全日病ニュース

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高額薬剤への対応でガイドラインを策定

高額薬剤への対応でガイドラインを策定

高額薬剤への対応でガイドラインを策定

【中医協】
医療保険上の取扱いを検討

 中医協(田辺国昭会長)は7月27日の総会で、高額薬剤が医療保険財政に大きな影響を与えつつあることを踏まえ、その対応方針を了承した。高額薬剤の最適な使用方法を定めたガイドラインを作成するとともに、高額薬剤の医療保険制度上の取扱いを検討する。薬価改定後に効能・効果が追加され、大幅に売上げが増えたオプジーボの薬価見直しも議論する。これらについて年内に一定の結論を得るとともに、2018年度診療報酬改定に向け抜本的な改革の議論も始める。

 高額薬剤への対応については、中医協の診療側と支払側が一致して、厚生労働省に見直しの方針を示すことを求めていた。がん免疫療法の抗がん剤治療薬のオプジーボ(小野薬品工業)の効能・効果に肺がんが追加され、肺がん患者の多くが使い始めると、年間1兆7千億円の医療費がかかることを示す資料が財務省の財政制度等審議会のヒアリングで提出されるなど、高額薬剤が医療保険財政に与える影響に懸念が高まっている。
 このような状況で、2018年度の診療報酬改定を待たずに、早急に対応する必要性が出てきた。
 今回、厚労省が示した対応方針は、年内に結論を得るものとして、①作用機序が新しい医薬品の最適な使用を進めるためのガイドラインを策定し、その医療保険制度上の取扱いを検討②効能・効果の追加で売上げが大幅に増えたにもかかわらず、2016年度薬価改定に間に合わなかったオプジーボの特例的な対応─の2つがある。
 最適使用ガイドラインの策定は、保険局との連携のもと、医薬・生活衛生局が担当する。ガイドラインは厚労省の依頼により、関係学会とPMDA(医薬品医療機器総合機構)が科学的根拠に基づき策定する。内容には、「対象医薬品の使用が最適だと考えられる患者の選択基準」と「対象医薬品を適切に使用できる医師・医療機関等の要件」を盛り込む。試行的に「抗PD −1抗体製剤オプジーボとその類薬」、「抗PCSK 9抗体製剤レパーサとその類薬」を対象にした。
 ガイドラインの拘束力をめぐって、診療側と支払側で意見の違いが出た。
 支払側はガイドラインに反する使用の場合、審査・支払機関が査定できる対応を求めた。一方、診療側の委員からは最適な使用を促す一方で、「医師の裁量権」が確保されるべきとした。特に、高脂血症治療薬のレパーサ(アステラス製薬)では、保険適用に関して、「家族性コレステロール血症」に限定する仕組みの是非が今後の検討課題となる。
 厚労省はガイドラインの内容を留意事項通知に記載することで、一定の拘束力をもたせる考えを示した。

オプジーボの薬価を見直し

 オプジーボの特例的な対応については、2018年度診療報酬改定を待たずに薬価を見直す「期中改定」の検討も含んでいるとの見解を厚労省が示した。
 オプジーボは昨年9月に、「根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果に保険適用された。ピーク時の販売金額は31億円、対象患者は470人。薬価は「100mg 10mL」1瓶で72万9,849円とされた。
 しかし昨年12月、効能・効果に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」が追加された。これにより、オプジーボの年間販売額は1,260億円、対象患者は2万人弱になったとされる。診療側の委員からは、「悪性黒色腫の効能・効果で開発費用が回収できる金額で薬価が決められた。効能・効果が追加され、販売額が増えれば、薬価を下げることは可能」との指摘があった。
 一方、薬価を2018年度を待たずに下げる「期中改定」については、慎重な意見が出た。薬価改定と医科本体の診療報酬改定が切り離されれば、薬価改定財源を本体に充当する考えは成り立たなくなるためだ。
 過去数回の改定で薬価と本体の改定財源の関係が不明確になっていることも懸念を生んでいる。鈴木康裕保険局長はこれに関し、「医療機関の収入の一定割合が薬剤費であることを考えれば、薬価引下げは医療機関の経営に影響を与えると認識している」と述べた。
 2018年度診療報酬改定に向けては、さらに薬価のあり方を抜本的に見直す議論を薬価専門部会で行うとしている。
 一方、改定時には2016年度改定で導入した「年間販売額が極めて大きい品目に対応する市場拡大再算定の特例の実施」や費用対効果評価の仕組みの試行的な実施がある。これらの仕組みにより、オプジーボをはじめ要件を満たす高額薬剤の薬価は下がる。これらを含めて、製薬企業の開発意欲を失わせないことにも留意しつつ、国民皆保険を維持するために、高額薬剤への対応を図ることになる。
 なお、同日の総会では、費用対効果評価の対象品目として、医療機器のBrio Dual ニューロスティミュレータ(セント・ジュード・メディカル)の追加が承認された。パーキンソン病などの振戦等を効能とする埋め込み型神経刺激装置であるアクティバRC(日本メドトロニック)の類似品で、保険償還価格は207万円となっている。精査の結果、当該製品が類似品であることが判明したという。

 

全日病ニュース2016年8月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年5月1日号)

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    2016年6月4日 ... するガイドライン」を作成。避難生活 .... い、「抗がん剤のオプジーボの費用が. 年間1兆
    7,500万円に .... 中医協. ○消費税率8%への引き上げに伴う改定項目に対する平成28
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  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年6月1日号)

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    2016年6月30日 ... ... 隆学会長. ○全日病の西澤会長と医法協の加納会長は5月17日、熊本を視察し、
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