全日病ニュース

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4月より全日病にて共通科目(315時間)のeラーニングによる講座提供を開始

【看護師特定行為研修】

4月より全日病にて共通科目(315時間)のeラーニングによる講座提供を開始

●2025年までに10万人を養成

全日本病院協会 副会長・看護師特定行為研修検討プロジェクト委員会委員長 神野正博

 すでに周知のように団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年に向かって、医療介護総合確保推進法が2014年6月に19本の法改正を伴うプログラム法として成立し、その施行が順次行われてきている。その中では、地域医療構想策定、医療介護の連携、チーム医療や医療事故調査など、さらには基金の利用までを謳っている。特定行為に係る看護師の研修制度も、チーム医療関連の法改正の一環として保健師助産師看護師法(保助看法)が改正され、2015年10月1日から施行されている。
 その目的を国は、
○2025年に向けて、さらなる在宅医療等の推進を図っていくためには、個別に熟練した看護師のみでは足りず、医師または歯科医師の判断を待たずに、手順書により、 一定の診療の補助(例えば、脱水時の点滴(脱水の程度の判断と輸液による補正)など)を行う看護師を養成し、確保していく必要がある。
○このため、その行為を特定し、手順書によりそれを実施する場合の研修制度を創設し、その内容を標準化することにより、今後の在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成していくことが、本制度創設の目的である。
 と謳い、十分な研修と安全体制のもと、医師による包括的指示によって、あらかじめ各医療機関で定めた手順書により、あくまでも診療の補助行為である特定行為を実施できる看護師を2025年までに10万人以上養成するとしている。
 このような看護師のニーズがどこにあるのか考えていただきたい。医師が十分に配置されており、直接的な指示が発せられる集中治療室や救命救急センターというよりはむしろ、医師配置が比較的薄い慢性期病床、老人保健施設ほかの介護保健施設、在宅医療の現場ではないだろうか。そういった意味で、われわれ全日病会員病院の潜在的なニーズは大きいと考える。
 しかし、本制度は、315時間の共通科目研修に加えて、認められた38行為21区分の区分ごとに15 ~ 72時間の講義、演習、実習が必要とされている。
 従来、日本看護協会が認定する認定看護師、専門看護師研修は、大都市の研修センターや大学院での長期間にわたる受講が必要であった。本制度においても、これら膨大な時間を現場から離れ、受講、研修させるならば、到底10万人の養成は不可能であり、かつ人的資源に乏しい中小病院・施設、訪問看護ステーション等からの出務、受講は無理であると考えざるを得ない。
 そこで、全日病では、S-QUE研究会と共同で、共通科目研修315時間のほとんどをインターネットで学べる全日病S-QUE eラーニング看護師特定行為研修をこの4月から開講した。(参照:http://s-que.net/specific-action/index.html )各病院は指定研修機関として名乗り出ていただきたい。あるいは各病院が連携と協働のもとで協力施設になることを条件に、地域の基幹病院が指定研修機関として名乗り出るように働きかけていただきたい。

●指定研修病院が単位認定

 このeラーニングによる看護師特定行為研修共通科目の履修は全日病S-QUEで管理するものの、単位認定は、全日病ではなく各指定研修機関で行う。そして、特定行為区分別の講義と実習は、指定研修機関ないしは協力施設となった自らが勤務する施設で、自らのニーズに応じた実習とすべきである。これによって、勤務をしながらの研修終了を目指すことが可能となる。
 すなわち、全日病のeラーニングプログラムは各指定研修機関が使える教材であると理解していただきたい。加えて、このeラーニングプログラムは、病院単位での加入とし、かつ他の研修プログラムに比べて、きわめて安い価格帯に設定した。また、1病院当たり何人が受講しても同一価格である。看護師の生涯教育の一環として利用するのも手である。ここで履修し、将来、その看護師が特定行為研修を受講する意思が出た場合も、あらかじめ取得した単位に関して指定研修機関が単位認定することも可能となる。
 全日病では、このeラーニングに加えて、2016年度も昨年度に引き続き、全国で指導者研修を実施する。さらに、今年度は、指定機関申請に係る支援もスタートしたく思っている。

