全日病ニュース

全日病ニュース

16年度に5疾病5事業と病床規制の方法など医療計画を見直し

16年度に5疾病5事業と病床規制の方法など医療計画を見直し

【全国厚生労働関係部局長会議】
改正医療法は9月に医療法人のガバナンス強化等、来4月に連携推進法人を施行

 2016年全国厚生労働関係部局長会議が1月19日に開かれ、厚生労働省は都道府県の担当者に2016年度施策の重点事項を説明した。

 厚生関係分科会において、武田政策統括官(社会保障担当)は2017年4月引き上げ予定の消費税に導入される軽減税率に触れ、「2.8 兆円程度とされる社会保障充実の財源は軽減税率の導入によっても変わることはない」と言明。
 16年度の社会保障施策については、「改正医療法の一部施行がある以外法的に大きな改革はない」としつつも、「主要な改革は経済・財政一体改革における18 年度までの集中改革期間に取り組まれる」とし、昨年末の改革工程表に盛り込まれた社会保障関連44 項目に対する都道府県の協力を求めた。
 さらに、アベノミクスの新・第3の矢として「安心につながる社会保障」が打ち出され、その中で、「介護施設、在宅サービス及びサービス付き高齢者向け住宅の整備量約12万人分を前倒し・上乗せし、約50万人分以上に拡大する」方針等が昨年11月に打ち出されたことを指摘。
 その一環として、介護人材対策を加速化させるために、15年度補正予算(1月20日に成立)で119 億円にのぼる地域医療介護総合確保基金(介護分)の積み増しが行なわれたと説明した。
 次に登壇した神田医政局長は、地域医療構想の策定を進める上で様々なデータから構想区域ごとの課題を的確に抽出することが重要と訴え、その拙速を戒めた。
 他方、都道府県にとまどいが見られる療養病床必要量の推定に関しては、療養病床の転換先となる新類型の詳細決定と当該医療機関の対応に数年かかると展望。それとは別に「療養病床の必要数を立てるという作業は進めてほしい」と要請した。
 医政局が配布した資料の「医療・介護制度見直しの今後の3年のスケジュール」(別掲)によると、16年度にすべての都道府県で策定が見込まれている構想には、17年度以降「進捗管理および適宜見直し」という工程が組込めれている。
 つまり、厚労省は、新類型の確定と当該医療機関における対応によって療養病床の必要量が変わっていくなど、構想が「適宜見直し」される可能性を認めているわけだ。
 医政局長は、また、16年度の地域医療介護総合確保基金に関して、全国知事会から居宅等事業と医療従事者の確保・養成事業への配分を増すよう求められているとし、「基金創設前までの国庫補助で実施してきた事業に十分配慮し、都道府県と十分な意見交換を行なって配分額を決定していく」意向を明らかにした。
 続いて梅田審議官は、昨年9月に成立した改正医療法について、(1) 医療法人のガバナンス強化と分割、社会医療法人認定要件の見直しは今年9月をめどに、(2) 地域医療連携推進法人の創設と医療法人の外部監査は17年4月をめどに、2段階で施行されると展望。
 また、医療事故調査制度に関して、「医療安全支援センターに遺族等から相談が寄せられた場合は必要に応じて医療機関に情報提供」することを、「医療機関から相談があった場合は医師会など支援団体の窓口を紹介」するなど、都道府県の協力を求めた。
 このほか、医政局の配布資料には、15年度末に「医療計画の見直し等に関する検討会」を設置し、18年度からの第7次医療計画に向けて、①5疾病5事業の見直し、②基準病床数と必要病床数の考え方、③地域医療構想ガイドライン見直しなどの検討を始める旨が明記された。

