全日病ニュース

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身体拘束ゼロに向けて

身体拘束ゼロに向けて報告書まとまる

拘束を避けるケアの見直しを提言

 全日病はこのほど、「身体拘束ゼロの実践に伴う課題に関する調査研究事業」の報告書を公表した。病院では、治療や安全上の理由から介護施設より多くの身体拘束が行われている傾向が浮かび上がった。報告書は、組織的・積極的な取り組みにより、「身体拘束を減らせる余地がある」として、拘束を避けるためのケアの見直しを呼びかけている。
 介護保険制度には身体拘束禁止規定がある。2001年に作成された「身体拘束ゼロへの手引き」は、身体拘束にあたる11の行為を例示するとともに、身体拘束が認められる3要件(①切迫性②非代替性③一時性)を示している。しかし、どんなケースが3要件を満たすのかを具体的に定義するのは難しい。身体拘束が虐待とみなされることもあれば、身体拘束しなかったことで事故が起き、責任を問われる可能性もある。
 このため調査では、身体拘束ゼロの達成状況や施設類型間の違い、身体拘束の低減に向けた取組みについて把握するため、2,020施設の病院や介護施設に調査票を送付。712施設から回答を得た(回収率35.2%)。
 「身体をひも等で縛る」や「ベッドの四方を柵や壁で囲む」など、身体拘束にあたる11行為のうち、1項目でも実施していると回答した一般病棟(7対1、10対1)は93.1%、「13対1、15対1」は94.7%だった。医療療養病棟は91.8%で、急性期と慢性期の病床で明確な差はみられなかった。
 介護老人保健施設は46.6%、介護老人福祉施設は33.3%、特定施設は32.5%、サービス付高齢者向け住宅は24.7%で、病院と比べ介護施設では身体拘束が少ない。介護療養型医療施設は85.0%で、病院と介護施設の中間だ。
 身体拘束と事故発生頻度の関係を調べると、「特段の傾向」はなかった。逆に、ミトン型の手袋等を着用させる身体拘束では、実施割合が高い施設ほど、チューブなどの「抜去」の発生件数が多い傾向がみられた。
 介護療養型医療施設では68.3%が「施設全体として身体拘束ゼロ」を目指しており、病院よりも割合が高い(7対1、10対1では25.4%)。報告書は調査結果をふまえて、医療保険適用病床では「身体拘束を減らせる余地がある」と指摘。対象者の状態やリスクを丁寧に評価し、拘束を避けるためのケアの見直しを行うことを提案している。

 

全日病ニュース2016年5月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第694回/2008年9月15日号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2008/080915.pdf

    第3次試案と大綱案など、 山積している施策の現状をまとめて報告した。 第3次試案と
    ...... 回の報告書と過去3年にわたる年報を. 公表して ... 病院入院中に同意なく身体を
    拘束さ. れたこと ... 許され、 「身体拘束ゼロへの手引 き」が ...... 像をとり まとめる予定だ

  • [2] 病院のあり方に関する報告書 (2002年版)

    http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/20021003.pdf

    2002年10月3日 ... 病院のあり方に関する報告書は、1998、2000 年に次いで本報告書が3度目の報告で
    ある。 医療に関する ... 本報告書は、その成果及び今後の方向性に. ついて内外 .....
    危険管理・危機管理に充分留意しても、リスクをゼロにすることはできない。従って、リス
    ...... ど、全国一律にまとめる事は難しい。今後、救急 ...... ⑤ 身体拘束の禁止:特別な
    理由を除き、身体拘束その他患者の行動を制限する行為を禁止す. ることが ...

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