全日病ニュース

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一般病棟とICU等のB項目同一化に診療側は反対を表明

【重症度、医療・看護必要度】

一般病棟とICU等のB項目同一化に診療側は反対を表明

【中医協総会・2016年度改定の議論】
猪口副会長精緻な実態調査を踏まえた2次救急評価の充実化を要望

◎医科・歯科連携による栄養管理に関する論点
 栄養サポートチームに歯科医師が配置されている場合を評価してはどうか。また、歯科医師が勤務していない医療機関で歯科医師との連携による栄養サポートの推進を図るため、院外の診療所等から歯科医師が訪問した上で院内スタッフと協同で栄養サポートを実施することを評価してはどうか。
◎栄養食事指導に関する論点
・医師の指示に基づき管理栄養士が行なう入院・外来・在宅患者訪問栄養食事指導の対象に、がん、摂食・嚥下困難及び低栄養の患者を含めてはどうか。
・入院と外来の栄養食事指導について、より長い時間の指導を評価してはどうか。
・在宅患者訪問栄養食事指導の指導内容については、調理実技だけでなく、在宅での栄養の改善に有効な実践的な指導を行う場合を含めることにしてはどうか。
【主な議論】
 この日事務局が提示した論点に対して、診療側の松本委員(日医常任理事)は「全体として概ね了解する」とした。
 その上で、歯科医師不在の医療機関における口腔管理に関して「医師の指示でもできるようにしてはどうか。簡単な口腔清拭ぐらいは歯科衛生士ができるようにしてもいい」と提起。これに事務局は難色を示し、歯科の専門委員も反対した。
 事務局は、論点で、すでに提起している一般病棟「重症度、医療・看護必要度」B項目の再編にICUとHCUのB項目も合わせることを提案。宮嵜課長は、その場合にICU等の基準について「例えば70%にするという議論もあるだろう」と発言、8割基準も含めて見直すことを示唆した。
 一般病棟とICU等の評価項目一本化に診療側中川委員(日医副会長)は疑問を表明。
 猪口委員(全日病副会長)も、「B項目に認知症患者の評価項目を加えるという見直しは重要なこと」と評価した上で、「ICU等で重篤な状態でB項目を測るということと、一般病棟に移った後に、そこからいかによくするかが重要になる中でのB項目とでは意味が違う。両者の評価方法を同じにするというのは適当ではない」と反対を表明した。
 これに対して、宮嵜課長は「評価項目は揃えた方がいいというのが今回の提案で、その使い方を同じにするかどうかは別の議論である」と指摘。
 「ICU等はAかつBの点数による評価であるが、一般病棟に関しては、例えばAのみの評価もあり得るとか、術後の患者の早期離床を評価するなどの見直し案を示している。ご指摘のように状態が改善されればB項目が取れなくなるという点も含めてどうしたらよいか、一般病棟の重症度、医療・看護必要度の中で提案している」と答弁した。
 万代委員は、ICU等のA項目見直しは「循環器系患者への影響が大きい。直ちには賛成しかねる」と慎重な姿勢を示した。ICU等への薬剤師配置に関しては「専任まで求めるべきではない」とした。
 さらに、救急医療管理加算に関して、「診療内容(対象患者)だけでなく、人の配置など検証調査で示された現場の実態を踏まえた幅の広い視点から、その評価のあり方が議論されるべき」と問題提起した。
 支払側は新任の幸野委員(健保連理事)が代表して意見陳述、事務局提案を概ね支持したが、いくつかに異論と注文を唱えた。まず、B項目の見直しに関しては「色々な選択肢がある。シミュレーションを踏まえて考えたい」と意見を保留。薬剤師のICU等への配置は「専任とすることを条件に賛成する」とした。
 2次救急における夜間休日の受け入れとその再診後緊急入院を評価する点に関しては「これによって2次救急の夜間休日受け入れが抜本的に改善されるかは疑問」とし、要件に受け入れ実績を加味するよう求めた。
 救急医療管理加算2の対象の重症患者を1に移す案には同意したが、「入院調査結果をみると2で受けている中に重症とは思われない患者がある」として帯状疱疹、突発性難聴、虫垂炎などをあげ、その検討を求めたが、支払側の反論に再考を認めた。
 小児入院医療管理料の対象年齢上限の延長に関しても「具体的な提案をみて考えたい」と保留。ハイリスク妊娠管理加算の対象に精神疾患を加える件には「精神科医が当該疾患であると判断した患者に限定すべき」と注文をつけた。
 栄養食事指導についてより長い時間の指導を評価する案にも疑問を表明、その範囲を限定すべきとした。
 救急医療管理加算に関連して、他の支払側委員は「将来的に加算2を廃止する考えはあるのか」と質問。
 宮嵜課長は「今は中身の見直しを提案している。なくす考えはない」と答弁した。
 この2次救急に関して、猪口委員は「高齢者の救急が増加する一方で2次救急機関が減少をたどっている中、夜間休日加算など十分な配慮をお願いしたい」と要望。
 さらに、救急医療管理加算2を取り上げ、事務局提出のDPCデータによると「その算定の理由(状態像)で“ゼロ回答”となった項目が2つある。これは3次救急医療機関に搬送されたり発症率が少ないことが原因だ。2次救急医療機関は多くの疾患に対応しており、手間のかかる患者も(前出データで拾っている状態像以外にも)沢山ある。もっと精緻な調査を行なって実態に十分即した対応を考慮していただきたい」と、重ねて事務局に要望した。

11月6日の中医協総会 個別事項(4)

