全日病ニュース

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診療報酬改定説明会を開催 全国から1,350名が参加

診療報酬改定説明会を開催 全国から1,350名が参加

西澤会長 2回連続のマイナス改定に危機感を表明

 全日病が主催する2016年度診療報酬改定説明会が3月14日に東京・新宿のベルサール新宿グランドで開かれ、全国の会員病院から1,350名が参加して厚生労働省の担当官から診療報酬改定の詳細な内容について説明を受けた。
 冒頭に挨拶した西澤寛俊会長は、「診療報酬本体はプラス0.49%となっているが、ネットではマイナス1.31%という厳しい改定だ」と述べ、2014年度改定のマイナス1.21%に続いて2回連続のマイナス改定となったことを指摘した上で、「前回の改定で病院経営が弱まっているところに再度のマイナス改定であり、影響は大きい」と危機感を表明した。
 西澤会長は、今回の改定について「2025年に向けて地域包括ケアシステムを推進するための改定である」と述べた上で、7対1入院基本料の削減をねらった「重症度、医療・看護必要度」の見直しや病棟群の導入、救急医療の見直しなど、今回改定の特徴的な項目をあげ、「我々からみて評価できる内容と評価できない内容が入り混じっている。今回の改定の意図するところをしっかり理解して、適切に対応してほしい」と呼びかけた。
 全日病は、会員病院から寄せられた質問に対し、医療保険・診療報酬委員会を中心に対応し、厚労省に問い合わせて迅速に情報提供していくこととしている。

●改定内容を詳細に説明

 厚労省保険局医療課の田村圭課長補佐が、休憩をはさみつつ2時間にわたって改定内容を詳細に説明した。はじめに改定の概要を説明し、続いて個別改定項目について、算定要件や留意点について説明した(要旨を4〜5面に掲載)。
 田村補佐は、入院医療の機能分化・強化に関して、2つの柱があるとし、「医療機能ごとの患者像に応じた評価」と「医療機能の強化のための評価」をあげた。「患者像に応じた評価」では、今回改定の焦点となった「重症度、医療・看護必要度」の見直しを行った。
 それとセットで重症患者を受け入れている10対1一般病棟の評価の充実を図り、「患者像に応じた評価を行っていく」と述べた。
 一方、「医療機能の強化」では、特定集中治療室等における薬剤師配置を例示。「薬剤師の配置は特定集中治療室の施設基準になかったが、薬剤師を配置して薬剤管理を充実させている特定集中治療室が多々みられた。このように医療の質を向上させるところは積極的に評価するべきと考えている」と述べた。
 続いて一般病棟入院基本料の評価の見直しについて説明した。
 急性期に密度の高い医療を必要とする状態が適切に評価されるように、「重症度、医療・看護必要度」の項目を見直し、新たにC項目(手術等の医学的状況)を加えた。
 これに伴い、7対1入院基本料の基準を見直し、「重症度、医療・看護必要度」を満たす患者の割合を15%から25%に引き上げる。あわせて、在宅復帰率について、退院先として有床診療所を加え、基準を75%以上から80%以上に引上げた。10対1入院基本料についても、重症患者の受け入れを評価するため、看護必要度加算の評価を充実させた。

●病棟群単位の届出認める

 7対1入院基本料から10対1入院基本料に変更する場合に限って、病棟群単位の届出が可能となる。2016年4月1日から2年間、7対1病棟と10対1病棟を病棟群単位で有することができる。
 病棟群単位の届出に当たって取扱いが示されている。4以上の病棟がある医療機関では、一つの入院基本料について少なくとも2病棟以上の届出を行う必要がある。また、2017年4月以降は7対1の病床数は全体の60%以下にすることが求められる。
 病棟群ごとの届出を行う場合は、それぞれの施設基準を満たす必要があるが、平均在院日数については、異なる病棟群に転棟しても、新入棟・新退棟患者として計上できない。
 地域包括ケアシステムを推進するため、退院支援の評価を充実させている。
 田村補佐は、「在宅復帰に当たってどういった診療を行うか、積極的に退院支援を評価していく観点から評価の充実を図った」と述べ、新設された退院支援加算について説明した。
 新設の退院支援加算1は、退院支援業務に専従する職員を病棟に配置することが求められる(2病棟に1名以上)。連携する医療機関等(20か所以上)の職員と定期的に面会を行う(年3回以上)ほか、介護支援専門員との連携実績を求めている。退院支援加算2は、従来の退院調整加算と同じ要件。

