全日病ニュース

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財務省「転換命令等民間に対する都道府県権限強化」を、厚労省「しばらく様子をみたい」

財務省「転換命令等民間に対する都道府県権限強化」を、厚労省「しばらく様子をみたい」

【社会保障WG】
「必要病床数達成へ2020年に中間目標を設定」との財務省の求めを厚労省が否定

経済・財政一体改革推進委員会社会保障WG「社会保障分野の工程表策定作業に向けた関係省の意見」から
*財務省の意見は10月29日、厚労省の施策説明と見解は11月16日時点。 1面記事を参照。

(1)医療・介護提供体制の適正化
①地域医療構想による医療の「見える化」を踏まえた病床の機能分化・連携の推進
【財務省の意見】
・病床機能報告制度について、遅くとも2016年10月に用いることができるよう、地域医療構想と整合的な定量的基準を策定。
・16年度末までに全都道府県で地域医療構想を策定。
・2025年段階の医療機能別病床数の達成、20年時点の中間目標の設定。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
・病床機能報告制度の定量的基準は、現在、検討を進めている。
・地域医療構想の進捗管理は、算定基準のない中間目標によって行なうより、2025年における医療機能別の必要病床数に対する都道府県ごとの進捗率によって行なうことが適当。
②慢性期の医療・介護ニーズに対応する提供体制の制度的な見直し
【財務省の意見】
・療養病床の地域差是正に向けた診療報酬上の対応(医療区分2・3の要件厳格化、医療区分1の配置基準緩和・報酬引下げ)。16年度改定で対応。
・介護療養病床は17年度までに廃止しつつ、厚労省検討会の結論等も踏まえ、効率的な受け皿への転換を含め、慢性期に対応した効率的サービス提供体制を構築。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
 16年度改定に向けて、中医協で、慢性期の患者が必要とする医療密度のよりきめ細やかな評価等について検討。
③医療・介護を通じた居住に係る費用負担の公平化
【財務省の意見】
・難病患者や小児慢性特定疾患患者等を除く全病床で居住費の患者負担化。
・(居住費負担の医療区分2・3への拡大)速やかに関係審議会等で検討、16年末までのできる限り早い時期に結論を得て、速やかに実施。
・(一般病床等への拡大)速やかに関係審議会等で検討、16年末までのできる限り早い時期に結論を得て、遅くとも17年通常国会に所要の法案を提出。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
・医療区分2・3は医療の必要性が高く、居住費負担を求めることには慎重な検討が必要。
・一般病床等への拡大については次のような課題に留意し、慎重な検討が必要。
a. 入院患者の負担増について、国民の理解を得ることができるか。
b. 入院は治療する場で「住まい」としての機能はないことから、居住費の負担を求めることができるか。
⑤データに基づき外来医療費の地域差を分析し、地域差を是正
⑥医療費水準等の目標を設定する医療費適正化計画を各都道府県が策定、都道府県別の医療費の差の半減を目指す。国が15年度中に標準的算定方式を示す。

□関連施策の概要、検討・実施時期等(厚労省)*当説明は⑤⑥に共通

◎医療費適正化指標の検討
 医療費適正化基本方針見直しの前提として外来医療費の地域差の「見える化」を行なう。その上で、外来医療費適正化の指標について検討する。
◎医療費目標の検討
 入院医療費については地域医療構想が実現した場合の医療費の算定式を策定。外来医療費については、当該適正化目標が達成された場合の医療費適正化効果を織り込んだ医療費の算定式を策定。
◎検討の場・検討スケジュール
 専門調査会の「医療介護情報の分析・検討WG」で年内目途に大枠の方針を定める。その上で、年度内に医療費適正化基本方針を告示。
◎KPIに関する考え方
(外来医療費の適正化に係るKPI目標)
・対応する政策手段の有無も踏まえ、地域差の減少が可能な指標をKPIとして設定(具体的には専門調査会WG等の議論を踏まえて検討)。
・例えば、特定健診・保健指導の実施率、後発医薬品の使用状況、重症化予防の取組状況、重複・多剤投与の状況等を指標することが考えられる。
・各指標は本年度中に検討、新たな医療費適正化計画の中で毎年度の進捗管理を行なう。
(医療費適正化計画に関するKPI)
 地域医療構想を策定した都道府県は、医療費適正化計画を策定する観点からKPIを検討する。