◎長期処方に関する論点
 近年、処方日数が徐々に増加し、より長期の処方が増加する傾向にあり、何らかの制限を設けるべきとの意見もあるが、処方日数に関する現状やルールについてどう考えるか。また、新医薬品の処方日数制限について、対応できる医療機関が限られている場合に負担が大きいと指摘されているが、これらの対応についてどう考えるか。
◎高齢者への多剤処方に関する論点
 特に高齢者に、多種類の服薬に起因する有害事象を防止するとともに、服薬アドヒアランスを改善するために、医療機関において、又は医療機関と薬局が連携して、多種類の服薬を行っている患者の処方薬剤を減少させる取り組みを行い、処方薬剤数が減少した場合について評価することとしてはどうか。
◎残薬に関する論点
 医師の了解の下、より円滑に薬局で残薬確認と残薬に伴う日数調整を行うとともに、残薬の状況等について薬局から処方医に情報提供することで患者の指導に役立てることができるよう、処方箋様式に残薬調整の可否に係る医師の指示欄を設けることとしてはどうか。
◎分割調剤等に関する論点
・長期処方等に関して、患者が適正に服薬できるよう、長期保存が困難な場合や後発医薬品を初めて使用する場合以外であっても、処方時に、患者の同意の下で医師が指示した場合には、薬局で分割調剤をできるようにすることを検討してはどうか。
・新薬の処方日数制限について、疾患によっては投薬のための通院が負担となる場合もあるとの指摘を踏まえ、どのように考えるか。また、患者同意の下で医師の指示に基づいて分割調剤を行なう場合は、薬局の薬剤師が処方医と患者の服薬情報等を共有することを前提に新薬の処方日数制限を緩和することについてどのように考えるか。
◎後発医薬品使用の促進に関する論点
・新たな後発医薬品の数量シェア目標が平成29年央に70%と設定されていることから、薬局における後発医薬品調剤体制加算及び医療機関における後発医薬品使用体制加算の算定要件を見直すことにしてはどうか。
・併せて、入院における後発医薬品使用体制加算についても、後発医薬品の採用割合に関する指標を新指標に改めることにしてはどうか。
・また、特定の医療機関からの処方箋集中率が多い薬局の備蓄状況等を踏まえ、このような薬局の後発医薬品調剤体制加算をどのように考えるか。
・後発医薬品のさらなる促進を図るため、院内処方を実施している場合についても、後発医薬品の使用促進に関する取組を評価することにしてはどうか。
・処方せん料について、一般名処方の場合とそれ以外の場合の評価の差が広がるよう見直すとともに、一般名処方加算を算定する際には、1剤だけではなく、後発医薬品の存在する全ての医薬品について一般名処方を行なうことにしてはどうか。
・後発医薬品の銘柄を指定し変更不可として処方する場合には、処方せんに理由の記載を求めることについてどう考えるか。
【主な議論】
 事務局の論点に、診療側の中川委員は、①長期処方によって残薬は増える傾向にあり、それを認める考え方は誤っている、②分割調剤の拡大とリフィル制度の導入に反対する、③一般名処方加算の要件をすべての医薬品対象とすることに反対する、と意見表明した。
 長期処方に反対する日医の委員からは「(長期処方する)医師にその理由の記載を求めるべき」との提案が示された。
 これに対して、支払側は「処方日数は医師の判断に委ねるべきもので、制限する、緩和するという問題ではない。(適正な薬剤使用は)分割調剤やかかりつけ医の推進の中で解決していくべきもの」(幸野委員)との見解を表わした。
 同委員は「医療機関と薬局が連携して多剤投与を適正化する」考え方に違和感を表明。「方向としては賛成するが、この内容は薬剤服用歴管理指導料が求める本来業務で、これができていなければペナの対象となるべきもの。しかも、薬局と医療機関を二重に評価するのはおかしい」(幸野委員)として、提案内容の再考を求めた。
 さらに、「後発医薬品調剤体制加算がある中、後発品推進に取り組んでいない薬局には何らかの措置を考えるべき」と強硬な姿勢を示した。
 残薬に関して、日医の委員は「(処方日数を調整するなどして)適正化した場合は処方せん料で評価する」(松原委員)ことを提案。その一方で、処方せん様式に「残薬調整の可否に係る医師の指示欄」を設けることには反対した。
 事務局の論点を概ね支持する診療側(日医)と支払側の意見は対立したが、新薬の処方日数制限の緩和には、両者とも、例外を除いて反対した。

 

全日病ニュース2015年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 厚生労働省保険局医療課:H26.9.5

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2014/140909_4.pdf

    2014年9月5日 ... 公益社団法人 日本歯科医師会 御中. 公益社団法人 ... 一般社団法人 日本私立歯科
    大学協会 御中. 一般社団 ... 平成26年3月31日において急性. 期看護補助加算を届出
    していた. 病院. 一般病棟用の重症度,医療・看護. 必要度. 経過措置 ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年4月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140401.pdf

    交付事務に当たる医政局指導課は、新基金の事業計画を策定する上で、(1)官民への.
    公平な配分(都 ... として、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、病院団体等を例示
    した。関係者には個 ...... 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」に関して. は、血圧 ...

  • [3] 平成26年度診療報酬改定関連通知の一部訂正及び官報掲載事項の一 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2014/140424_2.pdf

    2014年4月23日 ... 公益社団法人 日本歯科医師会 御中. 公益社団法人 ..... 一般病棟用の重症度、医療・
    看護必要度に係る評価票 評価の手引き」に基づき行うこと。 ... 当該病棟で実施し
    なければならない処置・介助の実施者、又は医師の補助の実施者は、.

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