の退院調整加算の充実を図ってはどうか。
・また、地域連携診療計画管理料、新生児特定集中治療室退院調整加算など、患者や病棟の特性に応じて特に必要な評価については、退院調整加算の加算として整理してはどうか。
◎入院中の他医療機関の受診に関する論点
 入院中に他医療機関を受診した場合には、入院料の点数から一定割合を控除することとされているが、入院中の患者が異なる診療科の疾患を有する場合にも診断・治療が円滑に行われるよう、精神科病院や有床診療所など、特に診療科の少ない医療機関に入院する患者が、他の医療機関を受診する場合の減算率を緩和することについてどう考えるか。
【主な議論】
 地域包括ケア病棟をめぐる議論の概要は1面記事を参照。慢性期入院医療に関して、事務局は、基本的に入院医療分科会の報告で提起された見直し課題に沿って論点を提示した。
 療養病棟入院基本料2の要件に医療区分2と3の患者割合を加えるとともに、酸素療法、うつ状態、頻回な血糖検査を想定した医療区分項目を見直するという案に、診療側鈴木委員(日医常任理事)は反対を表明。むしろ、「現場の実態に合わなくなってきている医療区分の抜本的見直しが必要ではないか」と提起。「今回が無理ならば、次回改定を視野に在宅医療体制を見据えた見直しを検討するべき」と提案した。
 在宅復帰の評価に関しては、在宅以外からの入院患者には在宅復帰の要件を設けずに、その実績を評価するべきと提案、在宅復帰率の計算に1ヵ月未満を含める案は支持した。
 障害者施設等の脳卒中患者については「本当に療養病棟の患者と同様の状態像なのか、医療区分の精緻な見直しを経てこそ検討されるべきではないか」と疑問を表明。退院支援の職員に関しては「看護師との兼務を想定すると専任でも可能なようにしてはどうか」とし、他科受診の減算率を緩和する案は「診療科の少ない中小病院も対象とすべき」と論じた。
 一方、診療側万代委員(日病常任理事)は、療養病棟入院基本料2の患者割合要件化に賛意を示す一方、「医療区分の見直しと併行しないとうまくいかない」と注文をつけた。脳卒中患者の評価の見直しについては「特に状態の変動が大きい患者を除くという点は評価する」と基本的に支持した。
 退院支援の評価について、宮嵜医療課長は「(退院調整加算で)退院支援人員の病棟配置や協議等にもとづく医療機関連携が要件になっていないことを含めて」見直す意向を表明。人員配置の対象に現行の看護師と社会福祉士を想定、専従・専任は「今後の議論」とした。
 退院支援を評価する診療報酬項目は多岐に分かれている。宮嵜課長は「退院支援については簡素化+充実化を図りたい。退院調整加算の加算とするか、退院調整加算の1・2・3とするかは今後の議論による」と展望。他科受診の減算率の緩和に関しては、診療科の少ない医療機関として「精神科病院と有床診を対象と考えている」とした。
 退院支援評価の充実化に対して、万代委員は他医療機関との協議等を要件化するなど、退院支援評価のハードルを上げる考えに反対を表明した。
 一方、支払側は他科受診の減算率緩和を除いて事務局提案を概ね支持した。その中で、地域包括ケア病棟に関しては「後ほどの議論としたい」(白川委員=健保連副会長)とし、別途時間を確保して再度深める必要を認めた。

11月4日の中医協総会 個別事項(3)

◎特定集中治療室管理料等に関する論点
・特定集中治療室用の「重症度、医療・看護必要度」について、重症患者に対する評価を充実させるため、A項目のうち「心電図」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」に対する評価の見直し等を図ってはどうか。また、評価の簡素化を図るため、特定集中治療室・ハイケアユニット用のB項目を一般病棟用の評価と揃えることとしてはどうか。
・特定集中治療室など高度急性期医療を行う特定入院料の病棟において、薬剤関連業務を実施するために治療室内に薬剤師を配置することを評価してはどうか。
・新生児特定集中治療室及び小児特定集中治療室において、算定上限を超えて入院している割合が高い一部の重症な患者について、算定可能な日数を一定程度延長してはどうか。
◎救急医療に関する論点
・高齢化等により増加する救急患者の受け入れ体制を確保するため、2次救急医療機関における夜間休日の救急患者の受け入れや、夜間休日における再診後の緊急入院を評価してはどうか。
・現在救急医療管理加算2で算定されている患者のうち、脳梗塞でt-PAを施行したものや、狭心症などで緊急に冠動脈の検査や治療が必要なものについては、「ケ緊急手術を必要とする状態」に準じて救急医療管理加算1として評価してはどうか。
◎小児慢性期医療に関する論点
・小児入院医療管理料について、在宅療養指導管理料や在宅療養指導管理材料加算など在宅医療の導入に係る項目は退院した月にも算定できることにしてはどうか。
・障害福祉サービスの1つである医療型短期入所サービスの利用中も、障害福祉サービス報酬で評価される範囲を超えた医療上の専門的な処置等は診療報酬上の評価を行なうよう、診療報酬と医療型短期入所サービスにかかる障害福祉サービス報酬の給付調整ルールを明確にしてはどうか。
・小児入院医療管理料について、小児慢性特定疾患等小児科による長期にわたる療養を要する疾病等については対象年齢の上限を延長することにしてはどうか。
◎精神疾患合併妊娠に関する論点
 精神疾患を合併した場合の妊娠・出産リスク等を考慮し、ハイリスク妊娠管理加算の対象に、精神疾患に罹患している患者を加えることとしてはどうか。

 

全日病ニュース2015年11月15日号 HTML版

 

 

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