【⑤に関する財務省の意見】
・外来医療費の地域差の要因等の分析、情報の公開、医療費適正化計画への反映等を通じた不合理な地域差の解消
・今年度中に分析を実施
・KPIのあり方(例)疾病別・年齢別の受療率、1件当たり日数、1日当たり点数等、後発医薬品の使用状況、重複投薬・多剤投与の状況等
【⑤の財務省意見に対する厚労省の見解】
 現在、疾病別・年齢別の受療率・1日当たり点数等について分析を行なっているところ。具体的な項目・数値は今後の専門調査会WGの分析を踏まえて設定。
【⑥に関する財務省の意見】
・16年度末までに全都道府県で医療費適正化計画を策定。標準的算定方式を踏まえた具体的目標の設定
・KPIのあり方 病床4機能別の医療費、後発医薬品の使用促進、重複・頻回受診/重複投薬の防止等の医療の提供に関する目標
【⑥の財務省意見に対する厚労省の見解】
・全都道府県における医療費適正化計画の16年度末までの策定については、各都道府県における地域医療構想の策定状況を踏まえる必要がある。
・医療費適正化計画に盛り込む項目・数値は専門調査会WGの分析を踏まえて設定。
⑨かかりつけ医普及に向けた診療報酬上の対応と外来時定額負担
【財務省の意見】
・地域包括診療料の普及に向けた必要な要件緩和等。
・かかりつけ医以外を外来受診した時に日常生活で通常負担できる少額の定額負担の導入
・診療報酬上の対応は16年度改定から見直し。
・受診時定額負担については、速やかに関係審議会等で検討を開始し、16年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、遅くとも29年通常国会に法案を提出。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
・16年度改定に向けて、前回改定で創設した地域包括診療料の影響等を踏まえ、中医協でかかりつけ医機能の更なる強化について検討。
・16年4月から紹介状なしの大病院受診に定額負担を導入。具体的な医療機関の範囲、金額、例外ケースについて中医協で検討。
・受診時定額負担については次のような課題に留意する必要がある。
a. 受診が多い高齢者を中心に患者負担が増えることに国民の理解が得られるか。
b.「負担能力に応じた負担」という考え方に反するという批判がなされるおそれ。
c. 過度の受診抑制を招くおそれ。
d. 給付割合は「将来にわたり100分の70を維持する」という法律の規定との整合性。
⑪都道府県の行う病床再編や地域差是正の努力を支援する取組
(ii)高確法第14条診療報酬特例の活用の検討
【財務省の意見】
 「診療報酬の特例」の活用に係るGLの策定。速やかに検討を開始し、16年中にGLを取りまとめ
【財務省意見に対する厚労省の見解】
・見直し後の医療費適正化計画や地域医療構想等を踏まえる必要。また、地域によって同じ医療サービスに対する自己負担が異なることになり、患者がより安い地域の医療機関を受診するインセンティブが働くこと等の課題について整理が必要。
(iv)都道府県の体制・権限の整備の検討等
【財務省の意見】
・民間医療機関に対する転換命令等都道府県の権限の一層の強化。
・速やかに関係審議会等で検討を開始し、16年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、遅くとも17年通常国会に所要の法案を提出。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
・昨年成立した医療介護総合確保推進法に、自主的な取組だけでは分化・連携が進まない場合、都道府県が民間医療機関に、不足している医療機能への転換の要請、勧告、勧告に従わない場合の医療機関名の公表等を行なうことができる権限を設けたところ。
・追加的な措置については、これらの権限の行使状況を勘案した上で検討。
(4)負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化
24(iv)介護保険における利用者負担の在り方等
【財務省の意見】
・医療制度との均衡を踏まえて、65~74歳について原則2割に見直し、75歳以上の高齢者についても原則2割負担を導入。
・(65~74歳)28年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、遅くとも29年通常国会に所要の法案を提出。
・(75歳以上)できる限り早い時期に、具体化の方策を取りまとめ。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
 介護保険における利用者負担のあり方等については、本年8月から一定以上所得者の自己負担割合を2割に引き上げたところ。施行状況も踏まえつつ、今後のあり方を検討する。
(5)薬価、調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革
24 薬価改定のあり方
【財務省の意見】
・薬価改定のあり方について、18年度までの改定実績(17年中の薬価調査)も踏まえ、頻度を含めて検討。薬価改定の頻度は遅くとも30年央を目途に結論。
【財務省意見に対する厚労省の見解】
 薬価の毎年改定は、創薬意欲への影響、流通現場への影響、薬価調査・改定のコスト等の課題があり、慎重な検討が必要。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

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    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151015/news09.html

    2015年10月15日 ... 財務省「民間医療機関への転換命令等」知事権限拡大へ、医療法改正を提起|第857
    回/2015年10月15日号 HTML ... に向けた都道府県の体制・権限の整備」「慢性期
    医療・介護サービスに対応するサービス提供体制」等があげられている。 ... 地域医療
    構想について、厚労省は16年度半ばを策定のめどとし、次期医療費適正化計画も「
    最速で16年度から策定」としており、財務省の考えと基本的に一致している。

  • [2] 厚生労働省保険局医療課 掲示事項等告示の一部改正等について

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150706_7.pdf

    2015年6月30日 ... 日本慢性期医療協会. 国民健康保険中央会 ... 財務省主計局給与共済課` ^. 文部科学
    省高等 ... 厚生労働省保険局医療課長. 公 印 省 略. 掲示事項等告示の一部改正等
    について. 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上. の留意事項 ...

  • [3] 公知申請に係る事前評価が終了し、(厚生労働省保険局医療課:H27.3.20)

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150325_2.pdf

    2015年3月20日 ... 厚生労働省保険局医療課. ” 公知申請に係る事前評価が終了し、 医薬品医療機器等 ...
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