●外来の機能分化進める

 外来の機能分化・連携を進めるため、紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担を導入する(初診は5,000円、再診は2,500円)。あわせて、かかりつけ医の普及を図るため、地域包括診療料・加算の要件を緩和して算定しやすくするとともに、認知症地域包括診療料・加算を新設した。基本的なコンセプトは、従来の地域包括診療料・加算と同じだが、認知症と認知症以外の疾患を持っている患者が対象で、多剤投与に関する制限を設けている。

● 単一建物における人数に応じた評価に

 在宅医療についても大幅な見直しを行った。「患者の状態・居住場所等に応じた評価」を行うため、同一日に診療した人数にかかわらず、当該建物において医学管理(在総管・施設総管)を実施している人数に応じた評価に改めた。
 また、在宅医療を専門に行う医療機関に対する評価を新設した。在宅患者の割合が95%以上、要介護3以上の患者と重症患者をあわせて5割以上であることなどを施設基準としている。
 質の高いリハビリテーションを提供するため、回復期リハビリテーションにアウトカム評価を導入した。アウトカム評価が一定の水準に満たない場合は、6単位を超える部分について包括の扱いとなる。

●療養病棟に重症患者の受入れ求める

 療養病棟入院基本料2の施設基準を見直し、医療区分2と3の患者が5割以上とする要件を加え、重症患者の受け入れを求めることとした。ただし、医療区分2・3の患者割合、または看護職員の配置基準(25対1)のみを満たさない病棟については、看護職員配置30対1を満たしていれば、所定点数の95%で算定できる(2018年3月末まで)。
 救急医療の評価では、「緊急カテーテル治療・検査またはt-PA療法」を救急医療管理加算1の対象に含めることとし、加算1の点数を800点から900点に引上げる。加算2の点数は400点から300点に引下げる。

●後発医薬品の促進等盛り込む

 後発医薬品については、後発品の数量シェアを2017年半ばに70%以上とすることが政府目標となっていることをふまえ、診療報酬でも促進策をとった。
 院内処方を行う診療所の後発品使用体制に関する評価を新設したほか、病院、薬局の後発品使用体制に関する評価の基準を引上げた。また、すべての医薬品を一般名で処方した場合の評価を新設している。
 残薬を減らすため、6種類以上の薬剤を内服している患者について、薬剤を2種類以上減らした場合の評価を新設した(薬剤総合評価調整加算、薬剤総合評価調整管理料)。
 そのほか田村補佐は、2016年度から制度化される患者申出療養および費用対効果評価の仕組みについて説明。
 最後に新たな項目について4月1日から算定するためには、4月14日(木)までに厚生局に届出を行う必要があることを周知した。

 

全日病ニュース2016年4月1日号 HTML版

 

 

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    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160215/news01.html

    2016年2月15日 ... 2・3 面に改定内容の概要を掲載). 16 年度改定の焦眉の課題であった一般病棟用「
    重症度、医療・看護必要度」については、「手術等の医学的状況」に関する評価項目が
    導入されたが、当初案でM項目(M得点)とされていたのが、最終的にC ...

  • [2] 平成 28 年度診療報酬改定説明会(H28.3.14)質疑応答集について

    http://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/160408_1.pdf

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  • [3] 項目を見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき|第858 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151101/news09.html

    2015年11月1日 ... 【2016年度診療報酬改定入院医療の検討課題と見直しの方向性について】. 項目を
    見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき. 地域包括ケア病棟は手術等
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