●特定行為研修制度の概要

 以下に箇条書きでポイントを整理する。
 「特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない」は、努力規定ではなく、義務である。
①特定行為および特定行為区分
 特定行為は、診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力および判断力並びに高度かつ専門的な知識および技能が特に必要とされるものとして厚生労働大臣が定めるもの<38行為>
 特定行為区分は、特定行為の区分であって、厚生労働大臣が定めるもの<21区分>
②手順書
 手順書は、医師または歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として作成する文書または電磁的記録であって、次に掲げる事項が定められているものであること。
(1 )看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲
(2)診療の補助の内容
(3 )当該手順書に係る特定行為の対象となる患者
(4 )特定行為を行うときに確認すべき事項
(5 )医療の安全を確保するために医師または歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制
(6 )特定行為を行った後の医師または歯科医師に対する報告の方法
* 厚生労働省平成27年度看護職員確保対策特別事業「特定行為に係る手順書例集作成事業」として全日病が作成した『特定行為に係る手順書例集』は、平成28年2月より以下のホームページで公開されている。
厚生労働省ホームページh t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p /file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000112464.pdf
全日病ホームページhttp://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/160205_1.pdf?160205
③指定研修機関の指定の基準
 指定研修機関は、1または2以上の特定行為区分に係る特定行為研修を行う学校、病院その他の者であって、厚生労働大臣が指定するものをいう。
(指定の基準)
(1 )特定行為研修の内容が適切であること。
(2 )特定行為研修の実施に関し必要な施設および設備を利用することができること。
(3 )特定行為研修の責任者を適切に配置していること。
(4 )適切な指導体制を確保していること。
(5 )医療に関する安全管理のための体制を確保していること。
(6 )実習を行うに当たり患者に対する説明の手順を記載した文書を作成していること。
(7 )特定行為研修管理委員会を設置していること。
④特定行為研修
(基本理念)
 特定行為研修は、チーム医療のキーパーソンである看護師が、患者・国民や、医師・歯科医師その他の医療スタッフから期待される役割を十分に担うため、医療安全に配慮し、在宅を含む医療現場において、高度な臨床実践能力を発揮できるよう、自己研鑽を継続する基盤を構築するものでなければならない。
(受講者)
 特定行為研修の受講者としては、概ね3~5年以上の実務経験を有する看護師が想定されること。ただし、これは、3~5年以上の実務経験を有しない看護師の特定行為研修の受講を認めないこととするものではないこと。
⑤特定行為研修管理委員会
(役割)
・ 特定行為区分ごとの特定行為研修計画の作成
・ 2以上の特定行為区分について特定行為研修を行う場合の特定行為研修計画の相互間の調整
・受講者の履修状況の管理・修了の際の評価等
・特定行為研修の実施の統括管理
(構成員)
(1 )特定行為研修に関する事務を処理する責任者またはこれに準ずる者
(2 )当該特定行為研修管理委員会が管理する全ての特定行為研修に係る特定行為研修の責任者
(3 )医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療関係者

 

全日病ニュース2016年5月15日号 HTML版

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] e ラーニング提供開始について(ご案内)

    http://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/160316_1.pdf

    2016年3月15日 ... 委員長 神野 正博. 「特定行為に係る看護師の研修」e ラーニング提供開始について(ご
    案内). 平素は当協会の活動 ... された手順書に則って特定行為を実施できる看護師の
    10 万人養成を目指していま. す。 当協会では、医師配置が比較的 ...

  • [2] 厚労省案 「共通科目」の履修に414時間。異論相次ぐ|第838回/2014 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20141215/news05.html

    2014年12月15日 ... 包括的指示の下で手順書によって特定行為を実施できる看護師の研修制度について
    具体案をまとめつつある看護師 ... 構成員である神野正博全日病副会長は、eラーニング
    を利用して就業を続けながら研修を受ける看護師にかかる負担が ...

  • [3] 旺盛な活動を反映、多彩な委員会企画|第856回/2015年10月1日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151001/news07.html

    2015年10月1日 ... このセッションで、神野正博副会長は、中医協傘下の「入院医療等の調査・評価分科会」
    が16年度診療報酬改定に向けた ... 会の開催、②手順書の作成と公開、③指定研修
    機関に対する支援(共通科目のeラーニング化)を手がけていることを ...

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