◆2016年全国厚生労働関係部局長会議における医療提供体制の説明から

□神田裕二医政局長

 都道府県には、地域医療構想の策定にあたっては、データから課題を抽出し、それを構想に掲載していただきたい。例えば、がん、脳卒中、心筋梗塞等の主な疾患に対応できる医療機関の分布や提供されている医療などを把握し、しっかり分析していただきたい。
 DPCデータを利用すると、診療科にほぼ対応しているMDC 別に集計することによって、各医療機関の有する医療機能を把握したり、地域で欠けている医療機能がないかを確認したりすることが可能となる。
 15年度内に20の県が策定を予定しているが、拙速にならないよう、構想区域ごとの課題をしっかりと抽出していただきたい。それが構想策定後の話し合いの出発点となるからだ。
 療養病床であるが、介護療養病床は17年度末で廃止となる。療養病床の暫定的な配置基準である25対1も原則17年度末で廃止となる。その後施設としてどういうものが考えられるか、「療養病床の在り方等に関する検討会」が施設類型の案をまとめた。
 これに関して、(都道府県から)よく、「療養病床の方針が決まっていないので、療養病床の数を決められない」という声を聞く。しかし、(新たな施設類型の)施設基準や人員配置を決めるのはこれからであり、報酬が決まるのは早くても18年度の同時改定である。
 そうしたことを言っていると、いつまでも地域医療構想が決められない。
 現実的には、具体的な施設基準や人員配置基準が決まり、各療養病床における患者の状況や施設建物の年数あるいは資金償還計画がどうであるか等を考えつつ、同時に報酬水準をみながら、後施設のどこに移っていくかの検討が進んでいく。
 したがって、構想の段階で、どの施設がどの類型に転換するかが決まらないと病床数が決められないという話ではない。それはそれとして、療養病床の必要数を立てるという作業を進めていただきたい。
 地域医療介護総合確保基金の医療分については、16 年度も「病床の機能分化・連携に関する事業」に重点的に配分していく。ただ、全国知事会からの要望もあり、居宅等事業と医療従事者の確保・養成事業は基金創設前までの国庫補助で実施してきた事業に十分配慮し、都道府県と十分な意見交換を行なって配分額を決定していきたい。
 ただし、都道府県の皆さんには、他の財源を使えないかということも検討していただきたい。15 年度まで使えた地域医療再生基金はもう使えなくなるので、その事業の一部が地域医療介護総合確保基金に入ってくる。したがって相当な需要増が見込まれるので、他の財源でできるものは、まずそれを検討していただきたい。
 マンパワーに関しては、骨太の方針にもとづいて、医師・看護職員等の医療従事者の需給を見通し、医療従事者の確保策、地域偏在対策等について検討する「医療従事者の需給に関する検討会」を設け、その下に、医師、看護職員、理学療法士・作業療法士ごとに分科会を設置した。このうち医師需給分科会がすでに始まっている。
 医師偏在については都道府県からも色々とご意見をいただいている。こうしてほしいということがあれば検討の参考にするので、私どもにお寄せいただきたい。
 次に専門医であるが、すでに12 月から研修プログラムの申請受付が始まっており、5月末までに研修プログラムの審査・認定が行なわれる。専門医機構は、申請が出た段階で全国的な偏在が明らかであるような場合は可能な限り修正するとしている。
 専門医機構は「全国の研修プログラムの偏在の是正、不当な圧力等に対する不服申立て等に係る方針」を公表しており、「わが施設群の連携施設にならないと医師を派遣しない」といった不当な圧力等を受けた場合には不服申立てができるようになっている。何かあればこの制度を活用していただきたい。
 各都道府県には、医師会、大学、病院団体等地域の関係者が専門医制度について協議する場を設け、本来的には研修基準を満たしているにもかかわらず、そうした病院が研修プログラムから取り残されることがないように、調整をしていただきたい。
 専門医機構に申請があがってきたものはこちらからも情報提供したいと考えているが、都道府県においても、どこにどういうプログラムが策定されているか、定員はどうかといった情報を把握し、問題があるようなケースは専門医機構に言っていただきたいが、非常に大きな問題がある場合は私どもにご意見をお寄せいただきたい。

◎梅田珠実審議官

 昨年9月に医療法一部改正法が成立・公布されている。この改正法は2段階に分けて施行される。
 第1段階は改正事項の内、医療法人のガバナンスの強化、分割、社会医療法人認定要件の見直しについては、9月をめどに施行する。第2段階としては、地域医療連携推進法人制度の創設と医療法人の外部監査を17年4月をめどに施行する予定で作業を進めている。
 このうち、地域医療構想を推進する1つの選択肢となる地域医療連携推進法人は新しい制度であり、都道府県には、今後新たに認定業務が発生するので、制度上の疑義等があれば厚生労働省に適宜ご相談いただきたい。
 昨年10月から医療事故調査制度が始まっている。
 この制度については、地域医療介護総合確保推進法(14年6月25日公布)の附則第2条にもとづいて、公布後2年以内に、①医師法第21条による届出と本制度による報告のあり方、②医療事故調査のあり方、③医療事故調査・支援センターのあり方について、見直しが行なわれる。
 各都道府県には、医療安全支援センターに遺族等から本制度の医療事故に関する相談が寄せられた場合は、相談者の了解を得た上で必要に応じて医療機関に情報提供いただくなど、適切に対応いただきたい。
 また、各都道府県には医師会などに支援団体の窓口が設けられている。医療機関から本制度に関する相談があった場合は窓口をご紹介いただきたい。
 医療用医薬品の価格妥結率は、14年度診療報酬改定で未妥結減算が導入された結果、昨年9月の妥結率は大幅に改善された。その一方で、単品単価取引は進展せず、特定卸、特定品目、特定機関のみ妥結する傾向が出てきたとの指摘もある。
 各都道府県には、医療用医薬品の流通改善の促進に関する提言の趣旨をご理解いただき、早期妥結・単品単価契約の進展など、所管の医療機関への指導と働きかけをお願いしたい。

 

全日病ニュース2016年2月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 療養病床特別部会と医療部会は「同格」?!|第869回/2016年4月15日 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160415/news03.html

    2016年4月15日 ... 第869回/2016年4月15日号 HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、
    全日本病院協会が毎月1日と15日に発行する機関紙です。 ... 社会保障審議会・医療
    部会(永井良三部会長)は4月6日、「療養病床の在り方等に関する検討会」や「専門医
    養成の在り方に関する専門 ... ただし医療法に関連する論点に関しては、医療部会に
    諮ると説明した。 ... 社会保障審議会医療部会 厚労省 第6次医療法改正の全容示す。
    医療法人制度 .... 病床の機能分化を担わせ、一体改革の2025年シナリオに ...

  • [2] 療養病床のあり方と在宅等の医療提供のあり方について議論|第851回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150715/news08.html

    2015年7月15日 ... 療養病床のあり方と在宅等の医療提供のあり方について議論|第851回/2015年7月
    15日号 HTML版。21世紀の医療を ... 年内に提言をまとめ、年明け後に、社会保障審議
    会の医療部会や介護保険部会等に提案をあげ、法改正を含む制度 ...

  • [3] 療養病床の新たな受け皿の議論始まる|第873回/2016年6月15日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160615/news03.html

    2016年6月15日 ... 厚生労働省の社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」は6月1日に初
    会合を開き、慢性期の医療・ ... 年の法改正で、老健施設等への転換を進めつつ介護
    療養病床を2011年度末で廃止することが決まったほか、医療法上の ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。