全日病ニュース

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厳しさの中に前向きな見直しも。日病協・四病協の要望も多く反映

報告平成28年度診療報酬改定について

厳しさの中に前向きな見直しも。日病協・四病協の要望も多く反映

次期同時改定までに病院はどう変わるか。気を引き締めて対応していきたい

副会長(中医協委員) 猪口雄

 平成28年度診療報酬改定は、2月10日の中医協で大臣諮問に対する答申が行われ、3月4日には今回の改定に関する告示・通知が発出された。
 昨年10月末に任命された中医協委員として、初の改定が一応終了したこととなる。今後は、全日病医療保険・診療報酬委員会委員としても、改定説明会やQ&Aの作成に力を注ぐつもりである。
 ここでは、改定により病院運営に大きな影響があると思われる項目について触れてみたい。

改定率について

 改定率は本体+0.49%、薬価等-1.33%となっているが、市場拡大再算定を入れると、今回の改定率は-1.03%であろう。
 ただし、その他にも、市場拡大再算定の特例、新規収載された後発医薬品の価格引き下げ、大型門前薬局の評価適正化、経腸栄養製品に係る給付適正化、湿布薬処方枚数制限等があり、それを加えると改定率のマイナス幅はさらに増えることになる。

重症度、医療・看護必要度

 最も関心の高かった重症度、医療・看護必要度は、A項目に無菌室治療室が追加され、救急搬送2日間が新設された。
 また、C項目として多くの手術、麻酔、内科的治療が加えられ、7対1看護の病棟は25%という高い基準が設定された。ただし、最後に200床未満は23%という中小病院への配慮が示された。
 この基準により、7対1看護病棟はどのように変化するのであろうか。内容から見て、外科系病棟が優位であることは間違いないところであろう。

病棟群制度

 日病協等が強く要望していた病床群単位の届出が認められた。ただし、一時的な規則であり、一応2年間ということで認められたものである。
 さらに、4病棟以上の病院は2病棟を変更させなければならず、1年後には元の7対1病床数の60%までしか認められない。
 これを病棟単位で考えると50~60%の間になるであろう。また、7対1と10対1の病棟間の転棟においてはどちらにいても10対1の請求となった。このような強い規制下では、この制度を利用する病院は限られるのではないだろうか。

地域包括ケア病棟

 地域包括ケア病棟は、手術、麻酔の出来高請求が認められた。本来、同病棟には在宅療養等の患者の急性増悪時への対応が求められており、この改定によりさらなる発展が期待できよう。
 また、7対1病棟からの転換にも利用される可能性も高い。

医療療養病棟2

 25対1看護の医療療養病棟2は、医療区分2または3の患者合計が5割以上となった。この基準はやや厳しいと思えるが、それを下回る場合は30対1看護でもよく、95/100の算定となる。平成30年3月までに方向性が決まる療養病床のあり方にも大きく関与するものではないだろうか。

障害者病棟・特殊疾患病棟

 これらの病棟における脳血管疾患の医療区分1 , 2 に対しては、療養病床の報酬を基本にした包括点数が設定された。ただし、看護基準を配慮した設定となっている。

入院中の他医療機関受診時の減算

 今回、大幅に減算幅が引き下げられた。この項目も日病協等から長年要望してきたものである。全廃とはいかなかったが、大きく前進したと考えられる。

医師事務作業補助体制加算

 この点数は基本的に増点となっている。さらに、療養病床、精神病床、特定機能病院にも算定が広がり、枠が大きくなった。

看護職員月平均夜勤時間の要件の見直し

 今回、月夜勤16時間以下の者は平均夜勤時間数に含まない、という規定から月夜勤16時間未満に変更となった。
 これにより、2交代の場合月1回の夜勤者も平均夜勤時間に含められるようになる。現場においては朗報であろう。

常勤配置の取り扱いの明確化

 施設基準上の常勤職員が産前・産後休業および育児・介護休業法に定められる休業を取得した場合、複数の非常勤職員の常勤換算方法が認められる。
 また、育児・介護休業法で定める期間は、週30時間以上の勤務で常勤扱いとなる。これも、現場で大いに利用されることを期待できる。

回復期リハ病棟におけるアウトカム評価

 全国的に病床数が増えている回復期リハ病棟にアウトカム評価が導入される。
 入棟時と退棟時のFIM得点の差から求めるものだが、除外規定も多く、どのような結果となるかは定かではない。今後、実態を十分調査する必要があろう。

