全日病ニュース

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厚労省 夜勤看護基準の要件緩和を提案。支払側は反発

厚労省
夜勤看護基準の要件緩和を提案。支払側は反発

夜勤時間超過減算の期間延期と特別入院基本料に代わる新たな入院料も提案

(4面から続く)
○定額負担を導入した場合の初診料や外来診療料
・定額負担を徴収する場合の初診料と外来診療料の評価、また、現行の紹介率・逆紹介率が低い医療機関における減点制については、現状を維持しつつ、今後、定額負担の導入による外来の機能分化の状況等を踏まえ検討してはどうか。

【主な議論】
 この日は14年度改定の結果検証調査(15年度実施)の3項目(胃瘻の造設等実施状況、リハビリテーション、明細書無料発行の実施状況)について速報が報告された。
 この調査結果速報に、「維持期リハの要介護被保険者のうち標準的算定日数を超えた期間別の外来患者数」があり、回答した201病院で脳血管疾患等リハビリテーション料(廃用症候群以外)を算定している患者は2,441人に達していることが出ている。
 「介護保険のリハへの移行が困難と見込まれる理由」という問に対する病院側の回答には、「患者に医療から介護へ移行することの理的抵抗感が大きいから」「介護保険のリハでは医学的に必要なリハが提供できないと考えられるから」「通所リハではリハの質が不明であるから」「介護保険のリハでは患者の医学的リスクに対応できないから」など、医療と介護の連携がうまくいっていない現実を反映した理由があげられている。
 猪口委員は、この事実を取り上げ、「多くの患者が期間を超えてリハビリテーションを受けている。その理由も具体的にあげられている。こうした現状をみると、介護保険への移行は困難と考えざるを得ない。現行制度の継続をお願いしたい」と発言、経過措置として続いてきている「維持期リハ(13単位)」を、さらに継続するよう求めた。
 この発言に松原委員も賛同した。
 結果検証調査に関しては、平川委員も胃瘻造設について取り上げ、「造設が減っていない。しっかりと原因を究明していくべきだ」と発言した。
 外来の議論としては、診療側の松本委員(日医常任理事)が、「平成18年改定で病診の再診料が同一にされた。これを別々に戻すことも1つの選択肢ではないか」と論じた。さらに、現行の紹介状なし大病院外来受診時の選定療養について、「我々は7剤投与の減算規定を問題視している」と述べた。
 新たに提起されている選定療養について、宮嵜医療課長は、「その額としては、平成25年度厚労科研の調査研究によると、5,000円以上の定額負担を設定することで、軽症の場合に当該病院の受診を控える可能性があることが示唆される」とした。
 松原委員は、「(現行の選定療養では)特別料金を再診料で徴収できている医療機関が少ない」ことから「これがきちんととれるような仕組みとすべきだ」と主張。
 一方、中川委員は地域包括診療料や地域包括診療加算の届出医療機関が伸び悩んでいる現実を指摘し、「あまりにも要件が厳し過ぎる。緩和への道筋をつけてほしい」と要望した。
 診療側の万代委員(日病常任理事)も、「とくに病院の要件が厳し過ぎる。救急医療の指定まで必要とは思えない。
 これを改善して、加算ともども主治医機能が発揮できる環境を整えるべきではないか」と論じた。
 幸野委員は、まず、再診料を基に戻すことに強い反対を表明。選定療養については、①大病院の範囲は提案どおりでよい、②500床については一般病床でよい、③金額は5,000円が妥当、④再診料の定額は高めの設定がよい、など具体的な考えを明らかにした。

11月20日の中医協総会 入院医療(5)

 この日は支払・診療各側から2015年実調結果に対する見解が表明された。
 損益差額が-1.7%から-3.1%へと一般病院の赤字幅がさらに拡大した実調結果に対して、支払側は「医療法人と個人病院は黒字を維持している」「療養病床60%以上の病院は安定して黒字を確保している」など、一般病院における収益の状態は一様ではないと主張。
 一方、診療側は、一般病院は「すべての病床規模別で連続赤字」を記録、「特に、大病院で赤字が拡大」していることを指摘し、実質マイナスの前改定の影響の大きさを訴えた。

11月25日の中医協総会 入院医療(6)

