全日病ニュース

【外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会】

外国人介護福祉士の確保へ、ＥＰＡ枠の積極活用を検討

技能実習生の対象職種への追加に続き、介護人材として外国人の養成強化を企図

　「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」が1月21日に1年ぶりに再開され、「経済連携協定（EPA）の有効活用」をテーマに、その改善策の検討を開始した。
　この日は、EPAにもとづく介護福祉士候補者を受入れている2施設にヒアリングを実施するとともに、同制度の受入れ調整機関である国際厚生事業団からＥＰＡを積極活用するための改善策を聞いた。
　同検討会は、日本再興戦略（改訂2014）に、①外国人技能実習制度の対象職種に介護分野を追加する、②介護福祉士資格等を取得した外国人留学生の就労を可能とするための制度設計等を行なう方針が打ち出されたことを受け、(1)技能実習生の受入れのあり方、(2)国家資格取得者に在留資格が付与された場合の運用のあり方等、(3)EPAのさらなる活用方策を検討課題として、2014年10月30日に設置された。
　日本再興戦略（改訂2014）は現行技能実習制度について「2015年度中の新制度への移行を目指す」方針を掲げ、長時間労働や賃金未払いなどの問題点が指摘されてきた外国人技能実習制度の適正化・充実化を図るために、技能実習の監理団体を許可制とし、技能実習生に対する人権侵害行為に禁止規定や罰則を設けるなど新たな制度設計を定める「技能実習法案」が昨年の通常国会に提出された。
　この法案は昨年の通常国会では審議未了で継続審議となったものの、今国会で早期の成立が見込まれている。
　同検討会は、「技能実習法案」を見据えた昨年１月にとりまとめた「中間まとめ」で、外国人が介護を担うことなど様々な懸念に対応する具体的方策に向けた検討事項を整理した上で、「新たな技能実習制度の施行と同時に職種追加を行うことが適当」と結論づけた。
　また、「養成施設に留学し、介護福祉士資格を取得した者に在留資格を認めることが適当」とし、具体的な制度設計を進めるべきと提起した。
　したがって、新たな外国人技能実習制度における介護人材の育成は前出法案の成立後に、「中間まとめ」を踏まえつつ、施行に向けた政省令通知が出される見込みだ。
　技能実習制度への介護分野の追加は、産業競争力会議の産業競争力強化のための15年度重点施策にも位置づけられている。
　かくて、同検討会に残された課題は、18年度から始まって、現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヵ国から介護福祉士候補者を受け入れているEPAの積極活用をどう図るかという点になる。
　EPAを活用した介護福祉士候補者の受入数（入国者数）は2,106人（15年10月1日現在）。ベトナム人の受け入れが始まった14年度以降急増している。一方、11年度までに国家試験の受験資格を獲得したのは622人で、そのうち317名（51.0％）が合格している。
　国際厚生事業団の調査によると、職員、利用者・家族の約8割が介護福祉士候補者の感想を「良好」または「概ね良好」と回答、「あまり良くない」は1〜2％に過ぎないというように現場の評判は良好だ。
　再開した検討会で、国際厚生事業団は、「1施設当たりの年間受入れ人数を１名から認める（現在は２名以上）」「介護型有料老人ホームやサテライト型施設等での受入れを認める」などの方法で受け入れ人数の拡大を促すことを提案。
　国家試験合格率を高める策としては、「（上限4年に加えて一定条件で1年間の滞在延長が可能という）滞在期間延長の引き続きの実施」や「学習支援事業の強化」などの策を、資格取得者の定着を促進するためには、「呼び寄せた資格取得者の家族の就労制限を緩和する」「資格取得者は訪問介護等に従事できるようにする」「資格取得後の研修等の恒常的実施」などの措置が必要といった意見を述べた。
　国際厚生事業団の意見は現場の声を反映したもので、ヒアリングを受けた2施設も概ね同様の意見・要望を示した。
　検討会は次回会合で論点を整理し、15年度内をめどに報告をとりまとめる予定だ。