廃用症候群リハビリテーション料

 廃用症候群が新たに疾患別リハに位置付けられた。また、算定期間は120日となった。高齢者を中心に廃用症候群の該当者は増加すると考えられ、リハ施設の運用において大きな影響があるのではないだろうか。

維持期リハビリテーションの介護保険への移行

 維持期リハについては平成30年3月までに介護保険に移行とされた。しかし、点数はかなり下がっており、実質的には患者数が減ると考えられる。また、移行を推進する支援・管理料が設定された。維持期リハについては、デイケア施設の増加に限界があるため、今後も議論が必要である。

夜間休日救急搬送医学管理料

この報酬は平日深夜が夜間に拡大され、点数も200点から600点となった。

救急医療管理加算

 加算1が800点から900点に上がり、加算2は400点から300点に引き下げられた。実態としては算定の80%が加算1であり、大幅な増点となる。
 この2つの救急関連の評価は、2次救急病院等においてかなりの増収が見込まれる。また、重症度、医療・看護必要度に救急搬送が入ったことも相まって、救急車受け入れをこれまで以上に重視する医療機関が増えるのではないだろうか。

退院支援加算

 従来の退院調整等の関連点数は退院支援加算として纏められている。制度としてかなり変更されるので、連携部門を中心として十分に対応する必要がある。

その他

 今回の改定項目は、ここに述べたもの以外にも多岐に及んでいる。在宅医療関連や調剤関連等も大きく変更された。
 発出された医療課の説明資料や2000頁もあろうかという告示・通知から、関連部署、医事課の職員等を中心に正確に対応することが求められる。また、今回も6か月の経過措置が数多く設けられており、この点に対しても注意が必要である。

総括

 平成28年改定を一言で表すと、「きめ細かく設計された改定」と言えるのではないだろうか。
 診療報酬本体のプラス改定を背景に、多くの項目で評価が上がっている。また、日病協、四病協の要望に対しても多くの項目に対応していただいた。
 ここに述べた、病棟群制度、地域包括ケア病棟、入院中の他医療機関受診、医師事務作業補助加算、夜勤72時間要件、専従職員配置、救急医療の評価、等は要望事項である。
 長年にわたり診療報酬改定要望の取り纏めを行ってきたが、このように対応していただいたことは初めてである。
 宮嵜課長をはじめとする医療課のみなさんには感謝する次第である。
 さて、このように成立した診療報酬改定であるが、この2年間で医療、特に病院はどのように変化するのだろうか。7対1病棟は減少するのだろうか。療養病床2はどのように変化するのだろうか。
 次の平成30年改定は医療・介護の同時改定であり、地域医療構想、医療計画を含んだ医療法改定も同時進行となる。その間に消費税増税も行われるであろう。気を引き締めて対応しなければならない。
 今回の報告では、全日病、四病協、日病協の診療報酬担当委員として、また中医協委員として、平成28年度診療報酬改定に関する感想を述べさせていただいた。会員の皆様の改定に関する質問等に対しては、全日病事務局にお問い合わせいただければ、診療報酬委員会として出来る限り対応する所存である。

 

全日病ニュース2016年3月15日号 HTML版

 

 

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    2016年3月1日 ... 中医協委員の猪口雄二副会長、「入院医療等の調査・評価分科会」委員の神野正博副
    会長、DPC評価分科会委員の美 ... や「重症度、医療・看護必要度」の項目にせん妄が
    入った点など、日病協や四病協が要望してきた点が「ある程度反映 ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年11月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/151115.pdf

    2015年11月15日 ... 全日本病院協会の猪口雄二副会長は10月30日付で中央社会保険医療協議会の2号
    側. (診療側) ... 全日病としては、西澤会長に続く2人目の、日病協推薦による中医協
    委員となった。 ..... 特定集中治療室用の「重症度、医療・看護必要度」に.

  • [3] 7対1「看護必要度」の患者割合は25%、200床未満は23%|第864回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160215/news01.html

    2016年2月15日 ... 全日病ニュース・紙面PDF(2016年2月15日号) PDFリンク ... 最優先事項となった一般
    病棟7対1入院基本料算定病棟の削減に向けて、一般病棟用「重症度、医療・看護必要
    」該当患者の割合 .... 中医協委員である全日病の猪口副会長は、「回復期リハ病棟へ
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