◎身体疾患で入院する認知症患者のケアに関する論点
 身体疾患で入院する認知症患者に対する対応とケアの質の向上を図るため、病棟における認知症症状の悪化予防・身体拘束廃止や早期からの退院支援などの取組や、多職種によるチームがこうした取組を支援することの評価を設けてはどうか。
◎地域加算の見直しに係る論点
・級地ごとの差を広げる方向で国家公務員の地域手当が見直されたが、診療報酬の地域加算も同様に見直すことについてどう考えるか。級地ごとの差を拡大する場合に、財政中立的に実施する観点から入院基本料の水準を調整することについてどう考えるか。
◎看護職員の夜勤に関する論点
・夜勤に関する診療報酬の基準や評価は経営を揺るがすことではなく、超過の予防や改善を図ることが目的。このことや夜勤従事者確保の観点を含め、そのあり方をどう考えるか。
・月平均夜勤時間数を入院基本料の要件とする現行の考え方は維持してはどうか。
・その上で、
①子育てや家族の介護を担う看護職員を含め、より多くの看護職員で夜勤体制を支えられるよう、月平均夜勤時間計算の対象を一定程度拡大するなど、計算方法を見直してどうか。
②月平均夜勤時間超過減算の算定に至っても3ヵ月間で職員を確保することが難しいことから、入院基本料に応じた看護配置を満たすことを前提とし、勤務環境の改善等一定の取組を要件とした上で減算期間を延長するとともに、当該期間経過後に経営を維持しつつ早期の回復を促すよう、超過減算よりも低い入院料を設定してはどうか。
◎医療資源の少ない地域に配慮した評価に関する課題と論点
・対象地域に関する現行の要件を見直した上で評価を継続してはどうか。
・対象地域に関する要件について、①患者流出率の要件を緩和し、医療従事者が少ないこと自体を要件としてはどうか、②一部が離島となっている2次医療圏も対象地域に加えてはどうか。なお、見直しの対象となる地域で現在当該評価を届け出ている医療機関には一定の配慮を行なうことにしてはどうか。
・当該評価に係る要件は10対1を算定している医療機関も対象としてはどうか。
【主な議論】
 地域加算の見直しに関して、宮嵜医療課長は委員からの質問に、「財源の枠を変えることなく、ただし、級地間の差は拡げるという方向の見直しである」とあらためて説明した。
 これに対して、猪口委員は「介護保険における地域区分による加算は3%~18%もの範囲で実施されているが、診療報酬に関しては0.5%程度しかない。
 しかし、都会と地方とのコストの差はきわめて大きい。よく実態を踏まえて見直してほしい」と要望した。
 事務局は、月平均夜勤時間の計算対象に、現在は計算から外されている月16時間未満の夜勤を加えることなどを示唆。月平均夜勤時間超過減算に関しても、その期間の延長と期間経過後に看護職員が足りない場合に特別入院基本料となるところを、減算と特別入院基本料の間に新たな入院料を設けて“救済”するなどの緩和策を提案した。
 この日の議論は、主に「看護職員の夜勤に関する論点」に集中した。
 支払側は、連合の委員を中心に、この規制緩和策に強く反対した。「夜勤計算の見直しで短時間夜勤の看護師は雇用機会を増やす反面、それ以外の看護師により多くの夜勤指示が出ないとも限らない」と発言するなど、この見直しが看護師の既得権喪失につながる可能性を懸念する立場からの反対意見が相次いだ。
 猪口委員は、まず、「はたして2人夜勤で安全なのか。拘束禁止の下の認知症患者、緊急入院など、2人ではとても足りない。しかし、月平均夜勤72時間以内という規定が増員を困難にしている」と論じ、安全と質の面から病棟の夜勤看護職員を増やす必要と、それに対して現行規定がその実現を妨げている実態を明らかにした。
 その上で、看護師の数と労働時間等を全国一律に、あるいは病院の類型・規模や機能を無視して規制する現在のやり方をやめ、「患者の状態など院内の状況をみて各病院が判断していくようにしていくべきだ」と論じ、さらに、「看護師不足の中、看護師に厳しい労働条件を押し付ける病院には看護師が集まらない」と、あるいは、「夜勤時間の少ない人がカウントされれば、その分多目の人の負担は減るのではないか」などと述べ、支払側の懸念は杞憂にすぎないと訴えた。
 中川委員も「ワークライフバランスからみても、それぞれの状況にあった自由で柔軟な働き方を認めるべきではないか」と述べ、支払側に理解を求めた。
 宮嵜医療課長は「看護師夜勤に関する(規制の)原則は変えずに、どう現場の要望に応えていくかだ。ここでは、とりあえず16時間以下の看護職員が計算に入っていない点をどうするかと提案させていただいた。しかし、こうしたことによって一部職員の負担が増えたり、人員節約の手段に使われると問題だ。それをさせないようにしつつ、計算の対象に入れてはいかがということだ」と、提案の趣旨をあらためて説明した。
 一方で、猪口委員は昼間に少しでも勤務した看護職員は夜勤専従として認められないことを指摘し、「その点を見直し、全体に柔軟な運用ルールとするよう検討をお願いしたい」と、新たな論点を示した。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年11月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/141101.pdf

    2015年1月9日 ... 10月22日の介護給付費分科会に、事務局(厚労省老健局老人保健課)は、2015年度.
    介護報酬改定で病院・ ... 者の地域におけるリハビリテーションの. 新たな在り方検討会」
    で、 ... 定額負担の額をどうするか。、(3)定額. 負担を求めない(求める)患者・ケース.
    はどういうものか、(4)「療養の給付の. 費用の額」と定額負担との ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年4月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/150415.pdf

    2015年4月15日 ... 厚生労働省は3月末にかけて2015年度からの介護報酬に関する老人保健課長通知お.
    よび同課発の事務 .... 中医協は、同法案成立後に、「定額負担. の導入」を踏まえた .... b
    入院中のリハビリテーションに係るマネジメント. については平成21 ...

  • [3] 第6章 診療報酬体系・介護報酬体系:「病院のあり方に関する報告書 ...

    http://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/06.html

    しかし、利用者の増加、保険料の調整等の多くの問題を抱え、居住費・食費の自己負担
    増、介護療養病床の廃止問題等、短期間に ... しかし、一般病床には、出来高払いが
    多く残っており、また一律報酬+出来高(亜急性入院、回復期リハビリテーション等)の
    ような方式 ... 急性期後のリハビリテーション、その他引き続き入院を対象とする亜急性
    期・回復期病棟の診療報酬としては、状態別分類による包括払い方式(1日定額)が
    望ましい。

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